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2007.10.14

国立西洋美のムンク展

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西洋美の“ムンク展”(10/6~08/1/6)に出かけた。ムンクのイメージは小さい頃から美術の教科書に載っているあの“叫び”で強烈に刷り込まれている。でも、この“叫び”にお目にかかったことがない。ノルウェーのオスロに行くと確実に見れるだろうが、観光でこの街を訪れることはまずないから、死ぬまで見る機会がないかもしれない。

で、“ムンク展”と聞いて、“叫び”にひょっとすると会えるかも!?と思ったが、現実は厳しかった。やってくるのは上の“不安”。が、これまで見たムンクの作品の数は少ないから、こういう回顧展は大変有難い。

99年、フィレンツェを訪問したとき、ラファエロの“小椅子の聖母”を見るためにでかけたパラティーナ美術館(ピッティ宮殿)でオスロ国立美蔵のムンク展が行われていた。20点くらいの展示で図録もなかったが下の“生命のダンス”はよく覚えている。これまで体験したムンクの絵で印象深いのはこの絵とボストン美にある“声”、そしてリトグラフの“自画像”、“マドンナ”の4点。これにこの回顧展の108点が加わった。これくらいみるとムンクが近くなる。

今回出品されているのはオスロ市立ムンク美術館(1963年開館)が所蔵するもの。
では“叫び”はどこが持っているのか?美術本に載っているのはオスロ国立美術館
(1836年開館)にあるもの。だが、“叫び”はムンク美にもある。このあたりがややこしい。“叫び”は4点制作され、ムンク美に2点あり、93年出光美であったムンク展(このころ名古屋にいて見てない)に出品されたのはその一枚(テンペラ画)。

“叫び”だけでなく、ほかの作品でもムンクは複数制作している。“生命のダンス”も国立美とムンク美に1点づつある。これが2つあると思ってないから、絵の前では“フィレンツェで見たのはこの絵だったかな?ちょっと違うな!”と不思議な感じがした。構成は同じだが、画集などにでている国立美のほうが女性の顔の描き方がすっきりし、衣装の白、赤、背景の緑がとても明るい。国立美を10点とするとムンク美は7点くらいの出来栄えである。

夢中でみたのはこの“生命のダンス”と“声/夏の夜”、そして“不安”。“声/夏の夜”はボストン美で感激した“声”とよく似た絵。垂直にすっとたつ木々の中、髪が肩までのびた女性が手を後ろにまわし、こちらを向いている。天地いっぱいに女性を描く構成はすごくインパクトがある。そして、色彩のコントラストに惹きつけられるのが中央にみえる青い海面に美しく浮かび上がる月光の柱。これは性のシンボル。この黄色のまると細長いフォルムは“生命のダンス”、“浜辺の人魚”にもでてくる。

これまで代表作の“叫び”に縁がないので、三部作の一つである“不安”をじっくり見た。右の帽子を被った女性の顔はそれほど怖くはないが、髑髏のような顔をした男たちはどことなく不気味。背景の血のような赤に染まった空を見ました!見ました!かっと目をひらいて。こんな絵をみたら、ムンクが“芸術は人間の内部からのみ生まれる”と言ったことが誰でも腹にストンと落ちる。

最後のコーナーにオスロ大学講堂壁画“太陽”の習作があった。この絵を見たいという願望は強いが、画集で我慢するしかなさそう。

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コメント

いづつやさん、こんばんは
「不安」「絶望」の血のような赤い空は一生頭の中に残りそうです。
生命のフリーズの衝撃はかなり胸にずしんときまして、今回東京美術館巡りで最初にこれを見てしまったために後の予定が建てられなくなりました・・・

投稿: アイレ | 2007.10.16 21:59

to アイレさん
“不安”の赤い空は印象に残りますね。
“叫び”の背景も同じですから、これぞ
ムンクという絵に会えて満足してます。

“生命のフリーズ”は全部がぐっとくる
絵ではないですが、孤独、不安、死への
感情など人間の内面をストレートに表現
した色やフォルムが心のひだにつきさ
さってくる感じです。

展覧会を観る順序としては最後のほうが
いいかもしれませんね。

投稿: いづつや | 2007.10.17 11:29

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