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2008.01.20

川端龍子名作展 龍子が描いた神仏

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半年ぶりに龍子記念館(大田区、入館料200円)へ出かけた。今、開催されている所蔵展“龍子が描いた神仏”(作品数20点、1/4~5/6)にはまだみてなかった3点があったから、これで図録に掲載されている作品120点はすべて見たことになる。見終わるのに3年かかった。

龍子の絵の虜になって久しい。定期的にここを訪問しているのは大きな絵が見れるから。近代日本画のなかで大作のイメージの強い画家は川端龍子、東山魁夷、奥田元宋、平山郁夫。龍子を除く3人が描くのは自然の風景だが、龍子は風景だろうが、人物だろうがなんでも大きな画面に描く。

今回展示されているのは神仏を描いたもの。上は入ってすぐのところにドンと飾ってある“やすらい”。これが最後まで残っていた大作。地面に座ってくつろいでいるのは孔雀明王で、まわりには長い羽尾をした孔雀が5羽いる。本来の孔雀明王図は東博蔵の国宝(拙ブログ05/7/4)のように明王は孔雀に乗っているはずだが。

龍子はこの絵についてこう語っている。“孔雀に騎乗した孔雀明王図は、平安時代以来から多く密教の本尊仏として巧作され来たった名作を寺々で拝見するのであるが、第一印象として感じることは、千年近くも孔雀の背に端座され来たった明王様も、乗せている孔雀を考えても、さぞや窮屈におわしましたことであろう。一寸休養をお取り遊ばされませ・・・と軽い気分での制作である”。

普通の人間にはなかなか思いつかない発想である。この創作態度は今、人気の現代アーティスト、山口晃の作品、“うま図 2004”(07/8/20)や大作“渡海文殊”となんら変わらない。シュルレアリスム流のダブルイメージを使った“御来迎”(07/2/7)や孔雀に囲まれる明王図を生み出す龍子の豊かな想像力には舌を巻くばかりである。

下は紺地に金泥で行者道の本尊、蔵王権現の姿を描いた“一天護持”。これはお気に入りの絵。見るたびに惹きつけられるのが紺地に映える金泥の描線の輝き。多くの仏画を見てきたが、インパクトの大きさでは国宝の“五大力菩薩像”や“五大尊像”に決して負けてない。この絵は“行者道三部作の二”で、一の赤鬼と青鬼にハットする“使徒所行讃”、三の“神変大菩薩”も一緒に展示してある。

この美術館もしばらくお休みできるかなと思っていたら、5月の特別展“川端龍子と修善寺展”(5/17~6/15)を案内されたので、また出かけることになりそう。

拙ブログは1/21~31、お休みします。

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2008.01.19

橋本雅邦の最高傑作“龍虎図”はいつ見れるのか?

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川越市立美術館で見た“橋本雅邦展”(拙ブログ1/13、1/12~3/9)の興奮がさめやらず、頻繁に図録をながめている。出品作69点(後期展示も含めて)のなかには“週間アーティストジャパン”に掲載された国内にある作品22点の8点が含まれており、レベルの高い回顧展であることは間違いない。

入館してしばらくは手探り状態で初期の作品を見ていたが、段々代表作が集結していることがわかってきたので、先の部屋に対面を待ち焦がれている絵がひょっとすると出展されているかもと胸が少しザワザワした。その絵は静嘉堂文庫が所蔵する“龍虎図”(上が右隻、下が左隻)。橋本雅邦の最高傑作といわれるこの絵の存在を知ったのはだいぶ前だが、なかなか現れてくれない。淡い期待をもったが、今回もやはりダメだった。

この絵は“白雲紅樹”(東芸大美)と共に重文に指定されている。川合玉堂はこれを見て雅邦に入門しようと決心したそうだ。実は三の丸尚蔵にあるこれより小ぶりの“龍虎図”も長年追っかけているのだが、こちらのほうは2年前、東京美術倶楽部で行われた“大いなる遺産 美の伝統展”にきわめてよく似た別ヴァージョンが展示されたから、実質見たことにしている。

ここ2年、見たい熱の高い絵が次々と現れてくれた。2年前の前田青邨の“唐獅子”(06/9/28)と狩野芳崖の“仁王捉鬼図”(06/11/19)、昨年の円山応挙の“保津川図屏風”(07/8/10)と狩野永徳の“唐獅子屏風(07/11/9)”。で、残ったのが静嘉堂の“龍虎図”。なんとしてもこれを見たい!

これまでの鑑賞経験からすると、回顧展を2回みたらその画家の代表作は大体目の中にはいる。だが、橋本雅邦に関しては次は随分先のことだろうから、これは無いに等しい。とすると、静嘉堂文庫が企画してくれる“所蔵近代日本画展”をひたすら待つしかない。余談だが、ここは河鍋暁斎のいい絵をもっているが(平凡社別冊太陽の“狩野派決定版”に図版あり)、これは京博の“河鍋暁斎展”(4/7~5/11)に出品されるのではないかと密かに期待している。

西洋絵画の場合、世界中の美術館を訪問する時間とお金があれば、有名な傑作をみることができる。もちろん、時間とお金を手に入れるのは簡単なことではないが。日本画は西洋絵画と違って、美術館にいつも飾ってないから、名画との出会いは長期戦。で、ミューズには絵のほかに担当外ではあろうが、“長生きもさせてね”と祈っている。

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2008.01.18

王朝の恋ー描かれた伊勢物語

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出光美の“王朝の恋展”(1/9~2/17)に対する期待値はそれほど高くなかったのだが、ここの企画展には手抜きがない。今回も大ヒットである。伊勢物語を題材にして描かれた絵画、物語の有名な場面を象徴する図案が使われたやきもの、蒔絵硯箱は数限りなくあるだろうが、これほどの優品をよく集めてこれるものだと感心する。

2,3年前の企画展では他館からの出展はあまりなく、作品の大半は出光自身の所蔵品が中心だったのに、最近は展示の方針が変わったのか他からも優品を積極的に借りて展示している。だから、見終わったあと、すごくいい内容のものを見たという思いが強い。しかも、ここは企画展が“ぐるっとパス券”を使うと無料。

今、都内の民間美術館でどこが好感度NO.1かと聞かれれば、多くの人が出光と答えるのではなかろうか。作品を数多く見れる大展覧会も魅力だが、テーマに沿った質の高い作品でいい気持ちにさせてくれる出光や山種の展示は注目に値する。

今回嬉しかったのは俵屋宗達が描いた“伊勢物語図色紙”。これは現在59面あることがわかっているらしいが、会期中、29図でてくる。過去、ここや大和文華館、MOA、細見美などでいくつか見たことはあるが、これほどの数を見れるなんて夢にも思わなかった。

大半が個人の所蔵品を集めてきて29点も見せてくれるのである。ここの“集め力”はまったくスーパー級。06年には“佐竹本三十六歌仙絵”を沢山展示したのに続き、今度は宗達の色紙。皆がいつかまとめて見たいなと願っていることを“お任せあれ!”とばかりに実現してくれるのだから、好感度はますます上がる。本当にすばらしい。

上はそのひとつ“武蔵野”。緑の草木にまわりを囲まれて男女が向かい合ってすわっている。女性の赤の衣装がなんとも鮮やか。金地に緑青、群青は宗達の作品では見慣れた色使いだが、伊勢物語でもその自由闊達な作風がいかんなく発揮されている。

琳派狂いだから、目が自ずと光琳や抱一の作品の方へいく。光琳では富士山がでてくる“東下り図”(五島美)と“富士図扇面”(出光)にしばし足がとまる。また、燕子花とくればここは抱一の下の“八ツ橋図屏風”(右隻)が定番。燕子花だけしか描かれない根津美の絵同様、群生する燕子花のなかに橋を角々と曲がらせる抱一のこの屏風も琳派モードのスロットルを全開させてくれる。

琳派の揃いぶみだけでなく、英一蝶の“見立業平涅槃図”、深江芦舟の“蔦の細道図屏風”(ともに東博)、中村岳陵らの合作“伊勢物語絵巻”(山種美)、山口蓬春の“扇面流し”(山口蓬春記念館)などもあるのだからたまらない。“伊勢物語絵巻”には第23段、“筒井筒”の場面がきれいに描かれていたので、御舟の絵(拙ブログ07/9/5)を思い出した。宗達の残りの色紙を見るため、もう一回出かけるつもり。

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2008.01.17

戸栗美術館の鍋島展

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やきものを見るため定期的に通っている美術館は昨日取り上げた松岡美術館と戸栗美術館。戸栗美では今、開館20周年記念展最後の“鍋島ー至宝の磁器・創出された美ー”(1/5~3/23)が開催されている。鍋島は05年にも見た(拙ブログ05/7/3)からパスしてもいいのだが、色鍋島の魅了には抗し難く、また松涛へ出かけた。

以前購入した図録をよく眺めているので、目の前の鍋島焼91点のうち前に見たものと初見のものはすぐ区別ができる。やきものは絵画とちがって、立体的であまり大きいものではないから、いいやきものとの対面は宝石類を見るのと同じ感覚。そのやきもののなかでも鍋島焼というのは特別で、見ていると心が浮き浮きしてくる。

いつも感心するのが定番の皿に絵付けされたハットする意匠と印象に残る色彩対比。こんなモダンで洒落たデザインと色の組み合わせはどういうものに触発されて生まれてくるのであろうか。上の“色絵 更紗文 皿”の緑と黄色と青で彩られた装飾的な更紗文にはいつも目が点になる。

このように同じ模様が皿全体を埋め尽くすのは少なく、ほかに“毘沙門亀甲文”があるくらいで、中央に白地を残し、周囲に更紗文とか菊唐草文などを配するものが多い。陶工たちの豊かな色彩感覚と文様配置の巧みさに脱帽である。

幾何学模様の皿に較べて鳥や花などがモティーフとして使われる場合は、他のものは極力省き、余白をよくとり対象がすっきり目に焼きつくような構成になっている。下は白地に描かれているのは二羽の鳳凰だけ。優雅に空を舞う鳳凰の口ばしの赤や主翼の緑、そして丁寧に描かれた尾っぽのぐるぐる巻きや胴体の毛に目が釘付けになる。

花文のお気に入りは“椿文”や“紫陽花文”、“紅葉流水文”。そして、鍋島というとすぐイメージする“壽字宝尽文 八角皿”や“三瓢文 皿”、“青磁染付 七壺文 皿”の前ではもう最高の気分。初見のもので収穫が二つあった。黄色と緑の対比に目を奪われる“色絵 牡丹文 変形皿”と初公開の七寸皿が10枚揃った“色絵 桜霞文 皿”。

ここのやきものはこれで大体鑑賞したことになるので、しばらくお休み。

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2008.01.16

松岡美術館の中国陶磁名品展

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現在、松岡美術館で行われている“中国陶磁名品展”(1/5~4/20)は力が入っている。ここでは中国、朝鮮、日本のやきものはメイン展示、例えば、近代日本画との併設展示というようなサブの扱いになることが多いが、今回は中国陶磁が主役。それはたぶん上の“青花龍唐草文天球瓶”(景徳鎮窯、明時代・永楽期、15世紀)を展示しているからだろう。

ここへは3年通っているから、出品作の大半はみているのに、この天球瓶は長らく待たされ、ようやくの対面。どこの美術館でも自慢の名品というのはそう頻繁には展示しない。東博や東近美などの大きな美術館より、民間のブランド美術館のほうがこの傾向が強い。やきものは日本画と違ってコンデションのことは気にしなくていいのだから、東博の“松林図”のように一年に一回程度の頻度で展示してもよさそうなのだが。このあたりの館のポリシーがどうも理解できない。

ここの青花天球瓶は畠山記念館のもの(拙ブログ07/8/19)と同様、形、龍の姿、青の発色具合いずれも申し分ない。日本にある天球瓶では畠山とここのが一番いい。長く待たせるだけのことはある。これをみたからすぐ、引き上げようと思ったが、定評のある中国陶磁コレクションだから、帰り急ぐことをやめてしばらくいた。

これまでにみたことのある三彩、黒釉、白磁、青花、色絵とはいえ、質の高いやきものなので、一品々味わい深く、つい見とれてしまう。目を楽しませてくれるのが色鮮やかな“五彩”や“粉彩”。下は言葉を失うくらい美しい“粉彩八桃文盤”。

五彩が硬彩と呼ばれるのに対し、柔らかい色彩が特徴の粉彩は清時代の雍正年間
(1723~35)に技術、様式が完成する。桃果と白花をモティーフとするこの皿は雍正期にやかれたもの。形のいい桃が微妙なグラデーションをみせる淡緑、淡黄、紅色で見事に描かれている。また、翼を大きく広げた二羽の紅色の鳳凰が向き合う“青花胭脂紅双鳳文扁壺”にも魅せられた。

今年はこの名品展と五島美術館の“中国の陶芸展”(2/16~3/30)を連チャンし、さらに静嘉堂文庫の曜変天目茶碗(国宝)が出品される“茶碗の美展”(2/9~3/23)にも足を運ぶと、中国のやきものがかなり楽しめるのではないかと思う。一ラウンドは期待通りの満足が得られた。

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2008.01.15

長谷川等伯の松林図

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正月二日から昨日まで、東博の国宝室に上の長谷川等伯の“松林図”が飾られていた。この絵は以前は“屏風と襖絵”コーナーで展示され、時期も一月に限ってなかったが、今年も昨年同様、国宝室で年のはじめにでてきた。どうやら“松林図”の展示は東博における正月の恒例行事になってきた。

昨年末、三井記念美で応挙の国宝“雪松図”をみたときもらった作品リストには“東博では等伯の松林図が1月に展示されるので、あわせてご覧ください”と案内されていた。松の絵の豪華なコラボレーションをどれだけの人が楽しんだかわからないが、大変いい組み合わせである。両美術館は“一緒に展示しようね!”と心は通じ合っているのだろう。多くの人が見たがっている傑作をあまり間をおかず飾れば、美術館への好感度が上がることは間違いないのだから、こういう美術館同士の連携はどんどんやってほしい。

水墨画の傑作といわれる“松林図”のすごさを3年前、ふとしたことで再認識することになった。この絵をじっとみていたら、30代くらいの外国人女性が真剣なまなざしでみつめ、隣の男性にいろいろ説明しているのである。この絵が英語でどういう風に解説してあるか読んだことがないのだが、この女性が悦に入って鑑賞しているのを横でみて、外人の日本絵画愛好家のなかでは松林図はこんなに注目されているのかとちょっと驚いた。この水墨画の美を外国人と共有するとは時代が変わった!

外国人でイギリスのターナーの絵が好きな人はよりこの絵に入っていけるかもしれない。実際、これは西洋画ではターナーの絵、中国画では牧谿(もっけい)の“煙寺晩鐘図”(拙ブログ06/11/2、畠山記念館)と雰囲気が似ている。

この絵は画面に近づいてみる絵ではない。荒々しい筆使いに見入るより、少し離れて、靄がかかる松の林のなかに迷い込んだ気になって鑑賞するほうがいい。余白が多いので自由に歩きまわれる感じだ。一番魅せられるのは濃い墨で描かれた松の黒と紙の白さのコントラスト。紙の色が白く明るいと墨が非常に美しく感じられる。

右隻(上)のほうが左隻(下)より傾いている松が多く、木と木があまり重ならないように配置されているのに対し、左隻では松が二列に何本も描かれているから、奥行きが深く感じられる。わずかな時間でも静寂の中に身をおきたいと思えば“松林図”を見るに限る。なんとも大きな絵力をもった絵である。

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2008.01.14

夢二と謎の画家・小林かいち展

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七恵さんのエントリーで知った“夢二と謎の画家・小林かいち展”(竹久夢二美術館
1/3~3/30)を見てきた。この美術館へ来るのは久しぶり。今回の関心は夢二ではなく、小林かいち。

昨年8月、日光東照宮を観光した際、なんの予備情報も無く入館した小杉放庵記念館で小林かいちの絵葉書と衝撃的な出会いをした(拙ブログ07/8/28)。それから、まだ4ヶ月ちょっとしか経ってないのにまた、木版画による絵葉書、絵封筒200点あまりを鑑賞する機会がめぐってきた。

東京でこれだけ多くの作品が展示されるのははじめてらしい。産経新聞に載ったこの展覧会の紹介記事によると、昨年12月、女性誌“ドマーニ”(小学館)も小林かいちの特集記事を掲載し、かいちデザインの平成20年特製カレンダーをつけたという。編集担当者の話では部内でアンケートをとると断然かいちの人気が高かったそうだ。こういう話を聞くと、かいちのアールデコ風のデザインが徐々に女性のこころを捉えはじめたことを実感する。

かいちが描いた“現代的抒情版画絵葉書”(4枚一組袋入り)は多色刷木版で38集までつくられた。初版は200~300部程刷られ、人気の高いものは再版された。これを売り出したのは京都・三条の絵草紙店“さくら井屋”で、大正後期から昭和初期の頃のこと。昭和2、3年にその多くが制作されたようだ。

今回、32種類の絵葉書が展示されている。そのうち4枚全部そろっているのが20ある。そのなかで惹きつけられるのが上の“嘆きの花艸”、下の“君待つ宵”、“ゴンドラの思い出”、“青い鳥”、“灰色のカーテン”、“影”、“二号街の女”。

街を闊歩するモダンガールをイメージさせる“二号街の女”や幻想的な女にハットする“灰色のカーテン”を除けば、かいちが描く女は大半、細身の背の高い女で、背中をこちらにむけてうつむき、悲しみにくれている。これほど恋のせつなさ、悲しみがじーんと胸を打つ絵はこれまでみたことがない。カードのハートを上の左右にあしらった“嘆きの花艸”は植物の細い枝がつくる曲線が顔を手でおおい泣いている女の悲しみとシンクロしているようにみえる。

絵封筒も沢山ある。そのモティーフは女性、花、キリスト教(十字架)、ゴンドラ、ろうそく、トランプ、クロスワードなど。最初のころの色使いは淡い色を基調にしていたが、これが赤と黒の2色が多くなり、金銀でアクセントをつける作風へと変化していく。そして、色彩はさらに鮮烈なものになり、華やかになっていく。これは京都で発展した琳派の意匠や仁清の京焼色絵の絵つけなどを意識してのことだろう。

最後に飾ってある“舞妓や京風景”を描いた絵封筒の美しいこと!夢中になって見た。ますます小林かいちにのめりこんでいく。

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2008.01.13

川越市立美術館の橋本雅邦展

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横山大観、菱田春草、川合玉堂といった近代日本画の巨匠たちの師匠格にあたるのが狩野芳崖(1828~88)と橋本雅邦(1835~1908)。二人の回顧展が開催されるのを長年待っていたが、やっと一つの夢が叶えられた。

橋本雅邦展(1/12~3/9)を行う川越市立美術館へたどり着くのに2時間半かかった。普段行く東博の倍以上の時間。やはり川越は遠い。美術館が開館5周年を記念して橋本雅邦を取り上げたのは、雅邦が川越とゆかりの深い絵師だから。雅邦は松平家(奥州棚倉藩)のお抱え絵師だったが、松平家が川越藩に国替えになったので、慶応2年(1866)から明治2年(1869)まで川越藩士だったのである。

橋本雅邦の回顧展が開かれるのは18年ぶり。会期中出品される作品は69点、後期(2/12~3/9)のみの展示が22点あるから、もう一度こなくてはいけない。国内にある代表作がほとんど集結している豪華な回顧展なのに料金はたったの600円。後期に再入場した際、半券を見せれば480円でOKという。図録は格安の1500円。で、トータルのコストは2500円。東博の“近衛家1000年の名宝展”は図録だけで2500円する。交通費が往復で2800円かかるから2度となると馬鹿にならないが、展覧会の評価は断然二重丸!

雅邦の絵は水墨山水画と中国古典画、仏画ばかりだろうと思っていたら、色つきの風俗美人画“美人琴棋書画図”や“三井寺・狂女”があった。わが子を人買いに連れ去られて、物狂いになる女が子供と再会を果たす場面を描いた“狂女”に惹きこまれる。こういう女の緊迫した心の動きを表現する絵を雅邦が手がけていたとは。

心に響く山水画が何点もあった。そのなかで特に魅了されたのが上の“秋景山水画”(愛知県美)、“月夜山水”(東芸大美)、下の大作“松に月”(東芸大美)、“渓山雲霧”(川越市美)、“夏冬山水図”(三の丸尚蔵館)。

“秋景山水図”はフェノロサの指導や支援によって描かれた作品。橋本雅邦が学んだ狩野派の伝統的な山水画と違うのは岩の質感が“皴法”(しゅんぽう)でなく、墨の明暗で表現されているところや墨の微妙な濃淡による空気遠近法的な深い奥行き表現。画面の上半分が空白すぎる感もあるが、右の川が左右にくねりながら流れて行く様とか左の雪舟の国宝“山水長巻”にみられるような家々、人物などの描写は見ごたえがある。

“松に月”は本物の松が目の前にあるのではと思うくらい大きな絵。松の生命力がこれほど伝わってくる絵と対面したのははじめてかもしれない。これは大収穫。太い幹を真ん中にどんとおき、そこに横に伸びる小枝を交差させる画面構成が実にいい。そして、松の葉がすこしかかる月はここしかないという絶妙な位置に描かれている。大満足の前期だったが、追っかけていた作品が登場する後期にも期待がふくらむ。

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2008.01.12

水野美術館のすばらしい日本画コレクション!

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大丸東京店で今、展示してある水野美術館の近代日本画コレクションに仰天した!長野市にある水野美は2年前あった加山又造展をみるため訪ねたことがあり、日本画を数多く所蔵していることは知っていたが、これほど質の高いものだとは思わなかった。

展覧会のタイトル“近代日本画 美の系譜”(1/10~28)が200%信じられる出品作60点は山種美級の名品揃い。東京でコレクションを公開するのははじめてというので、館としても自慢の作品を選んだのであろう。こうした名画を東京で見られるのだから、新装大丸東京様々である。

数が多いのが横山大観、菱田春草、下村観山、川合玉堂。大観の“無我”や春草の絵はこれまで見たことがあるので、さらっとみたが、観山の“春秋”と大作“獅子図屏風”に足がとまった。とくに“獅子図”は青い眼と緑の毛、雌獅子の青の体が強烈なインパクトをもっており、前田青邨の“唐獅子がダブってきた。

風景画で惹きつけられたのが玉堂の“渓村春雨”、“清湍釣魚”と上の橋本雅邦の“紅葉白水”。“渓村春雨”は構図がそっくりの東近美にある“彩雨”に負けず劣らずの傑作。“清湍釣魚”は昨年の回顧展でも魅了された。“紅葉白水”を秋の季節に鑑賞したら、感激も半端じゃないな思うほどまったくすばらしい絵。彩色画では東芸大美にある“白雲紅樹”(重文)と双璧だろう。

美人画はビッグ3が競演している。上村松園のチラシに使われている“かんざし”、“夕べ”、鏑木清方の“花ふゝき・落葉時雨”、そして伊東深水の“夜長”、“鏡獅子”。真ん中の絵は感動ものの屏風“花ふゝき・落葉時雨”(右隻)。これは手元にある清方の画集に載ってないので、目の前にいきなり宝ものが現れたような感じだった。

今年の清方の追っかけは4月、鎌倉大谷美に展示される“道成寺・鷺娘”が最初と思っていたのに、これは嬉しい誤算。桜の花びらが空に舞うなか、舟に乗り桜を楽しんでいる女性はお気に入りに清方美人。姿態もさることながら身につけている着物の柄と色が心を揺すぶる。

今回、清方の美人画と同じくらい感動したのが下の裸婦図。はじめてみる杉山寧の“晶”。杉山寧独特のマチエールが特徴の大きな絵で、水中を泳ぐ裸婦が2人描かれている。上と左にみえる青の色面と光があたった女性の肌が眼に焼きつく。一つの漢字を題名にした絵はこれまで数点みたが、ここには“晶”のほかに2点ある。見てのお楽しみ。

最後のほうに飾ってあるビッグネームの高山辰雄(3点)や加山又造の猫や千羽鶴の絵も心をとらえて離さない。また、山口蓬春の“留園駘春”や山本丘人の“紅葉の季”も画家の代表作のひとつに数えられている花鳥画の名品。今年の日本画鑑賞は山種美、大丸東京とのっけから感動2連発。これがずっと続いて欲しい。

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2008.01.11

北斎諸国名橋奇覧と諸国瀧廻りの復刻版画

166北斎漫画展を見た後、会場の一角で放映されていた浮世絵制作のビデオを見ていたら、摺師の方が“何かお聞きになりたいことがありましたら、遠慮なく”と声をかけてこられた。

こういうプロの摺師とお話しができるのは滅多にないから、浮世絵の摺りのことをあれこれ聞いてみた。

摺師、沼部伸吉さん(摺歴30年)は浮世絵木版画彫摺技術保存協会会員の一人で、北斎漫画展と同時開催されている“諸国名橋奇覧”(11点)と“諸国瀧廻り”(8点)の復刻版画を各一点ずつ摺られている。

右は沼部さんが摺られた“東都葵ヶ丘の瀧”。この復刻版画は東京伝統木版画工芸協同組合が行っているもので、広重の“江戸名所百景”、“東海道五十三次”に続く第三、四弾が今回展示されている北斎の“橋”と“瀧”シリーズ。手元にある“浮世絵・名所百景復刻物語”(監修小林忠、芸艸堂、05年10月)をみると、4点が沼部さんの摺りだった。

現在、日本全国で彫師は20人、摺師は40人いるそうだ。多いのは東京と京都。木版画家、吉田博一族の専属摺師でもある沼部さんは職人にありがちな気難しい感じではなく、とても気さくな方。有難いことにいい摺りと悪い摺りを目の前にある復刻版画で教えてもらった。

藍色を例をとると、藍のグラデーションがスムーズでしっとりした感じに仕上がっているのがいい摺りで、ぶつぶつがあったり、色が紙にはじかれてかさかさしているのはダメな摺りとのこと。沼部さんが摺られた右の“東都葵ヶ岡の瀧”を細かくみると、確かに空と瀧が落ちるところの藍色はしっとりしており、とてもいい感じ。

色の発色具合は使用する紙の質とか絵具の状態などで微妙に変わるが、大事なことは指示された色をいかに丹精こめて摺り込んでいくかだそうだ。絵具のにじみが出るのを防ぐためのドーサ引き(紙の摺面にドーサを引くこと)は専門職の“ドーサ屋”が行っているが、今、一人しかいないらしい。もし、この方が亡くなられたら摺師自身でやることになると言っておられた。伝統の技を継承するということは傍目以上に大変なこと!

美しい浮世絵はいろんな職人の高い技によって生み出され、われわれの目を楽しませてくれているのである。いい話を聞いた。

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2008.01.10

宮廷のみやび 近衛家1000年の名宝

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“近衛家1000年の名宝展”(1/2~2/24)を開催中の東博で出かけたのは図録を得るため。時々こういう目的の展覧会がある。チラシに載っている主な美術品は大半見ているので、その時点でこれは名品の鑑賞というより、日本美術のことを深く知るうえで貴重な資料となる図録を入手する展覧会と頭を切り替えている。

藤原道長の国宝“御堂関白記”や“金銅経筒”、“金銅経箱”は昨年、京博であった“藤原道長展”でみたし、“倭漢抄”(国宝)は2年前の“書の至宝展”(東博)に出ていた。はじめてみる“大手鑑”や“熊野懐紙”などは現物がどんなものかを目に焼きつけるだけで、内容は先でじっくり復習する作戦。

書と本格的に向き合うため、漢字でもひらがなでも書かれている内容は横において字の特徴をしっかり見るようにしているが、まだ、本を読んでまとまった知識を得る段階ではない。今は書に美を感じられように目を慣らすことだけを考えている。だから、前半の展示品の前をどんどん進んでいく。

やっと足がとまったのが上の“青磁鳳凰耳花生 銘千声”(重文、龍泉窯、南宋時代・
13世紀)。9年ぶりの対面である。これは砧青磁の名品。明るい青磁釉と貫入に魅了された。青磁に心底惚れているので名品が展示されるときはなるべく取り上げてきた。今、平常展にでている国宝の“青磁下蕪瓶”(拙ブログ07/12/21、1/27まで展示)もあわせてご覧になると、青磁の美しさが堪能できるのではなかろうか。

絵画はあまりないが、小栗宗湛の“草虫図”と酒井抱一の“四季花鳥図屏風”を楽しんだ。最初に飾ってあった“春日鹿曼荼羅図”(重文)に期待していたのだが、思っていた以上に色が落ちていた。さて、“千声”とともに再会を楽しみにしていた下の“四季花鳥図屏風”(右隻)である。いつものことながら、この絵は気分を最高に高揚させてくれる。

左隻(06/8/15)と右隻では花の描き方がすこし違う。どちらの花もぱっとみると平面的に描かれている感じだが、右隻の立葵やこうほねの葉はところどころ表の濃い緑にまじって、薄い緑の葉の裏側がみられる。そして、青が目にしみる燕子花でも花の裏の薄い青をみせ、花全体を立体的に表現している。

これに対し、左隻に描かれた女郎花や水仙などはおおむね花の形は平板で綺麗にデザインされた花のシールがはってある感じ。これほど雅な香りのする花鳥画はそうない。満ち足りた気分で館をあとにした。

<08年前半展覧会プレビューの更新>
次の展覧会を追加した。
3/15~5/25     マティスとボナール展    川村記念美
6/14~8/31     コロー展            国立西洋美
6/14~8/17     ルオー大回顧展       出光美

1/3~3/30      夢二と小林かいち展     竹久夢二美
2/16~3/30     中国の陶芸展        五島美
3/1~4/13      浮世絵展           MOA
4/5~6/1       柿右衛門と鍋島展      出光美

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2008.01.09

北斎漫画は楽し!

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現在、江戸東博で行われている常設展示企画“北斎漫画展”(1/2~2/11)を楽しんだ。ぐるっとパス券(2000円)は2ヶ月間に気に入った展覧会があるかどうかさほどチェックせず、アバウトに購入する。で、さっそくこれをみるために一枚消化。あと2,3回は多分あるはず。

5階の展示室へ来るのは2度目。あまり広くないが、浮世絵自体が小さいものだから、この広さでもあの北斎漫画が目いっぱいみれる。これまで鑑賞した3回の大きな北斎展には北斎漫画が必ず展示してあったから、画集に掲載されているような絵は目の中に入っている。でも、全編を通してこれほど多くの絵をみるのははじめて。こんな機会はめったにないので、目に力を入れてじっくりみた。

これは北斎の弟子が絵を学ぶ際の手本であり、職人が絵柄をきめるときに参考にした図案集。“漫画”の意味はわれわれがすぐイメージする漫画ではなく、人物、花鳥、動物、風景、風俗、神仏などを気のむくまま描いたスケッチ集のこと。

植物より実際目にする動物や想像上の動物を描いたもののほうがおもしろい。上は今年の干支、子年にちなんだ鼠の絵。題名は“鼠の隠れ里”。小山のように積み上げられた米俵に座って熱心に算盤をはじいている。勘定は合っている?鳥を捕まえた網を縛り、引っ張るのに使っているのは縄ではなく、横にいる仲間の鼠の尻尾。さりげなくこういう笑いをいれるところが憎い。

ぎょっとしたのが画面いっぱいに描かれた大きな象。“群盲象を撫でる”のとおり、11人の男が象の背中に乗っかったり、鼻や牙、尻尾に触ったりして、象の大きさを思い々に推し量っている。また、“鰻登り”がユーモラス。三匹の巨大鰻が体を左右にくねらして垂直に立ち、その一匹にねじり鉢巻をした男が抱く様がおもしろい。

下はフォルムの美しさに立ち尽くした“魚濫観世音”。昨日取り上げた速水御舟の鯉の絵にみられる動感の度合いをさらにパワーアップした感じである。自然のダイナミズムがひしひしと伝わってくる“風”(拙ブログ07/12/15)や“阿波の鳴門”にも目が釘付けになった。

帰りがけにミュージアムショップで“北斎漫画”と“続北斎漫画”(芸艸堂)を買った。これからこの本をながめている時間が長くなりそう。

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2008.01.08

山種美術館の春のめざめ展

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今年最初に見る展覧会は山種美術館の“春のめざめ展”(1/5~3/9)。昨年あたりからここの展示の仕方が変わった。以前は会期が二ヶ月あると前半一ヶ月と後半では作品をかなり替えていたが、今は会期中作品は出ずっぱりにしている。見る側としてはこのほうがいい。

日本画でも西洋絵画のように一回の鑑賞で済むほうがいいにきまっている。前のほうが展示する作品は少し多いかもしれないが、もともとここで期待しているのは数より質だから、そんなことはぜんぜん気にならない。

今回展示してあるのは50点あまり。初見のものが予想外に多い。過去見たものが沢山ありそうだな勝手に思っていたが、ここの所蔵する日本画は東博の浮世絵のように無尽蔵。初対面で心を奪われたのが上の伊東深水の“富士”。美人画を得意とする深水がこんないい風景画を描いていた。これには参った!

画面の両サイドにはみ出す松の木の向こうに、雪の白と青が見事なコントラスをなす富士山が安定感よく描かれている。富士山の絵はほかに横山大観、安田靫彦、小林古径の作品があったが、これが一番ぐっときた。

新春に相応しい絵といえば鶴の絵。鶴とくればここにはとびっきりの名画がある。それは杉山寧の“曜”(拙ブログ05/1/11)。この絵の前に立つと言葉を失う。本当に美しい!はじめてみた小林古径と川端龍子の鶴にも足が止まった。

また、再会した小茂田青樹の“春暁”も印象深い。前回も驚いたが、縦長の掛け軸の左に寄せられて立つ松の幹の質感描写が実にリアル。そして、じっと見てしまうのが幹から何本も真横にのびる枝と緑の葉。意匠化された葉は違和感無くリズミカルに連続している。

下は竹内栖鳳の小品、鯛の絵とともに魅了された速水御舟の“春池温”。御舟の魚の絵ではこれが最も気に入っている。心を揺すぶるのが鯉と紅梅のフォルム。体をくねらしてS字の水の流れをつくる鯉の動きに呼応するかのように、春の息吹を感じさせる紅梅の枝は左から右に大きく折れ曲がっている。

小さな絵だが、とてもいい気持ちにさせてくれるのが土田麦僊の“梅花小禽”と奥村土牛の“紅白梅”。初回から期待値を大きく上回る感動をもらうと、今年も全部見ようかなという気になる。やはりここはブランド美術館。

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2008.01.07

三越の日本画「今」院展

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院展や日展を見に出かける習慣はないのだが、上の福王寺法林の絵がみたくて年末、日本橋三越に足を運んだ。今、ここで“日本画「今」院展”(12/27~1/20)と題して、昨年4月パリ三越で展示された日本美術院同人32人の作品がそっくりそのまま出品されている。

院展に限らず現在活躍中の日本画家のなかで作品を継続的に見たいと思っているのは本当に少なく、今のところ平山郁夫、片岡球子,福王寺法林、石本正、上村淳之、千住博の6人しかいない。平山郁夫の世代に続く院展の画家には関心がなく、ずっと若返って町田久美と山口晃のほうへ目がいっている。

で、この展覧会も15分くらいで出てきた。上は福王寺法林が再興第76回院展
(1991)に出品した“白光のヒマラヤ”(茨城県近美)。見慣れた金色に彩られたヒマラヤ(拙ブログ06/10/13)とは違い、ここでは金色は背景に使われ、連峰は白一色。現地はこんな感じだろうなと、この雄大な横長の絵を天空から眺めているように息を呑んでみた。この隣りに、平山郁夫の風景画ではぞっこん惚れている“月華厳島”(07/9/11)がある。何度みてもこの厳島神社は心に響く。

下は片岡球子の“面構”シリーズの一枚、“国貞改め三代豊国”(61回院展、1976、神奈川県近美)。緑の唐草紋の赤い敷物を斜めに置く画面構成で、浮世絵師国貞とモデルを務める花魁との間に緊張した空間をつくるところが秀逸。江戸の気分が漂うこの絵にパリの人々も魅了されたにちがいない。

片岡球子が“面構”のなかで描いた浮世絵師をざっとあげてみると。“葛飾北斎”、“東洲斎写楽”、“喜多川歌麿と鳥居清長”、“鳥文斎栄之”、“安藤広重”、“初代豊国”、“歌川国芳”、“鈴木春信と平賀源内”、“勝川春章”と主だったところは大体描いている。

ヴァージョンが多いのが北斎と国貞。球子はこの二人がとくに好きだったのかもしれない。北斎は代表作の富士山を背景にしたものや龍をうしろに描いたもの(05/6/12)がある。久しぶりに見た浮世絵師の絵を腹の底から楽しんだ。

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2008.01.06

ヒルマン監督が語る日本プロ野球!

156正月にあったテレビの特番ではBS1の“ヒルマン vs バレンタイン監督対談”がおもしろかった。

番組情報誌で知ったときから、二人がどんなことをしゃべるのか関心を寄せていたが、期待にたがわず興味深い対談だった。

5年間、日本ハムの監督をしたヒルマン(44歳、左の画像)は日本に来るとき、ロッテのバレンタイン監督(57歳)にアドバイスしてもらったらしい。バレンタインが昔、テキサス・レンジャーズの監督をしていたから、テキサス生まれのヒルマンはバレンタインに親しみを感じていたようだ。

対談は先輩監督バレンタインが今年大リーグ、ロイヤルズの監督に就任したヒルマンに贈る大リーグ監督の心得、あるべき監督の姿など多岐にわたった。その中からおもしろい話をいくつか。

バレンタインがヒルマンに試合中行っているメモのことを質問していた。メモに書かれているのは自分がとった作戦で上手くいかなかったこととか、相手チームの戦術で参考になったことなどで、これらは大事にファイルされ、重要なところは頻繁に読み返しているという。これは当然大リーグでも続けるのだろう。

日本人選手で大リーグに通用するものが何人いるかという質問に、バレンタインがロッテの一軍登録全員と答えたのに対し、ヒルマンは半分の選手と言っていた。また、同じア・リーグで対戦することになるイチローのプレーを見るのがすごく楽しみとも語っている。

ヒルマンの話を聞いていると彼の監督としての能力は相当高いことがわかる。日本ハムが昨年優勝できたのは、小笠原や新庄などの主力選手が抜けたので皆がより結束して戦ったからだと言う。結束が強くなるような雰囲気をつくり、選手トータルのパフォーマンスを上げ、結果をだしたのだから、彼の監督術はたいしたものである。

優勝したときのコメント“信じてました!”は06年の“信じられない!?”とともに記憶に残る名言。世の中“偽”が多いなか、このフレーズは新鮮だった。事前に考えていたのか、とっさに出たのかわからないが、こういう言葉がでるのは頭がいい証拠。

興味深いのがヒルマンの選んだ“ベストナイン”。次のようになっている。
★投手 ダルビッシュ(日ハム)
★捕手 里崎(ロッテ)
★三塁 新井(広島カープ)
★遊撃 鳥谷(タイガース)
★二塁 西岡(ロッテ)
★一塁 松中(ソフトバンク)&小笠原(巨人)
★左翼 青木(ヤクルト)
★中翼 赤星(タイガース) 
★右翼 稲葉(日ハム)

復活を目指す野茂はロイヤルズとマイナー契約をかわし、キャンプに招待選手として参加できるという。なんとか頑張ってヒルマン監督の下でもう一度花を咲かせてほしい。ヒルマン、薮田、野茂?のいるロイヤルズに要注目!

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2008.01.05

松屋銀座の小堀遠州展

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12/30、松屋銀座で“小堀遠州展”(12/30~1/14)を見た。やきもの好きにはこたえられない良質の展覧会である。ここへは日頃殆ど来ないが、05年末に吉田屋古九谷展でも感動させてくれたから、やきもの展を得意としているのだろう。

作品は遠州ゆかりの茶道具、工芸品、書状など約150点。一番関心の高いやきものは根津、三井、湯木、北村など茶陶では定評のある美術館から自慢の名品が出ている。予想を上回る質の高さに館を出るまで興奮しっぱなしだった。

まず、目を奪われたのが上の“祥端 蜜柑 水指”(根津美蔵)。昨年、畠山記念館で楽しんだ祥端(しょんずい、拙ブログ07/8/19)と違って、なんとも大きな水指。これまで、こんな大きな祥端はみたことがない。大きさとともに見入ってしまうのが胴のところにある2箇所のへこみ。遠州の美意識はこんな水指を中国で焼かせていた。

遠州好みの“綺麗さび”を反映した茶陶のひとつが真ん中の“高取 面 茶碗”(三井記念美)。これは寛永年間、遠州の指導により焼かれた遠州高取の代表作で、腰に幅広く面をとった端正な形が特徴。

茶碗の形はその時代の精神や好みを表している。利休好みの“侘び”を表現した“黒楽茶碗”(06/10/31)のあとに現れたのが織部好みの“へうげ”の茶碗。楽茶碗の正円をぐにゃとゆがませた楕円の“沓形茶碗”(07/2/26)である。

これが前衛すぎたので、その反動として今度は遠州好みの美しく均整のとれた“綺麗さび”が茶人たちの間でもてはやされる。そして、宗和好みの“姫さび”を形にした仁清の“色絵鱗波文茶碗”(05/10/10)へと展開していく。

下は対面を待ち望んでいた“御本立鶴茶碗 銘・池水”(北村美)。これは日本から朝鮮の窯に注文した茶碗。デフォルメされた立鶴がワンポイントアクセントのような感じになっている。大変魅せられた。

遠州は自分の感性で窯元に好みの茶道具をつくらせる一方、埋もれていた名品に光をあてるスーパー目利きでもあった。そうして世に出たものを“中興名物”と呼んでいる。お気に入りは黒褐釉となだれが印象的な“膳所 耳付茶入 銘・大江”(根津美)と椀形の胴に惹きつけられる“高麗茶碗 銘・古手屋”(三井記念美)。

会場内に遠州が手がけた南禅寺、大徳寺の庭園の写真が飾ってあった。金地院の庭はまだ見てないので、いつか訪ねてみたい。なお、この展覧会はこの後次の会場を巡回する。
2/23~3/16:名古屋・松坂屋美術館
3/19~3/31:神戸・大丸ミュージアムKOBE

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2008.01.04

日光 竹久夢二美術館コレクション

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池袋三越で開催中の“竹久夢二展”(12/30~1/7)を初日に見てきた。これはいつも展覧会情報でお世話になっているokiさんに教えてもらったもの。夢二の展覧会はこれまで何回も見て代表作の大半は目におさめているのに、出かけるとまたsomething newと遭遇するのではないかと思い、つい足が向く。ファン気質というのはもう一種の中毒。どこまで行っても終わりがない。

今回、目の前にある約100点は日光 竹久夢二美術館(鬼怒川温泉)のコレクション。旅館“花の宿松や”の女将が若い頃、夢二の絵に魅せられ、50年にわたって集めたものだそうだ。美術館の名前は知っていたが、鬼怒川温泉へ行くことはないから、縁なしで終わるだろうと思っていたら、意外なところで鑑賞することになった。

一通り見て、そろそろ引き上げようかなという気分でいたら、女将のギャラリートークがはじまるというので、普段はこの種のイベントはパスなのだが、時間もたっぷりあることだし、貴重なお話しを聞かせてもらうことにした。

絵画が好きな方なら誰しも一生の思い出になるような衝撃的な出会いがあるはず。女将の場合、その絵が夢二が子供の手をひいた後ろ姿の女性を描いた“長崎十二景・燈籠流し”だったそうだ。絵の前で熱く語る女将はいかにも旅館の女将という感じ。この絵にのめり込まれた50年前は評判の美人女将だったにちがいない。旅館から何も貰っていません!

おもしろい話がいくつも聞けた。上の肉筆の夢二式美人画“大徳寺”と“夕ぎりや”、“野茨や”の3点は神戸で地震があったとき、ある家の蔵から出てきたものらしい。いずれもなかなか魅力的な作品。落款が緑色になっているが、夢二が何かのお礼に私的に描いたような絵には緑の落款が押されているとのこと。

今回の収穫は“中山晋平作曲全集”の楽譜の表紙(木版画)。これは昭和5年
(1930)、銀座の山野楽器店から発行された。発行者は中山晋平本人で肉筆署名がある。下はその目次。青地に映える女性の赤い衣装と帯に彩られた金色の模様に釘付けになった。夢二は真のカラリスト!

定番の“宝船”(拙ブログ07/1/15)、婦人クラブの表紙“春”(05/1/16)、“セノオ楽譜”の表紙、妻・他万喜(たまき)の店「港屋」で販売した木版画“小春”、“文楽人形”などがあるので、大正ロマンたっぷりの夢二ワールドにしっかり浸れる。また、凝った会場づくりも楽しく、夢二はこんな人と交流があったのかと驚かされる写真もある。これは見てのお楽しみ。

鬼怒川温泉に出かけなくて夢二のいい絵をみることができて、こんな嬉しいことはない。

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2008.01.03

ラトル指揮ベルリンフィルの「展覧会の絵」

149元旦未明、がんばってベルリンフィル恒例のジルベスター・コンサートを最後まで聴いた。

ここ数年、過去十分に楽しんだウィーンフィルのニューイヤーコンサートよりもこちらのほうを熱心に見ている。これは指揮するのがサイモン・ラトルというのも大きく影響している。

ところが、例年そうなのだが、手元のTV番組情報誌にも新聞のTV欄にも演奏される曲が載ってないので、演奏前の期待度はいつもあるような無いような感じ。

で、オープニングで紹介される曲目次第では、ベッドへ直行することもあるのだが、今回は願ってもないロシア音楽。なかなかいいのが並んでいる。その中にお気に入りの曲が3つあった。ボロディンの歌劇“イゴール公”から名曲“ダッタン人の踊り”、ムソルグスキーの歌劇“ホヴァンシチーナ”・前奏曲と組曲“展覧会の絵”。前二つの前菜のあとメインディッシュが“展覧会の絵”とくれば、これは極上のロシア音楽。存分に楽しんだ。

“ダッタン人の踊り”はオーボエが奏でる美しいメロディが心を和ませてくれる。最後の曲、“展覧会の絵”はなんと1/23にはCDが発売されるという(左の画像)。速い!ラトル指揮ベルリンフィルの“展覧会の絵”なら、かなり売れるのではなかろうか。実際、すばらしい演奏だった。この曲はこれまでショルティが指揮したシカゴ響のもの(10年くらい前の日本公演)をMyクラシックビデオで頻繁に聴いていたが、これで待望のベルリンフィルのものが加わり最強の演奏が2つになった。ご機嫌!

ご承知のようにムソルグスキーが作曲したこの曲は展覧会に飾られた10枚の絵が音楽的に描写され、絵と絵の間はトランペットによる“プロムナード”と称する短い間奏曲で結ばれている。その絵は“小人”、“古城”、“チュイレリー宮殿の花園”、“牛車”、“かえらぬ雛の舞踊”、“サムエル・ゴールデンベルクとシュミーレ”、“リモージュの市場”、“墓地”、“鶏の脚のついた小屋”、“キエフ市の大門”。

気分が最も高揚するのがラストの“キエフ市の大門”。カメラは終盤になり何回もでてくるシンバルの音を演奏者の後ろからとらえていた。自分で経験がないからわからないが、全神経を集中させてさせて目一杯シンバルを両手で打ち鳴らしている感じ。トランペットは鳴り響き、ドラやシンバルの音が腹にずしんずしんとこたえる演奏は最高!夜遅くまで起きていた甲斐があった。これからはショルティとラトルの名演奏を交互に聴こうと思う。

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2008.01.02

自称歌謡曲評論家がみた今回の紅白

148普段はテレビの音楽番組を見ることはほとんどないから、大晦日の紅白歌合戦は今、世の中でヒットしている歌と人気の歌手を知る貴重な機会。だから、この国民的な歌番組は例年欠かさずみている。

で、日頃は縁の無い若手歌手でも、紅白に数回出場している歌手になるとその歌声に聴き惚れたりする。

歌の上手さに感心するのが“サクラ色”を歌ったアンジェラ・アキや“LIFE”の中島美嘉。“LIFE”のサビの部分は聴いたことがあるのだが、誰が歌っているのか知らなかった。中島美嘉は紅白で知るようになり、注目していたが、このいい曲も歌っていた。ところで、あのクレオパトラみたいなメイクは昔からしていた?

平原綾香が歌う“Jupiter”は原曲がいいから助かっているが、あの吸い込まれそうになる息つぎが耳についてしょうがない。日本人としては上手なレベルだと思うが、NHKの“その時、歴史が動いた!”を担当している大物アナウンサー松平さんの癖“シー、シー”という口からでる音同様に、息つぎの音が一度気になりだすと、もうダメ。で、琴線にふれるいい曲なのに、あまり感動せずに終わった。

平原とオペラ歌手を比較してはいけないが、もともと歌い方が違う秋川雅史は息つぎをしていないような感じで“千の風になって”を万感の思いをこめて歌いきった。今回の白眉といっていいすばらしいステージに思わず、拍手をした。

こういう正統派の歌声に感動する一方で、力が衰えたなと思わずにいられない歌手もいた。その筆頭が前川清。実力者の前川も今の声量では“そして、神戸”は聴くに堪えない。なんだか、急速に歌う力が萎えてきた感じ。もっとひどいのが布施明。もともと歌は上手くないのだから、もう来年は出さないほうがいい。

これをいうとファンの方は怒るかもしれないが、浜崎あゆみの歌もつまらなかった。曲自体がアベレージだが、浜崎の歌い方も“アレレ?音程はずしてない?”と思うくらい張りがなかった。スローテンポの歌を上手く歌えるほどの歌唱力がないということかもしれない。浜崎あゆみはジャパンポップスのトップを走るシンガーというイメージをもっていたから、大いに面食らった。

ラストの4曲は昨年亡くなった不出世の作詞家、阿久悠の歌。一番よかったのが石川さゆり(左の画像)が熱唱した名曲“津軽海峡・冬景色”。阿久悠に敬意を払うのだったら、大トリは五木ひろしの“契り”より誰が考えても“津軽海峡・冬景色”だろう。五木ひろしは贔屓にしている演歌歌手だが、“契り”は五木ひろし自身が作曲した平凡な曲。これでは阿久悠の詩が生きてこない。

ヒットしたのは森進一の“北の蛍”のほうなのに、番組制作者はなにを血迷ったか4曲のなかではもっとも聴きばえのしない歌を大トリにもってきた。“歌力”をコンセプトにして3年で紅白をリニューアルしようと、鶴瓶を司会者に使ったり、映像を多用したり、コラボレーション“愛燦燦”を実現したり、色々新機軸を出したのに歌の最後の編成で失敗した。

ビジネスの世界でも新コンセプトの開発に力を注ぐ場合、小さいところまで気を使うのだが、意外に大事なところがおろそかになるということがよくある。印刷物の校正で一頁の大きな字の間違いを見落すのと同じ現象である。番組の改革を進めるのなら、やはり歌そのものの構成を中心にやってもらいたい。

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2008.01.01

謹賀新年 08年前半展覧会プレビュー

147今年も“いづつやの文化記号”をよろしくお願いいたします。

恒例となりました08年前半の展覧会情報を今わかる範囲で取りまとめました。いずれも出かける可能性の高い展覧会です。

4月以降のスケジュールがでてない美術館もありますので、いつものようにこれらの内容が明らかになったり、また見落としていた新情報が飛び込んでくれば逐次追加します。

★西洋美術
1/24~4/6    ルーブル美展            東京都美
1/26~3/9    ロートレック展            サントリー美
2/2~3/23    熊谷守一展             埼玉県近美
2/2~4/6     UBS現代アートコレクション展  森美
2/2~5/6     ルノワール+ルノワール展    Bunkamura
3/4~5/18    ウルビーノのヴィーナス展     国立西洋美
3/15~5/25   マティスとボナール展       川村記念美

3/20~5/11   ガレとジャポニスム展       サントリー美
3/26~6/9    モディリアーニ展          国立新美
4/5~6/1     モデイリアーニ展          名古屋市美
5/28~7/28   エミリー・ウングワレー展     国立新美
6/14~8/31   コロー展               国立西洋美
6/14~8/17   ルオー大回顧展          出光美
6/21~8/17   モスクワ市近美展         Bunkamura

★日本美術
1/2~2/24    近衛家1000年の名宝展     東博
1/2~3/23    14代柿右衛門展         智美術館
1/2~2/11    北斎漫画展             江戸東博
1/3~3/30    夢二と小林かいち展       竹久夢二美
1/5~3/9     春のめざめ展            山種美
1/5~3/23    鍋島展                戸栗美
1/5~4/20    中国陶磁名品展          松岡美
1/6~3/23    版と拓の美展            日本民藝館

1/9~2/17    王朝の恋展             出光美
1/10~1/28   水野美コレクション展        大丸東京店
1/12~3/9    橋本雅邦展             川越市美
1/23~3/3    横山大観展             国立新美
2/9~3/23    茶碗の美展             静嘉堂文庫
2/16~3/30   中国の陶芸展            五島美
2/23~3/6    王子江展               上野の森美
2/29~3/24   上村松篁展             横浜そごう美

3/1~4/13    浮世絵展               MOA
3/25~6/8    国宝 薬師寺展           東博
3/29~5/18   東山魁夷展             東近美
4/1~6/28    東西の水辺の情景展       鎌倉大谷記念美
4/5~6/1     柿右衛門と鍋島展         出光美
4/6~5/18    備前一文字展           大倉集古館
4/8~5/11    河鍋暁斎展             京博
4/19~6/22   荒川豊蔵展             茨城県陶芸美
5/24~7/13   KAZARI 日本美の情熱展    サントリー美

(ご参考)
・UBSが所蔵する現代アートコレクションは質が高いというのを美術雑誌で読んだことがあるので、期待大。
・エミリー・ウングワレーは一度見たかったアボリジニの画家。すごく楽しみ!

・近衛家の陽明文庫にはお宝がいっぱい。一番のお目当ては久しぶりの対面となる“青磁鳳凰耳花行 銘 千声”(重文)。これは日本に伝来する鳳凰耳花生では国宝の“銘 万声”とならんで名高い作品。なかなか見る機会がない。また、酒井抱一の“四季花鳥図屏風”も絶品。
・待ちに待った“王子江展”が2/23から上の森美ではじまる。あの大壁画がみれると思うと今からワクワクしている。
・京博の“河鍋暁斎展”を見るためまた、京都へ出かける予定。今年の浮世絵鑑賞の楽しみは今のところ、これと10月のボストン美蔵名品展(江戸東博)。

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