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2008.02.05

その四 ヤン・ファン・エイク  ホルバイン  ルーベンス

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昨年プラド美術館でみたファン・デル・ウェイデンの“十字架降下”の衝撃があまりに大きかっため(拙ブログ07/3/22)、ナショナルギャラリーとルーヴルではこの画家とヤン・ファン・エイクの作品をしっかりみようと心に決めていた。ナショナルギャラリーにはこうした北方絵画の巨匠たちの作品がいくつもあるが、なかでもヤン・ファン・エイクの“アルノルフィニ夫妻の肖像”(上の画像)、ウェイデンの“読書するマグダラのマリア”がとびぬけていい。

05/8/29でも取り上げたヤン・ファン・エイク(1390~1441)の上の絵とは久しぶりの対面。何度みても左のイタリア商人の顔は好きになれないからあまりみないが、妻が着ている滑らかな衣装の緑や目が光っている犬、キラキラするシャンデリア、カーペットのスリッパなどは釘付けになってみた。

さらに、前回は関心のもちようもなかった部屋の背後の壁にかかった鏡についても、そこに映ったこちら側の光景をかすかではあるが確認した。鏡の表面の光沢感、窓から射し込む光が反射する部分の描写はまさに神業的。光沢のある油彩の性質を最大限に引き出す技法にはほとほと感心する。ファン・エイクが描いた肖像画2点、“ターバンを巻いた男”(自画像)、“若い男の肖像”は思っていたのとは異なり小さな絵だった。

真ん中はドイツのアウグスブルク生まれの画家ホルバイン(1497~1543)の代表作、“大使たち”。これはナショナルギャラリー自慢の絵である。93年から96年にかけて徹底した修復がなされたお陰で今では制作当時の色彩が蘇った。後ろのカーテンの緑が二人の男(左側はフランス人外交官で大使としてロンドンに滞在、右側はその友人のフランス教会使節)の黒と茶色の衣服を引き立て、堂々とした肖像画になっている。前見たときも印象深かったが、今回も立ち尽くしてみた。

そして、二人の男の足元に横たわる白い影の正体もちゃんと見とどけた。前はここにドクロが描かれているとはまったく知らず、“立派な肖像画だな!”で終わっていた。が、今は絵の知識がつき、この白い影が“アナモルフォーズ”(歪んだ遠近法)によって描かれたドクロだということがわかっている。で、絵の右端から見る角度を微妙に変え、ドクロをみた。手元の画集にはドクロがはっきり映っているが、自分の目にはこの70%くらいの精度でしかみえなかった。ベストポジションがあるのだろう。

この絵にはもうひとつ仕掛けがある。それは左上のカーテンの陰に小さく描かれたキリスト像。“ドクロ”が描かれているのはこの絵の主題が“メメント・モリ(死を想え)”だから。この絵が掛かっていた部屋は右手に出口があったそうだ。このため、去り際にこの絵を見ると、ドクロと左上のキリスト像が目に焼きつくようになっているという。死の影をこういう形で表現するのだから、ホルバインはものの肌触りや質感を画布から浮き立たせる卓越した描写力だけでなくその精神、知力もハイレベル。

バロックの巨匠、ルーベンス(1577~1640)の絵は大きな美術館ではどこでも大作が沢山飾ってあるが、ここもその例にもれず、“マルスから平和を守るミネルヴァ”、“ステーンの城の見える秋の風景”などの傑作が目白押し。そのなかで人気の高いのが下の“シュザンヌ・フールマン”。マネかルノワールが描いたのかとみまがうばかりのすばらしい女性画である。はじめて見たとき大きな瞳、透き通るように美しい肌の輝きに仰天した。宗教画や神話の一場面を劇的に描いた大作の多いルーベンスのなかではひときわ目立つ肖像画の傑作である。言葉を失い、しばし眺めていた。

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コメント

フアン・アイク兄弟のゲントの祭壇画の模写が1987年に、上野の西洋美術館で展示された事があります。
(アントワープ王立美術館所蔵の実に素晴らしい模写作品でした。その展覧会全部がものすごくよかったです。)
私も念願かなって、後にゲントで拝観出来ました。
でも、上野の感動を忘れる事が出来ませんでしたの。
今は‘アルノルフイニ~’一点を観るためにロンドンに行きたい!

投稿: 花 | 2008.02.07 00:04

to 花さん
ファン・エイクのゲントにある絵はすばらしい
ですね。一生の思い出です。この画家の絵を
かなり見ましたから、これからモノグラフを
いくつか読もうと思ってます。

で、早速とてもいい図版を使っている小学館の
“西洋絵画の巨匠”シリーズ12、“ファン・エイク”
(07年1月)を購入し、毎日ながめてます。

投稿: いづつや | 2008.02.07 23:48

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