宮廷のみやび 近衛家1000年の名宝
“近衛家1000年の名宝展”(1/2~2/24)を開催中の東博で出かけたのは図録を得るため。時々こういう目的の展覧会がある。チラシに載っている主な美術品は大半見ているので、その時点でこれは名品の鑑賞というより、日本美術のことを深く知るうえで貴重な資料となる図録を入手する展覧会と頭を切り替えている。
藤原道長の国宝“御堂関白記”や“金銅経筒”、“金銅経箱”は昨年、京博であった“藤原道長展”でみたし、“倭漢抄”(国宝)は2年前の“書の至宝展”(東博)に出ていた。はじめてみる“大手鑑”や“熊野懐紙”などは現物がどんなものかを目に焼きつけるだけで、内容は先でじっくり復習する作戦。
書と本格的に向き合うため、漢字でもひらがなでも書かれている内容は横において字の特徴をしっかり見るようにしているが、まだ、本を読んでまとまった知識を得る段階ではない。今は書に美を感じられように目を慣らすことだけを考えている。だから、前半の展示品の前をどんどん進んでいく。
やっと足がとまったのが上の“青磁鳳凰耳花生 銘千声”(重文、龍泉窯、南宋時代・
13世紀)。9年ぶりの対面である。これは砧青磁の名品。明るい青磁釉と貫入に魅了された。青磁に心底惚れているので名品が展示されるときはなるべく取り上げてきた。今、平常展にでている国宝の“青磁下蕪瓶”(拙ブログ07/12/21、1/27まで展示)もあわせてご覧になると、青磁の美しさが堪能できるのではなかろうか。
絵画はあまりないが、小栗宗湛の“草虫図”と酒井抱一の“四季花鳥図屏風”を楽しんだ。最初に飾ってあった“春日鹿曼荼羅図”(重文)に期待していたのだが、思っていた以上に色が落ちていた。さて、“千声”とともに再会を楽しみにしていた下の“四季花鳥図屏風”(右隻)である。いつものことながら、この絵は気分を最高に高揚させてくれる。
左隻(06/8/15)と右隻では花の描き方がすこし違う。どちらの花もぱっとみると平面的に描かれている感じだが、右隻の立葵やこうほねの葉はところどころ表の濃い緑にまじって、薄い緑の葉の裏側がみられる。そして、青が目にしみる燕子花でも花の裏の薄い青をみせ、花全体を立体的に表現している。
これに対し、左隻に描かれた女郎花や水仙などはおおむね花の形は平板で綺麗にデザインされた花のシールがはってある感じ。これほど雅な香りのする花鳥画はそうない。満ち足りた気分で館をあとにした。
<08年前半展覧会プレビューの更新>
次の展覧会を追加した。
3/15~5/25 マティスとボナール展 川村記念美
6/14~8/31 コロー展 国立西洋美
6/14~8/17 ルオー大回顧展 出光美
1/3~3/30 夢二と小林かいち展 竹久夢二美
2/16~3/30 中国の陶芸展 五島美
3/1~4/13 浮世絵展 MOA
4/5~6/1 柿右衛門と鍋島展 出光美
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コメント
こんにちは。今年もよろしくお願いいたします。
私も、今回、2つの龍泉窯の青磁を同時に見ることが
できて、感激しました。
昔は、青磁なんて、地味で面白くないなぁと思っていたのですが、
最近では、その秘められた美しさがたまらなく思えるようになってきました。
投稿: 一村雨 | 2008.01.11 05:40
to 一村雨さん
あけまして おめでとうございます。今年も
よろしくお願いします。
やきものは種類が多く、奥が深いですね。
日本には青磁の名品は沢山ありますから、
青磁好きにはたまりません。
投稿: いづつや | 2008.01.11 10:44