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2007.10.16

東博の大徳川展

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展覧会があるとき、それを見に行こうとする動機づけは二つある。一つはそこに展示されている好きな絵や焼き物を楽しむため。もう一つは美術品や文献などにより、世界史や日本史への理解を深めるため。現在、東博で開催中の“大徳川展”(10/10~
12/2)は普通ならば後者。

歴史が好きなので、この展覧会の情報を得たときは今年1月、江戸東博であった“江戸城展”同様、徳川のことを知るいい機会だなと考えていた。ところが、途中で水戸徳川家が所蔵する円山応挙の“百蝶図”が展示されることがわかった(拙ブログ8/16)ので、目に力を入れてみるタイプの展覧会にかわった。

で、はじめにその絵のことから。蝶の名前は何種類も正確に言えないが、一番目立つのが画面斜めに配された大きな黒のアゲハチョウ。小さい頃よく見た本物の蝶が目の前で飛び回っているよう。応挙は上昇あるいは下降する蝶は上から見下ろすように、横に進む蝶は側面からと、視点をいろいろ変えて描いている。また、小さい白のモンシロチョウや青や黄色、こげ茶色の羽をした蛾も同様の描き方。地面にはつくし、れんげ、菜の花、すみれ、わらびなど春の草花がみえる。のどかな春の野原でこんなに多くの蝶に囲まれたらさぞかし気分がいいだろう。

この絵は前期(10/10~11/4)のみの展示。後期(11/6~12/2)には酒井抱一の“双鶴・七草図”がでてくる。画集でみたことない絵で、実際はどうかわからないが、琳派狂いとしては悔いを残さないために後期も出かけることにした。

章立ては横において、出品作(308点)でみてみると、絵画の目玉はなんといっても名古屋の徳川美所蔵の国宝“源氏物語絵巻”。“柏木一”、“橋姫”、“東屋一”が会期中三期にわけて展示される。今でている“柏木一”(10/10~21)は過去数回お目にかかったので、さらっとみた。

今回じっくりみたのは刀。全部で13口(ふり)ある。うち国宝が8口と優品ぞろい。広島にいた頃、岡山県の長船町にある“備前長船博物館”を訪ねたことがあり、刀には興味を抱いてきたから、有名な備前刀を前にちょっと興奮した。刀で目がいくのが刃文。で、国宝の刃文を夢中になってみた。上は“太刀 銘助真”(東博)。

この太刀は紀伊徳川家に伝来したもの。助真(すけざね)は鎌倉時代に栄えた備前・福岡一文字派の刀工で、のちに鎌倉へ行き作刀している。丁子乱れの刃文(丁子菊のようににぎやかな乱れ刃)が実に美しい。重文と国宝を較べてみると、国宝の刃文にはどれも格別の美しさがある。これを実感したのは大きな収穫。

下は尾張徳川家に伝わった“初音の丁度”と通称される嫁入り道具のひとつ、国宝“初音蒔絵貝桶”。これらは徳川三代将軍家光の娘、千代姫が尾張家二代・光友との婚儀に携えたもの。以前数点みたことがあるが、今回のように10点もまとめてみたのははじめて。ゴールドの見事な蒔絵に言葉を失う。これは徳川美の至宝であるが、同時に日本美術の宝。会期中出ずっぱりだから、後期でもまた時間をかけて見るつもり。

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コメント

いづつやさん、こんにちは
今回私はいづつやさんがおっしゃるところの“前者”の目で見てきました。
応挙の「百蝶図」は野の花の可憐さと蝶の美しさでとても目の保養になりました。まさに春の野の美しさ、ここにありといった感じでした。

姫君たちの婚礼調度は凄かったですが、徳川家全ての姫君があれだけの調度を揃えてもらったわけでもなく・・・といった変なことを会場内で考えてしまいました。

投稿: アイレ | 2007.10.17 18:10

to アイレさん
結構混んでましたね。最初の鎧、兜で時間を
食いそうだったので、すぐ刀のところへ行き
ました。

あとは、“百蝶図”との対面のカウントダウン
モードです。アゲハチョウの配置が巧みですね。
つくしの対角線とクロスする感じで。大満足
でした。

“初音の調度”がこれほどあるとは思ってま
せんでした。これを見逃すと当分お目にかかれ
ないでしょうね。“大徳川展”様々です。
もう一回行きます。

投稿: いづつや | 2007.10.17 23:22

こんばんは。
物量作戦には舌を巻きました。
それにも増して質の高い品々にも。
後期もやはり行かれるようですね。

投稿: Tak | 2007.10.18 23:48

to Takさん
予想以上のお宝満載に喜んでます。これだけ
質の高い鎧、刀、源氏物語絵巻、蒔絵、着物
はなかなか観れませんね。

後期のお目当ては抱一の絵とあらたにでる
着物です。

投稿: いづつや | 2007.10.19 10:43

いづつやさん、追っかけの百蝶図。
気合を入れて観ることができました。
またひとつ素晴らしい蝶々の絵を知りました。
刀剣はちょっと苦手なんです。
切られたところを想像してしまって。

投稿: 一村雨 | 2007.10.27 10:02

to 一村雨さん
やっと応挙の“百蝶図”に会えました。
アゲハチョウを上からみたり、横から
みたりと日本画は西洋画とちがって視点
に自由度がありますね。

日本の刀は世界一切れ味がいいです
から、一村雨さんのお気持ちはよくわか
ります。

投稿: いづつや | 2007.10.28 16:13

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