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2008.01.11

北斎諸国名橋奇覧と諸国瀧廻りの復刻版画

166北斎漫画展を見た後、会場の一角で放映されていた浮世絵制作のビデオを見ていたら、摺師の方が“何かお聞きになりたいことがありましたら、遠慮なく”と声をかけてこられた。

こういうプロの摺師とお話しができるのは滅多にないから、浮世絵の摺りのことをあれこれ聞いてみた。

摺師、沼部伸吉さん(摺歴30年)は浮世絵木版画彫摺技術保存協会会員の一人で、北斎漫画展と同時開催されている“諸国名橋奇覧”(11点)と“諸国瀧廻り”(8点)の復刻版画を各一点ずつ摺られている。

右は沼部さんが摺られた“東都葵ヶ丘の瀧”。この復刻版画は東京伝統木版画工芸協同組合が行っているもので、広重の“江戸名所百景”、“東海道五十三次”に続く第三、四弾が今回展示されている北斎の“橋”と“瀧”シリーズ。手元にある“浮世絵・名所百景復刻物語”(監修小林忠、芸艸堂、05年10月)をみると、4点が沼部さんの摺りだった。

現在、日本全国で彫師は20人、摺師は40人いるそうだ。多いのは東京と京都。木版画家、吉田博一族の専属摺師でもある沼部さんは職人にありがちな気難しい感じではなく、とても気さくな方。有難いことにいい摺りと悪い摺りを目の前にある復刻版画で教えてもらった。

藍色を例をとると、藍のグラデーションがスムーズでしっとりした感じに仕上がっているのがいい摺りで、ぶつぶつがあったり、色が紙にはじかれてかさかさしているのはダメな摺りとのこと。沼部さんが摺られた右の“東都葵ヶ岡の瀧”を細かくみると、確かに空と瀧が落ちるところの藍色はしっとりしており、とてもいい感じ。

色の発色具合は使用する紙の質とか絵具の状態などで微妙に変わるが、大事なことは指示された色をいかに丹精こめて摺り込んでいくかだそうだ。絵具のにじみが出るのを防ぐためのドーサ引き(紙の摺面にドーサを引くこと)は専門職の“ドーサ屋”が行っているが、今、一人しかいないらしい。もし、この方が亡くなられたら摺師自身でやることになると言っておられた。伝統の技を継承するということは傍目以上に大変なこと!

美しい浮世絵はいろんな職人の高い技によって生み出され、われわれの目を楽しませてくれているのである。いい話を聞いた。

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