安宅コレクション展 その二 朝鮮陶磁
約1000点の安宅コレクションのうち、中国陶磁144点に対し、朝鮮陶磁は793点と数の上では圧倒的に多い。この朝鮮陶磁は数の多さだけでなく、質の高い優品が揃っていることで世界的に知れ渡っている。
展示されているのはその中から精選された72点(高麗時代33点、李氏朝鮮時代39点)。朝鮮陶磁のもつ品のよさや楚々とした静かな美しさに魅せられるやきもの愛好家は多いが、その形や色合いは日本人の感性に合うのかもしれない。
98年の展覧会のときは高麗青磁の前で立ち止まることが多かった。だが、今回は朝鮮時代の白磁や青花を見ている時間のほうが長かった。これはここ数年定期的に通っている日本民藝館で白磁や青花を見慣れていることや6月の“青山二郎の眼展”(世田谷美、拙ブログ6/12)で見た長壺やまろやかな丸壺に魅せられたことが大きく影響している。
上は一番見たかった“青花辰砂蓮花文壺”(18世紀後半)。これは前回、出てこなかったので感慨深い。ゆったりとした大きさとあたたかさを感じさせる形と乳白色の地にのびやかに描かれた蓮の花に200%心を打たれた。画集で見る以上にすばらしい壺である。
この器面の蓮が柔らかくて優雅なのに対し、真ん中の“鉄砂壺”(17世紀中葉)に描かれた茶色の竹は力強く、インパクトがある。壺のまるい形は“青山二郎展”に出品され、ここにもでている“白磁壺”とよく似ているが、胴の真ん中は算盤玉にように大きく横に膨らんでいる。
鉄砂の壺では“虎鷺文”にも惹きつけられる。戯画風に描かれた虎は眼のまわりにサーカスに登場するピエロみたいに太いまつげの線を入れ、こちらをじっと見ている。思わず口元がゆるむとともに、民藝館にあった虎の民画が目の前をよぎった。
青花のなかで造形的に気に入っているのが、面取の壺や瓶。心に響くのが下の“青花窓絵草花文面取壺”(18世紀前半)や“青花草花文面取瓶”(18世紀前半)。窓のなかにさらっと描かれた草花がなんとも目にやさしい。こんな見てて清々しくなる優品に会えて幸せな気分になった。
4室に飾ってある高麗青磁で好きなのは長い首の鶴首瓶2点、“青磁陽刻牡丹蓮花文”(12世紀前半)と“青磁逆象嵌蓮唐草文”(12世紀後半)。量感のある“青磁陽刻筍形水注”と再会したかったのだが、これは叶わなかった。今回嬉しかったのは珠玉の安宅コレクションが静かな部屋でじっくり見れたこと。理想的なやきもの鑑賞であった。
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コメント
こんばんは。
いづつやさんのご紹介された、青花辰砂蓮文壺は
私の一番好きなやきものなのです。
浅川巧兄弟と、柳宗悦の接点。
芸術新潮にも取り上げられたこともありました。
東洋陶磁で初めて見たときの感動は、
今も変わりません。
また、三井に行かねばとわくわくしています。
実にすばらしいコレクションです。
投稿: あべまつ | 2007.10.25 22:08
to あべまつさん
珠玉の安宅コレクションを楽しみました。
今、念願だった“青花辰砂蓮文壺”の余韻に
浸っているところです。
壺の形、そして絵付された蓮の花が見事に
マッチしてますね。噂に聞いてた通りの傑作
でした。
投稿: いづつや | 2007.10.26 23:03