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2007.10.13

フィラデルフィア美展のルノワールとマティス

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待望の“フィラデルフィア美展”(東京都美、10/10~12/24)を前のめりになって見た。この美術館はまだ訪問してない。が、昔購入した“ラミューズ・世界の美術館”
(94年、講談社、全50巻)で質の高い絵画が沢山あることを知っていたから、ここの名画が日本にやってくるという情報に接したときは飛び上がるほど嬉しかった。

そのとき瞬時に頭に浮かんだのがルノワールの裸婦では最も好きな“浴女たち”とマティスの“青いドレスの女”、そしてダリの“茹でた隠元豆のある柔らかい構造ー内乱の予感”。この3点が展示品のなかに入っていることをひたすら祈っていたが、そう理想通りに事は運ばない。実現したのはマティスのみ。でも、これだけでもワクワクする。

ルノワールはセカンドベストの“ルグラン嬢の肖像”だが、これも是非見てみたい絵だったので一安心。ほかにも“ラミューズ”に紹介されているクレーの代表作の一つ“魚の魔術”やピカソの“自画像”、“三人の音楽師”、ミロのユーモラスな絵“月に吠える犬”が作品のなかに含まれているから、いよいよ期待が膨らんだ。

今回の出品作は全部で77点。果たして期待値に応える内容だったか。NOタイムで二重丸。海外にある大きな美術館の所蔵する作品が公開される場合、過度の期待をするのは禁物。目玉に館自慢の名画が2,3点あればもうそれで充分。“ラミューズ”に掲載された30点の10点があり、しかも目玉の絵は画集、例えば“TASCHEN”などに載っているほど有名な絵だから、多くの人の心をしっかりとらえることはまちがいない。

ここは調子に乗り過ぎるのが悪いクセで、またチラシで“最高傑作”とか“あのバーンズ展の感動がよみがえる”、“47作家、奇跡の饗宴”とやってしまった。これはオーバー。このキャッチコピーは忘れて好きな絵を楽しまれたほうがいい。

で、愛すべきルノワールの女性画から。上の“ルグラン嬢の肖像”の前では息を呑んでみた。この絵は広島にいて情報がなかったが、ブリジストンで01年に開催された“ルノワール展”に展示されたらしい。衣服の白と黒エプロンのコントラストが印象的で、鮮やかな青のスカーフをした女の子は非常に気品があり、大人っぽくみえる。My好きな女性画に即時登録した。

それにしてもルノワールのいい絵が毎年のように日本にお目見えする。05年は“舟遊びの昼食”(フィリップスコレクション展、拙ブログ05/6/17)、“ブージヴァルのダンス”(名古屋ボストン美)、“黒い服の娘たち”&“ムーラン・ド・ラ・ギャレットの庭で”(プーシキン美展)、昨年は“扇子を持つ娘”(大エルミタージュ美展)、“ロメーヌ・ラコー”(クリーブランド美展)。

今年は1月の“ジュリー・マネ”(オルセー美展)と“ルグラン嬢”。現地の美術館に足を運ばなくても日本にいて着実に代表作がみれるのだから、願ってもない美術環境である。そして、来年2月、Bunkamuraの“ルノワール+ルノワール展”にオルセーからあの“田舎のダンス”、“ぶらんこ”がやってくる。まさに真打登場!

さて、お目当てのマティスの下の“青いドレスの女”である。これを画集で見てたまらなく魅せられたのが、背景の赤、黒の強烈な色彩対比と他の人物画ではみられない細い輪郭線をつかい美女風に描かれた顔。金髪と真っ赤な口紅が目を惹き、後ろの格子模様の赤と黒のデザイン的な色面が上から下に流れる白いフリルつきの青のドレスを引き立てている。平面的な画面構成が特徴のマティスの絵でこれほど華やかな雰囲気につつまれた絵は他にない。何時間でも見ていたくなる。

ルノワール同様、マティスの名画も度々やってくる。04年の回顧展では“切り紙絵”(04/12/9)がいくつも見れたし、05年には傑作“金魚”(プーシキン美展、05/10/25)とも対面した。念願の“青いドレスの女”に会えたので、次の狙いはポンピドーの切り紙絵“王の悲しみ”。これは来年1月に叶えられそう。

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コメント

こんにちは
この展覧会は大変上質でしたね。
とても楽しめました。
一点一点楽しんでみて廻りましたが、よく知ってる画家の作品だと思いながらも、新鮮な感動があります。
見ていてとてもいい気持ちになりました。
マティスの『青いドレスの女』、画面構成と色彩感覚とが本当にすばらしかったです。

宣伝は京都ではそんなアオリはありませんでしたが、まぁあまり展覧会に行かれないお客さんに足を運んでもらうためには、仕方ないのかもしれませんね。

投稿: 遊行七恵 | 2007.10.14 11:39

to 遊行七恵さん
こんにちは。ご存知のように私の展覧会通いは
追っかけ画の鑑賞が中心ですから、学芸員には
悪いのですが、テーマとか、展示作品トータルの
質はあまり気にしていません。

ですから、海外のブランド美術館のときは館の
図録とか“TASCHEN”など画集に載っている
作品が展示されているかどうかで◎、○、△を
つけてます。館自慢の作品が2、3点あれば◎
です。

昨年の西洋美であった“ベルギー王立美展”の
ように館の図録に載ってる作品をことごとく出し惜
しみしているのには◎はつきません。今回は
マティスの“青いドレスの女”、クレーの“魚の
魔術”、ルノワールの“ルグラン嬢”があります
から、立派な◎展覧会です。

でも、チラシの文句はいいすぎですね。悪いクセが
ついてます。印象派大好き人間の目からすれば、
印象派で感激するのはルノワールとモネだけ
ですね。モネは“回顧展”にもでていた連作シリ
ーズの定番“ポプラ並木”があります。

でも、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌはアベレージ
ですね。心に響く作品ではありません。ここには
セザンヌの傑作“大水浴”と色が鮮やかにでている
“サント・ヴィクトワール山”がありますが、この二つ
とルノワールの“浴女たち”を展示してないと現地
でクレームがつくからやはり出してきませんね。

近代絵画でここの一番の自慢はデュシャンの“階段
を降りる裸体No.2”でしょうね。これは04年横浜
美にやってきました。それと“青いドレスの女”、
“魚の魔術”、ダリの“茹でた隠元豆”、有元利夫
が霊感を受けたアンリ・ルソーの“カーニヴァルの
夕べ”でしょうか。今回2点きましたからいうことあり
ません。七恵さん同様、“青いドレスの女”に
200%感激してます。

来年は念願のフィラデルフィア美とシカゴ美を訪問
しようと思ってます。

投稿: いづつや | 2007.10.14 17:05

こんばんは
TBが飛ばないようなので、アドレスにリンクを張ってみました。この美術館の宣伝文句は「品がない」ですね。中にはには良い作品もあるのに、印象を悪く・・・。
ところで先月、いずつやさんがおられたジュネーブに行ってきました。

投稿: とら | 2007.10.14 22:09

to とらさん
東京都美はプーシキン美やロシア国立美、
そして今回のフィラデルフィア美といい絵
を沢山見せてくれるので有難い美術館です。

宣伝はいつも武士が“俺の刀はきれるぞ!”
と言ってるようなスタイルですが、こうし
たオーバーな言い方をしなくても、感動を
くすぐるフレーズはあると思うのですが、
なかなか変わりませんね。

いい内容のものをやっていることは皆わか
っているのに、過剰文句で随分損をしてま
すね。とらさんのおっしゃるとおりです。

ジュネーブに行かれたそうで。で、前スイ
スにある美術館のことを調べられてたの
ですね。

投稿: いづつや | 2007.10.15 11:15

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