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2008.02.24

国立新美術館の横山大観展

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現在、国立新美術館で開催中の“横山大観展”(1/23~3/3)は前期、後期2回でかけた。日本画家でその作品の鑑賞をライフワークにしているのは横山大観、菱田春草、速水御舟、東山魁夷、加山又造。5人のうち横山大観は回顧展が開かれる回数がとびぬけて多いから、有名な作品でまだみていないのはわずか数点になった。

この展覧会の情報を得たときは04年に大規模な回顧展(京近美、水野美術館)をやったのにまた、開催するの!という感じがした。でも、04年のときは京都と長野での開催だったから、東京で大きな回顧展となると久しぶりかもしれない。今回の出品作を前回と較べてみると、当然ながら同じものが多い。企画者は“これぞ大観の名作を展示するぞ!”と張り切れば張り切るほど集めて来る作品は同じになる。質を上げようと思えばどうしてもこういう風になる。大観好きにとってはこれは大歓迎。名品と再会でき、前回京近美に展示されなかった作品のリカバリーがいくつも実現したから、もう言うこと無し。

作品数75点は04年の117点に較べると少ないが、主要作品はずらっと揃っているから、これは気にならない。この回顧展に二重丸をつけたい一番の理由は会場を国立新美にしたこと。広いスペースのおかげでこれまでなかった展示の仕方がうまれた。前期のみだったが、“夜桜”(大倉集古館)と“紅葉”(足立美)が隣合わせで展示された。これは圧巻!咲き誇る桜と紅葉を鮮やかな色彩で装飾性豊かに表現した傑作を二つ同時に鑑賞できるのだから、これ以上の贅沢はない。

屏風の華麗な響き合いのほかにもうひとつ、広い会場だからこそ実現したのが絵巻の全公開。墨一色の“生々流転”(拙ブログ05/11/26)と彩色絵巻“四時山水”(横山大観記念館)。大好きな“四時山水”をみるため横山記念館に度々出かけるのだが、部屋が狭いのでいつも一部だけしか鑑賞できない。はじめて全部みることができた。これが一番の収穫。大観の作品でいつも魅せられるのが海や川における水の流れや波立ちの描写。“四時山水”では青緑の水が険しい断崖のなかを下っている場面と最後のほうに描かれた砂浜に打ちよせるさざなみが心を揺すぶる。

大観の作域は歴史や古典に登場する人物を描いたもの、水墨風景画、富士山の絵、琳派風の作品、花鳥画と広い。“そのなかでどれが好みなのか?”と問われると、まずあげるのが天性の色彩感覚がいかんなく発揮された上述の屏風2点、絵巻2点と水墨画の“瀟湘八景”(大倉集古館)、上の“澗声”、そして下の“海に因む十題 波騒ぐ”。“澗声”とよく似た絵“水温む”(五島美)を何年も追っかけているのだが、なかなか縁がない。今回もダメだった。で、濃い墨の輝きと墨のグラデーションで描かれた霞のたなびく様子に魅了される“澗声”を釘付けになってみた。

“波騒ぐ”に4年前、会ったときは言葉を失った。そして、東山魁夷の描く海の波しぶきと色合いがよく似ていることに気づいた。上から斜め左に伸びる3本の松の枝の下では、松に呼応するかのように生き物みたいな波頭が岩にぶちあたり、たけり狂っているよう。この絵と再会できたのは無上の喜び。満ち足りた気分で館を後にした。

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コメント

いづつやさん、こんばんは。
今日、大観展に行かれたんですか?
実は私も(?)今日、出かけられるかな?と前から考えていたのですが、一昨日に別の用事で六本木に行きつつも美術館までは行けずで少し疲れたのと、大荒れ強風の天気もあって、今日は延期しました。3・3までだから、会期ぎりぎりなんですよね・・・

↑画像、波の音が聞こえてきそうです。

ひとつお聞きしたいんですが。
この展覧会、週末の会場はかなり混むのでしょうか?

投稿: kai | 2008.02.24 22:05

はじめましてです。いつもブログを楽しみに拝見させていただいてます
私も横山大観、菱田春草、速水御舟、東山魁夷、加山又造にとーーっても惹かれてまして、嬉しくて書き込みしてしまいました。
大観展、私も2度行きましたが、感動しました!!
もう1度行きたいなぁ・・・

投稿: えとこ | 2008.02.24 23:48

to kaiさん
後期は2/15の金曜日にでかけました。
平日でしたが、結構混んでいました。ですが、
広い会場ですから、作品の前の列は動いて
おり、そうイライラするほどではなかった
です。

週末はやはり混んでいると思います。がんば
って、“波騒ぐ”をご覧になってください。

また、時間がありましたら、上野の森美術館
で開催中の王子江展にでている“初雪の木曾
福島”も是非みてください。これは東山魁夷
の“年暮る”とともに忘れられない絵になり
ました。本当にすばらしい絵です。

投稿: いづつや | 2008.02.25 11:48

to えとこさん
はじめまして。書き込み有難うございます。
好みの日本画家が同じ方とお会いできたのを
喜んでおります。これからもよろしくお願い
します。また、気軽におこしください。

今回の大観展は04年のリカバリーが狙いで
出かけたのですが、“夜桜”や“波騒ぐ”の
前に立つとやはり感激します。東近美で
2年前でしたか?“生々流転”を全部みせて
くれましたが、ここは“四時山水”も全公開
ですから、有難いですね。

作品の質、展示方法を考えると、04年のとき
より感動の総量は大きかったような気がします。

投稿: いづつや | 2008.02.25 12:03

こんばんは
>大観の作域は歴史や古典に登場する人物を描いたもの、水墨風景画、富士山の絵、琳派風の作品、花鳥画と広い。“そのなかでどれが好みなのか?”

わたしは人物画ですね、それと花鳥画が次いで、という感じです。
海の絵でも『南溟の夜』に胸を衝かれます。足立バージョンの方が好ましいのですが。
いい展覧会だったと思います。

投稿: 遊行七恵 | 2008.02.25 22:14

to 遊行七恵さん
会場が広いので大観の屏風や絵巻を存分に
楽しむことが出来ました。南溟の夜は足立美
にある墨で描かれたのもいいですね。

投稿: いづつや | 2008.02.26 18:13

こんばんは
お久しぶりです!お元気ですか?無事に戻られてよかったですね!
かれこれ1ヶ月まえのことになってしまいますが。
会期ギリギリでしたが、大観展に行くことができました。とても混雑していてちょっと面食らいました。展示作品の数にも大きさにも、作品のすばらしさにも圧倒されました。

何と言ったらいいのでしょうか・・・?
とても力強いものを感じました。物理的な力・・・本当に押されているような!言い方が悪くて恐縮なんですが、「無骨な男っぽさ」を近くに感じながら作品を見て歩きました
なぜか帰路では・・・
大観ってどんな人だったんだろう?と、そればかり考えていました!

投稿: kai | 2008.03.31 01:55

to kaiさん
ご無沙汰です。PCのダウンで長期の中断を
余儀なくされましたが、これから大急ぎで
アップしますので、またおつきあいください。

大観展は会期末、混んでいたでしょうね。
大観は水戸の出身ですから、剛毅で男っぽい
画家です。作域がひろく、水墨画、琳派風の
花鳥画といろいろあります。

海を描かせたら大観と東山魁夷の右にでるもの
はいません。広島にいたころ、山陰へ出張する
たびに大観の海の絵を思い出しました。本当に
上手いです!

投稿: いづつや | 2008.03.31 11:56

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