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2008.01.15

長谷川等伯の松林図

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正月二日から昨日まで、東博の国宝室に上の長谷川等伯の“松林図”が飾られていた。この絵は以前は“屏風と襖絵”コーナーで展示され、時期も一月に限ってなかったが、今年も昨年同様、国宝室で年のはじめにでてきた。どうやら“松林図”の展示は東博における正月の恒例行事になってきた。

昨年末、三井記念美で応挙の国宝“雪松図”をみたときもらった作品リストには“東博では等伯の松林図が1月に展示されるので、あわせてご覧ください”と案内されていた。松の絵の豪華なコラボレーションをどれだけの人が楽しんだかわからないが、大変いい組み合わせである。両美術館は“一緒に展示しようね!”と心は通じ合っているのだろう。多くの人が見たがっている傑作をあまり間をおかず飾れば、美術館への好感度が上がることは間違いないのだから、こういう美術館同士の連携はどんどんやってほしい。

水墨画の傑作といわれる“松林図”のすごさを3年前、ふとしたことで再認識することになった。この絵をじっとみていたら、30代くらいの外国人女性が真剣なまなざしでみつめ、隣の男性にいろいろ説明しているのである。この絵が英語でどういう風に解説してあるか読んだことがないのだが、この女性が悦に入って鑑賞しているのを横でみて、外人の日本絵画愛好家のなかでは松林図はこんなに注目されているのかとちょっと驚いた。この水墨画の美を外国人と共有するとは時代が変わった!

外国人でイギリスのターナーの絵が好きな人はよりこの絵に入っていけるかもしれない。実際、これは西洋画ではターナーの絵、中国画では牧谿(もっけい)の“煙寺晩鐘図”(拙ブログ06/11/2、畠山記念館)と雰囲気が似ている。

この絵は画面に近づいてみる絵ではない。荒々しい筆使いに見入るより、少し離れて、靄がかかる松の林のなかに迷い込んだ気になって鑑賞するほうがいい。余白が多いので自由に歩きまわれる感じだ。一番魅せられるのは濃い墨で描かれた松の黒と紙の白さのコントラスト。紙の色が白く明るいと墨が非常に美しく感じられる。

右隻(上)のほうが左隻(下)より傾いている松が多く、木と木があまり重ならないように配置されているのに対し、左隻では松が二列に何本も描かれているから、奥行きが深く感じられる。わずかな時間でも静寂の中に身をおきたいと思えば“松林図”を見るに限る。なんとも大きな絵力をもった絵である。

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