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2007.11.15

石田徹也ー小さな展覧会

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1年くらい前からとても気になる絵がある。画家の名前は2年前、踏切事故により31歳の若さで亡くなった石田徹也。今年の7月静岡県美で開かれたこの画家の“悲しみのキャンパス展”を時間の折り合いがつかず、パスしたが、あとでこれを見逃したのはちょっと失敗だったなという気分が強かった。

が、最近、なにかの拍子でCB COLLECTION 六本木で“石田徹也ー小さな展覧会”(9/8~11/24、日曜休み、12:00~19:00)の情報が入ってきたので、何点展示してあるかもわからないのに、とにかく出かけてみた。場所は地下鉄日比谷線の神谷町駅(2番出口)からオランダヒルズ森タワーの方角へ徒歩5分のところにあるノアビル(1階)。

作品は16点しかないので、10分もあれば見終わる。でも、この10分が衝撃の時間だった。上の“囚人”(99年頃)は静岡県美に出品されたのをチラッとみて、すごく見たかった絵だから、食い入るように見た。作家が言わんとすることはなんとなくわかる。石田徹也が日ごろどんなことを考えて絵を描いていたかは全く知らない。この16点に現れた画風で画家の心の中を読むしかない。

この絵をしばらくみて、ほかの画家では誰の絵と雰囲気や描き方が似ているかを思い浮かべてみた。すぐ頭に浮かぶのはマグリット。“大家族”(10/27)などにはこれと同じ色調の青い空や白い雲がでてくるが、こんな孤独感にさいなまれ、恐怖におびえているような顔をした人物は登場しない。

校庭や校舎のなかにいる男子生徒は等間隔に配置され、校舎を胴体にした若い男(石田徹也の自画像)が横になっている。巨大な人物を登場させてびっくりさせるのはコメディの一つの手法だが、石田徹也は社会批評や風刺にこれを使う。規則でがんじがらめにされている学校生活は牢獄に閉じ込められている囚人と同じと言いたいのだろうか。普通の画家はこんなシュールなイメージにたどりつかない。とにかくこの絵は腹にズキンとくる。

対象の豊かな写実描写に驚かされるのが下の“回収”(98年)。皆が座っている畳の質感表現が速水御舟の“京の舞妓”(東博、拙ブログ06/4/5)とあまりに似ているのでびっくりした。この描き方ひとつをとってみても石田徹也がすごい技量をもった絵描きであることがわかる。物の質感を捉える才能は部屋のなかに墓石を描いた作品にみられる床板の木目や板と板の間から出てくる草でもいかんなく発揮されている。

“回収”は何が描いてあるのかはパッとみるだけではわからない不思議な絵。わからないまま、視線は手前に置かれた発砲スチロールに入っている切断された首や手、胴体にいく。人間の体をいとも簡単にバラバラにし、血糊をドバッとみせるので、束芋の映像インスタレーションとイメージが重なってくる。この2作品のほかにも衝撃度200%の絵がいくつかあった。

ギャラリーで購入した“石田徹也遺作集”(求龍堂、06年5月)に今回の作品が載っているから、毎日眺めているが、すごい画家に遭遇したという感じ。香港で開催されたクリスティーズオークションで作品が1200万円で落札されたというのがよくわかる。この画家は今後世界的に評価されるのではなかろうか。

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コメント

いづつやさん、こちらにもお邪魔しています。
地元なので静岡県美の石田徹也展に行きました。
最初はユーモラスかとも思えた構図でしたが、主人公の男性のうつろなな眼差しや切り離されたからだなどを多く見るにつけ、痛々しい気持ちになりました。
まるで見るものの心までも引き裂くような残酷さをもった絵でした。心の中の隠れた部分までもが絵となって表されているような気がしました。

投稿: アイレ | 2007.11.15 22:56

to アイレさん
シュルレアリスム絵画は大好きですから、
石田徹也の絵はいつか見たいと思ってました。

この画家は“日本のマグリット”ですね。
マグリットはいつもネクタイをして絵を描い
ていたといいますから、ネクタイをした若い
男性が登場するのがちょうど合ってます。

図録に載っている作品にはCMのクリエー
ターがアイデアを盗みそうなのが沢山でてき
ますね。例えば“燃料補給のような食事”
など。自画像である男性は悲しそうな顔や
恐怖におびえた顔をしてますが、イメージの
組み合わせは天才的ですね。

また、畳の質感に驚愕です。これは並みの集中
力では描けません。本当に凄い画家です。描き
つくしたから神が天に召したのでしょうか。

投稿: いづつや | 2007.11.16 22:42

こんばんは。
これは強烈ですね。もの凄く惹かれます。
来週は六本木まで行きますので、こちらも観てきます!

投稿: mizdesign | 2007.11.17 21:27

to mizdesignさん
日常生活の一コマをこんなイメージで表現する
のもありか!という感じです。驚愕のイメージ力
と卓越した写実描写に完全にKOされました。

本家のマグリットを超えると言っても過言でない
シュルレアリストが日本にもいたことにすごく
感動してます。

投稿: いづつや | 2007.11.17 23:42

こんばんは

この展覧会はもう随分前からチェックしていたのに
行きそびれました。。。

衝撃的なモチーフは画集でも分かりますが
実際に見てみたいと思っていました
まさか質感で日本画に通ずる物が有るとは
想像もしませんでした

またどこかでやるのを待つしかありませんね

投稿: muha | 2007.11.18 23:51

to muhaさん
石田徹也についての情報は画集に載っている
アーティストや友人の話しかないのですが、
作品は四畳半の部屋で生み出されたマグリット
風シュルレアリスム絵画という印象です。

でも、すごいなと思うのはマグリット的な描き
方の単なるコピーではなく、石田徹也独自の鋭い
感性と精神性が現れていることです。もっと生き
てドキッとする絵を沢山描いて欲しかったですね。

投稿: いづつや | 2007.11.19 16:36

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