東博浮世絵エンターテイメント! 師宣・歌麿の肉筆画
現在、東博平常展にある浮世絵の展示期間は10/23から11/18まで。作品数は29点。いつもと変わりない数だが、このなかにずっと待ち続けていたのが2点入っていた。北尾重政の“東西南北美人・東方乃美人仲町おしま、お仲”と上の菱川師宣の“北楼及び演劇図巻”。
“東西南北美人”は江戸を代表する4つの遊里の女たちを描いた揃物で、この二人は深川仲町の辰巳芸者。顔をみるだけなら、普通の女性のイメージだが、着物の裾をまるくし、足をちらっと見せて気風のいい辰巳芸者の感じを出している。
“北楼及び演劇図巻”は3年前から展示の機会を待っていたが、ようやく登場した。この絵巻には吉原遊郭と芝居小屋の様子が描かれており、長さは7mもある。今回披露されているのは前半部分のみ。上は張見世で遊女を品定めしているところや奥座敷での遊興の場面が描かれている。
この絵の前には太夫が従者をつれて歩くところが3回でてくるが、いずれも先頭の太夫はあの“見返り美人”と同じ髪型をし、赤い着物を着ている。その太夫からでるオーラが強烈なのだろうか、男たちの目は釘付け。菱川師宣や宮川長春の肉筆風俗画はコンディションがいいので、男女が身につけている衣装の絵柄や色を見るのが本当に楽しい。
いつも目を奪われるのがセンスのいい模様。大雑把な意匠ではなく、一つ々の文様が実に精緻で斬新。女性だけでなく、刀をさした武士のデザイン感覚もハイレベル。張見世で女と話している男は黄色とうす青の組み合わせ。なかなか洒落ている。
下は歌麿の肉筆美人画“立姿美人図”(重美)。この絵は画集で知っていたが、ここでお目にかかれるとは思ってもみなかった。これは歌麿が地方の素封家の注文で描いたもので、子孫の家に伝えられていると解説にあるから、おそらく今、東博に寄託されているのだろう。すらっとした立姿にすごく惹きつけられる。そして、とても美しいのが金の線が入った黒衣の裾に散らされた桜の花びら。
出光美にある“更衣美人図”(重文)とこの絵を前にして、もし“どちらか好きなほうを差し上げる!”といわれたら、こちらのほうを選ぶ。歌麿はほかに版画“風俗三段娘”が3点でている。
北斎と広重は定番の“富嶽三十六景”、“東海道五十三次”が2点ずつ。広重の人気の絵、雪景色“蒲原”を“雪が積もっている感じが家の屋根だけでなく、山のかたちもそうだなあー!”と感心しながら見ていた。
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