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2007.12.20

小杉泰著「イスラーム帝国のジハード」

128イスラム教関連の本を2冊読んだ。

ひとつは阿刀田高さんの「コーランを知っていますか」(新潮社、03年8月)、もう一冊は小杉泰著「イスラーム帝国のジハード(講談社、06年11月)。

普段は冠婚葬祭以外は宗教にはあまり縁のない生活を送っているが、西洋美術や日本美術と長くつきあっていると、知識としてのキリスト教や仏教の話がある程度のまとまりをもって頭の中に入ってくる。

でも、イスラム教となるとキリスト教、仏教以上に縁遠いから、ムハンマドがどんな人間で何を行ったのか、コーランには一体どんなことが書いてあるのか、ジハードとは何か、また王朝の変遷はどうなっているのかなどについての知識は皆無に等しい。

前々からこれではいけないと思い、まず手始めに「旧約聖書、新約聖書を知っていますか」でお世話になった阿刀田高さんの本を買い込んだ。しかし、これも積ん読状態。が、3月スペインを旅行し、アルハンブラ宮殿の鍾乳石飾り(拙ブログ3/29やコルドバのメスキータ(3/28)に感動してから、状況が一変、イスラムに対する知識欲が俄然涌いてきた。

で、「コーランを知っていますか」と旅行のあと購入した京都大学教授、小杉泰氏の「イスラーム帝国のジハード」を読んだ。イスラム熱はまだ終わらなくて、次に「エル・シードの歌」(岩波文庫)、「アルハンブラ物語・上下」(アーヴィング著、岩波文庫)を読むことにしている。

「コーランを知っていますか」はイスラムの入門書としては最適の本。阿刀田さんは文章が上手いから、原文だと退屈になりそうなコーランの内容がよくわかる。これでまず、一ラウンドこなした後、本格的な小杉氏の本に進んだのは正解だった。

この本は講談社が創業100周年記念として06年から出版をはじめた「興亡の世界史」(全20巻)の一冊。歴史好きなので、このシリーズは全部読む予定にしているのだが、最初がこの「イスラーム帝国のジハード」。小杉氏がイスラム史の研究でどういう業績を挙げられたのか詳細には知らないが、これを読むと世界的な学者であることはすぐわかる。

「興亡の世界史」の編集コンセプトは“現在が理解できるような歴史解釈でもって、世界の歴史を人類知の視点から再構成する”とある。読み終わってみると、“ジハード”のことや今のイスラム社会がこれからどういう方向にむかっていこうとしているのかがわかった。本当にこの本はよく書けている。

また、本書でもふれられているアッバース王朝期(8~10世紀)に形成された海域貿易ネットワークのことを書いた家島彦一氏の“イスラム世界の成立と国際商業”(岩波書店、1991年)を知ることができたのも大きな収穫。これは世界的に評価されている研究らしいから、来年はこの本にも挑戦してみたい。

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コメント

こんにちわ。私もイスラムへの関心はアルハンブラやメスキータからでした。それでイスタンブールにも行ったのですが、911の一報をきいたのはカッパドキアの蒸し風呂で垢すりの現地の人からでした。翌日の現地の新聞の一面の「KAMIKAZE」は忘れられません。
昨日、「シナン」(中公文庫)をみつけてちょうど読み出しました。
「コルドバの女豹」はメスキータが舞台なのでおもしろいと思いますよ。

投稿: kwin | 2007.12.22 17:55

to kwinさん
はじめまして。書き込み有難うございます。

鍾乳石飾りの由来を知り、これはイスラム
のことをもっと知らなくてはと思い、いろいろな
話を蓄積しているところです。

関連本の情報有難うございます。これから
もよろしくお願いします。また、気軽にお越
しください。

投稿: いづつや | 2007.12.22 22:09

>鍾乳石飾りの由来を知り
この部分のblog、読ませていただきました。
そういわれると、私も説明を聞いたような記憶が...
いつかはイスラエルに行ってみたいものです。

投稿: kwin | 2007.12.22 22:41

to kwinさん
アルハンブラ宮殿の鍾乳石飾りは一生の
思い出です。ヒラーの洞窟には行けそうも
ありませんから、これでイスラム装飾を
味わいたいと思います。

投稿: いづつや | 2007.12.23 17:46

コンニチハは!私は、去年の秋にトルコ観光旅行しました。いままで‘ヨーロッパ側からみたトルコ’の知識しかありませんでしたので、アジア最前線のトルコの凄さを知り感動でした。トルコが好きになりました。今年の春は、黒海のむこうのブルガリアからトルコをみました。(一番にはルーマニアのモルドバの修道院群が目的でしたが~)そして11月にはスペインのイスラム化の様子を知りたくていってしまいました。眩暈!

投稿: 花 | 2007.12.24 22:08

いま、いづつや様のスペイン旅行の御様子を拝見してきました。ミハスからはジブラルタル海峡をはさんでモロッコがすぐ近くにありました。あれは驚きでした。私は、読みやすいアービングのアルハンブラ物語と、子供向きのドンキホーテを、帰ってから読みました。あと、エルシドのDVDです。

投稿: 花 | 2007.12.24 22:24

to 花さん
海外旅行を沢山されてますね。11月にスペイン
へ行かれたのでしたら、まだ今もスペインモード
でしょうか?

先週の忘年会でトルコを満喫したという人が二人
いて、イスタンブールやカッパドキアの楽しい
思い出に花がさいたばかりです。

ミハスからはモロッコが近いという感じでしたね。
モロッコへも行って見たい気がします。チャール
トン・ヘストン主演の映画「エルシド」はみたこと
がありますので、本で復習して、つぎにアービング
のアルハンブラ物語という計画です。

そのあとはコルドバとトレドにおけるギリシャ思想、
哲学の研究について進むつもりです。

投稿: いづつや | 2007.12.25 13:25

多忙でしたので、スペインは、どこかにいってしまった感じでしたが、まあ、トレドとコルドバにギリシャの思想、哲学が関係してたのですか?なんか‘薔薇の名前’が、突然浮かんで来ました。‘機会がありましたら~ 講義を~ ’楽しみにしてます。トレドは‘画家が食える景色の代表的な場所の一つとしか知りません。)多くのヨーロッパの方は(特に中欧、東欧の人達は、トルコをあまり好みませんのね。ドラキュラ伯爵もその影響を受けたと思われると、考えられるそうです。)

投稿: 花 | 2007.12.25 18:30

to 花さん
イスラムのアッバース朝はギリシャ思想、哲学
などの本を集め、これをせっせとアラビア語に
翻訳しました。この翻訳事業はすごいです。

このギリシャ熱は後ウマイヤ朝でも同様で、
コルドバには図書館が沢山つくられ、そこには
アリストテレス、プラトン、ユークリッドなど
のギリシャ思想を余すところなく伝える文献が
網羅されていました。

トレドにも大規模な図書館があり、コルドバ王国
が崩壊したあとはカリフの蔵書はここに移って
くるのですが、アラビア語からラテン語に翻訳
したのが語学に堪能なユダヤ教徒なのです。

ヨーロッパでギリシャ語の古典を直接原書で
研究するようになるの16世紀、フィレンツェの
プラトンアカデミーからで、それまではアラビア語
からの翻訳で学んでました。ですから、イスラム
がヨーロッパの形成に果たした役割ははかりしれ
ないほど大きかったのです。

このあたりをもっと詳しく知りたいと思い、今
いろいろ関連本を探しているところです。

投稿: いづつや | 2007.12.26 16:35

to 花さん
文字制限のため、もし、むはんまどを
カタカナで書かれているとはねられます。
平仮名にするか、それは使わないかに
してください。

投稿: いづつや | 2007.12.26 20:33

お教え戴いたお礼と思い、平仮名と漢字のみで送信しましたが、送信できません。何度も書き直し、推敲に推敲を重ねましたのに。

投稿: 花 | 2007.12.27 18:19

奥の深い複雑な内容を、分かり易く明確にお伝えくださいましてありがとうございます。誠にいずつやの文化記号に存します。受け取る側にとって難しい事には変わりありません。甘えないで私もがんばります。さっそく小杉秦氏のいすらあむ帝国のじはあどを注文しましたの。

投稿: 花 | 2007.12.27 22:25

ばんざい。やっと、推敲を重ねた(?)こめんとが送信できました。ぺるしゃは、高校生の頃から、正倉院宝物の漆胡瓶や、がらす器などで魅せられ、しるくろうどとしての興味で、かなり燃えた時がありましたの。ささん朝は、かなり時代は、さかのぼります。

投稿: 花 | 2007.12.27 22:38

to 花さん
コメントに貴重なお時間をとらせて本当
に申し訳ありません。

故あって文字制限をしているのですが、いつも
普通にコメントしていただいてほとんど問題な
いのですが、時々関係ない文字でも文字と文字
のつながりの関係でNGになることがあります。

今回はどうもむはんまどはカタカタにすると
よくないようです。イスラムなどほかのはOKだ
と思います。ですから、次回では気にしないで
コメントください。

コルドバ、トレドのギリシャ文献のことは全然
不十分なのですが、少しずつ知識を増やしてい
こうと思ってます。われわれは学者ではない
ので、気楽にやりましょう!

投稿: いづつや | 2007.12.27 23:41

よくわかりました。もう、本は届きましたノ。でも、なんか難しそうなので、当分の間、ツンドクになりそうです。写真や絵が少ないデス。帰国していきなりワシントンアービングは、正解でした。

投稿: 花 | 2007.12.28 16:56

to 花さん
のんびりお読みください。エルシド、
アービングどちらを先にするか迷い
ますね。

投稿: いづつや | 2007.12.28 20:40

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