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2008.01.13

川越市立美術館の橋本雅邦展

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横山大観、菱田春草、川合玉堂といった近代日本画の巨匠たちの師匠格にあたるのが狩野芳崖(1828~88)と橋本雅邦(1835~1908)。二人の回顧展が開催されるのを長年待っていたが、やっと一つの夢が叶えられた。

橋本雅邦展(1/12~3/9)を行う川越市立美術館へたどり着くのに2時間半かかった。普段行く東博の倍以上の時間。やはり川越は遠い。美術館が開館5周年を記念して橋本雅邦を取り上げたのは、雅邦が川越とゆかりの深い絵師だから。雅邦は松平家(奥州棚倉藩)のお抱え絵師だったが、松平家が川越藩に国替えになったので、慶応2年(1866)から明治2年(1869)まで川越藩士だったのである。

橋本雅邦の回顧展が開かれるのは18年ぶり。会期中出品される作品は69点、後期(2/12~3/9)のみの展示が22点あるから、もう一度こなくてはいけない。国内にある代表作がほとんど集結している豪華な回顧展なのに料金はたったの600円。後期に再入場した際、半券を見せれば480円でOKという。図録は格安の1500円。で、トータルのコストは2500円。東博の“近衛家1000年の名宝展”は図録だけで2500円する。交通費が往復で2800円かかるから2度となると馬鹿にならないが、展覧会の評価は断然二重丸!

雅邦の絵は水墨山水画と中国古典画、仏画ばかりだろうと思っていたら、色つきの風俗美人画“美人琴棋書画図”や“三井寺・狂女”があった。わが子を人買いに連れ去られて、物狂いになる女が子供と再会を果たす場面を描いた“狂女”に惹きこまれる。こういう女の緊迫した心の動きを表現する絵を雅邦が手がけていたとは。

心に響く山水画が何点もあった。そのなかで特に魅了されたのが上の“秋景山水画”(愛知県美)、“月夜山水”(東芸大美)、下の大作“松に月”(東芸大美)、“渓山雲霧”(川越市美)、“夏冬山水図”(三の丸尚蔵館)。

“秋景山水図”はフェノロサの指導や支援によって描かれた作品。橋本雅邦が学んだ狩野派の伝統的な山水画と違うのは岩の質感が“皴法”(しゅんぽう)でなく、墨の明暗で表現されているところや墨の微妙な濃淡による空気遠近法的な深い奥行き表現。画面の上半分が空白すぎる感もあるが、右の川が左右にくねりながら流れて行く様とか左の雪舟の国宝“山水長巻”にみられるような家々、人物などの描写は見ごたえがある。

“松に月”は本物の松が目の前にあるのではと思うくらい大きな絵。松の生命力がこれほど伝わってくる絵と対面したのははじめてかもしれない。これは大収穫。太い幹を真ん中にどんとおき、そこに横に伸びる小枝を交差させる画面構成が実にいい。そして、松の葉がすこしかかる月はここしかないという絶妙な位置に描かれている。大満足の前期だったが、追っかけていた作品が登場する後期にも期待がふくらむ。

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コメント

素敵なブログ嬉しいです。
私も、ファンの一人ですので
是非、出かけて見たいです。

投稿: おおきーちゃん | 2008.01.28 21:17

to おおきーちゃんさん
旅行のため、返事が遅れてすいません。
はじめまして。書き込み有難うございます。
念願の回顧展に遭遇できてとても喜んでます。
これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2008.02.02 00:22

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 川越市立美術館はかなり遠い。自宅からは2時間半。2004年11月に相原求一朗を見るために初訪問して以来の再訪問である。美術館は蔵造りの街らしい白壁の建物。  今回はこの美術館の開館5周年特別記念展、川越ゆかりの橋本雅邦の回顧展である。 雅邦は1835年生まれ、1908年に没したのであるから、ちょうど没後100年。江戸時代の狩野家に入門したのが11歳の時。15歳の早描き《布袋》が出展されていたが、「栴檀は双葉より芳し」という言葉通りである。雅邦は川越藩の御用絵師であったので、松平周防守の初代と... [続きを読む]

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