« 大リーグ終盤戦 ポストシーズンへ進むチームは? | トップページ | 上野美術スポットあれこれ »

2007.09.05

速水御舟の伊勢物語

1024ホテルニューオータニのなかにある美術館を今年はじめて訪問した。

ここでいま“所蔵作品展”(8/25~
9/24)が行われている。

これまで4、5回足を運び、ローランサンやドンゲンの女性画、ビュフェの作品、浮世絵肉筆画、風俗画、日本画などを一通り鑑賞したので、最近はご無沙汰中。が、たまたま開いたHPに、速水御舟の画集に載っている右の“伊勢物語”が出てきた。これは嬉しい展示なので、喜び勇んで出かけた。

西洋画19点、日本画6点しかないから、15分で見終わる。西洋画はお気に入りのビュフェの“カフェの男”と再会した。初見の絵ではポーシャンの大きな絵“漁夫と娘”とヴァラドンの“座る裸婦”に足がとまった。

“伊勢物語”は御舟が23歳のときの作品。右は伊勢物語・23段、“筒井づつ”の場面。こげ茶色と深い緑で彩色された垣根のところにいるのが在原業平で、屋敷のなかにいるのは幼馴染の女。ここで二人はこんな歌を詠みかわす。

業平 “筒井づつ井筒にかけしまろがたけ 過ぎにけらしな妹見ざるまに”

(幼い頃、井筒と比べたわたしの背丈も、もうすっかり井筒を越してしまったようですよ、貴方とお会いしないでいるうちに) これは求婚の歌。

女 “くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ 君ならずして誰かあぐべき”

(あなたと長さを比べあったわたしの振り分け髪も、肩を過ぎるまでに伸びました。あなたでなくて誰のために髪上げをいたしましょうか) 業平のプロポーズに対する“結婚してあげてもいいわ!”という承諾の返歌。

“井筒”というのは井戸の地上部分の囲いのこと。これが苗字となっているので、この“筒井づつ、、、”の和歌はそらんじている。また、“髪上げ”は女性の成人の儀式であり、女が求婚に応じたことを表す。

幼馴染の二人は長い空白期間のあと愛し合って結ばれたというのに、業平は根っからのプレイボーイだから、別にいい人ができ、夜になるとせっせと愛人宅に通う。今なら絶対こんなことはないが、妻が夜道を行く夫の身を案じて詠む歌は、

“風吹けば沖つ白波竜田山 夜半にや君がひとり越ゆらん”

(風が吹くと沖に白波がたつという名の竜田川を、夜更けにあの方はたったひとりで越えていることでしょう)

なんという度量の大きさ!植え込みのなかにかくれていた業平はこの歌を聞き、かぎりなく妻がいとしくなって以後女の家には行かなくなる。御舟の絵のお陰で昔覚えた懐かしい和歌を思い出した。

|

« 大リーグ終盤戦 ポストシーズンへ進むチームは? | トップページ | 上野美術スポットあれこれ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 速水御舟の伊勢物語:

« 大リーグ終盤戦 ポストシーズンへ進むチームは? | トップページ | 上野美術スポットあれこれ »