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2007.10.17

岡倉天心展の菱田春草

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東京芸大の創立120周年を記念して企画された“岡倉天心展ー芸術教育の歩み”
(10/4~11/18)は地味ながら充実した内容の展覧会。料金は平常展並みの500円(実際に払ったのはぐるっとパスの割引で400円)と安いのに、展示されている絵画や彫刻、工芸品はレベルの高いものばかり。

出かける気になったのは、岡倉天心が東京美術学校(現東京芸大)校長の職を辞して、東京から移り住んだ茨城県五浦には展覧会を見によくクルマでいくので、この近代日本を代表する文明思想家と縁深くなっているから。とくに見たい絵があったわけでもなく、テーマの芸術教育にはそれほど関心はないから、30分くらいで引き上げるつもりだった。が、飾られている作品をみてすぐ、“これは倍の時間がかかりそう!”と頭を切り変えた。

考えてみれば、東芸大にとって神様みたいな人の業績を総括するのに、並みの作品を展示するはずがない。一級のものがあるのは当たり前かもしれない。お陰で絵画50点弱のなかに嬉しい作品があった。追っかけリストに入っている上の菱田春草作、“水鏡”。ほかにも画集に載っている名画がずらっとある。ざっとあげてみると。

狩野芳崖の“悲母観音”(重文)、橋本雅邦の“白雲紅樹”(重文)、小堀鞆音の“武士”(拙ブログ06/11/18)、下村観山の“大原御幸”、小林古径の“不動”、前田青邨の“阿修羅”、横山大観の“村童観猿翁”、菱田春草の“寡婦と孤児”。これらはいずれも大作。岡倉天心と関係の深い画家のいいものを全部もってきた感じである。

“水鏡”を前から見たかったのは、この絵が寓意画だから。中央に描かれた天女は右手で紫陽花をにぎり、水鏡に映る自分の姿をじっと見つめている。天女は美の象徴。その美しい天女もいずれ衰えるということを水に映ったほうを穢く描くことで表現している。また、赤から紫やがて空色と七色にも変わるといわれる紫陽花が天女にかたどって添えられているのも美の衰えの暗示。この話は先般亡くなられた若桑みどりさんが読み解いたカラヴァッジョの静物画、“果物籠”の寓意(06/5/3)と似ている。菱田春草が描いたこの寓意画を感慨深くながめていた。

木彫や蒔絵などの優品もいくつかある。下は松田権六の卒業制作、“草花鳥獣文小手箱”。何度みても鹿やうさぎの躍動感あふれるフォルムに目が釘付けになる。また、平櫛田中が制作した異形の顔にぎょっとする“灰袋子”や美術館の隣の中庭に設置してある“岡倉天心像”にも魅せられた。はじめは軽く見るつもりが1時間後は上機嫌だった。なにか得したような気分である。

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