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2007.09.21

美麗 院政期の絵画展 その一

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奈良博で行われている“美麗 院政期の絵画展”の前期(9/1~17)と後期(9/19~30)を見てきた。サントリー美の屏風展で少し紹介したように、これは十年に一度クラスのすごい展覧会なので、どうしても見逃すわけにはいかない。

ボランティアで作品の解説をしていた方の話しが興味深かった。なんでもこの展覧会は定年でお辞めになった前館長の最後の大仕事のようで、これまでの運営で他館やお寺との間にできた豊富な人脈をフル活用して95年にあった“日本仏教美術名宝展”を彷彿とさせる傑作を目一杯集めてきたとのこと。

会期中に展示される作品は全部で125点。うち国宝が49点。残りも大半が重文。仏画、絵巻物で有名なのがびっくりするくらい出ている。お陰で95年のとき展示替えで見逃した作品をほぼリカバリーし、追っかけていたのにも対面することができた。で、今はすばらしい仏画や絵巻物の余韻に浸っている。傑作があまりに多いので、2回にわけて感想を述べてみたい。

院政期というのはご承知の通り、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけてのころ。白河上皇が1086年に院政を開始し、その後、鳥羽、後白河、後鳥羽と続く。この院政期に美麗な仏画や平家納経などの装飾経、地獄絵、伴大納言絵巻などの傑作が数多く制作された。名品が切れ目なく続くので感動の総量はとてつもなく大きい。

見所のひとつは仏画。最初に飾ってある大きな“五大力菩薩像”からはじまり美術本に載っている代表作がぞくぞくでてくる。これは圧巻。1086年に制作された“仏涅槃図”(前期で終了)は涅槃図の最高傑作。追っかけていた“十二天像”(6点)は前期に展示された色の鮮やかさと綺麗な顔が印象深い“帝釈天”を暫しうっとりしてみていた。

仏画には装飾的な金箔や截金(きりがね)が施されているが、金が一番残っているのが“孔雀明王像”(東博、全期間展示、拙ブログ05/7/14)。ほかの名品と見比べてみても、この截金の精緻さは際立っている。今回最も心を打ったのが12年ぶりに再会した上の“十一面観音像”(奈良博、全期間)。ボストン美からやってきた“馬頭観音像”(全期間)の蓮華座にみられる桃色の照暈(てりぐま)同様、十一面観音の肉身部に施された強い朱の暈取りに目を奪われる。暈取りと斜め向きの姿勢で立体感をだしているので、彫像をみているような気分になる。

仏画のなかで会期中6点みられるのが白象に乗るお馴染みの“普賢菩薩像”。後期に展示される“普賢延命菩薩像”(京都・松尾寺)は昨年、東博の国宝室に登場した。菩薩より白象のほうの目がいくのはこの“普賢延命菩薩像”と象の体に金の飾りを沢山つけている鳥取・豊乗寺蔵の“普賢菩薩像”(前期で終了)。

仏画とともに収穫が多かったのが後白河院のときに描かれた地獄絵。下の“地獄草子”(奈良博、前期)、後期展示の東博の“地獄草子”(06/3/17)、“沙門地獄草子”(5点、五島美ほか)、“餓鬼草子”(東博前期05/12/12、京博後期)、“病草子”(6点、京博ほか)、“辟邪絵(へきじゃえ)”(奈良博05/5/11、全期間)など代表作がほとんどある。

とくにいつか見たいと願っていた下の奈良博蔵“地獄草子・鉄鎧所(てつがいしょ)”が目の前に現れたので、夢中になってみた。昨年の“大絵巻展”(京博)のとき展示替えでみられなかったから喜びもひとしお。これは罪人が獄卒の鬼に捕まえられ鉄の臼(うす)で人肉ミンチにされるところ。右の赤い鬼は骨を処理しながら嬉しそうに笑っている。

恐怖心をうえつけるにはこれ以上ないというほど怖い顔をした鬼のとなりにユーモラスな鬼も描く。日本では、12世紀後半、豊かな想像力をもつ絵師がこんな面白い絵を描いていたのである。

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コメント

こんばんは。
私も行って来ました!
もう大感激です。こんなに素晴らしい展覧会初めてでした。
馬頭観音はこの先いつ見られるか分からないと思い、
もう1度戻って見直しに行きました。
前期を見なかったのが最大の心残りです。

投稿: meme | 2007.09.23 18:47

to memeさん
こんばんは。毎日この展覧会の余韻に浸ってます。
京博の“狩野永徳展”はすごいことになりそう
ですが、奈良博のこの特別展も最高ですね。

ボストンからやってきた“馬頭観音像”は日本に
あったら間違いなく国宝ですね。馬の鼻が赤く
なっていたのが面白かったです。

前期は予想してなかった“鉄鎧所”がでてきたの
で夢中になってみました。

投稿: いづつや | 2007.09.23 22:31

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