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2007.09.27

上野の森美術館の山下清展

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展覧会情報の入手が素早いokiさんから教えてもらった上野の森美術館の“山下清展”(9/21~10/9)を200%楽しんだ。

放浪の天才画家、山下清(1922~1971)は芦屋雁之助が演じた関西TVの“裸の大将放浪記”でそのパーソナリティをイメージするだけで、本物の絵をこれまで一枚も見たことがない。図録を読むと、画家・山下清が34歳のとき東京の大丸百貨店で開いた個展(1956)では、80万人の観客があったというし、その人気は半端じゃあないのだから、どこかで作品を見る機会があってもおかしくないのに、どういうわけかこの画家とは縁がなかった。

で、お預けを食らった犬にやっと食事の時間がきたときのように、目の前に展示された作品を夢中になってみた。作品数は山下清の代名詞である貼絵をはじめ、油彩、ペン画、素描、陶器の絵付けなど140点あまり。はじめてみるので作品自体が新鮮そのもの。これが山下清の絵か!という感じである。

切り取った色紙が大きい最初の頃の貼絵からはじまり、段々腕があがり小さな紙や細長い紙を使って表現された風景画や花などの静物画は見る者の心をとらえて離さない。山下清は日本のゴッホといわれるが“栗”や“菊”の絵を見ていると、たしかにゴッホの絵のタッチや色使いを彷彿とさせる。これらは15歳~18歳のとき描かれたのだから驚く。

TV番組では、山下清は放浪の旅にでて、そこで見た風景や出来事を描くという場面が再々でてくるが、これは事実と違うようだ。実際は放浪から戻ってきた八幡学園や実家で描いている。山下清にはスーパー記憶力があり、完成された貼絵と各地の原風景はあまり変わらないという。

今回見ごたえがあったのが、専門の修復家によって修復された8枚の貼絵。どれもすばらしいので、息を呑んでみた。上は代表作の“長岡の花火”(1950)。なんと心に響く絵だろうか。大きな花火が7つ横にきれいに並んでいる。目を見張らされるのがそれを眺めている大勢の人々。

皆向こうむきで、遠くにいくにつれ大きさをすこしずつ小さくしてびっちり描かれている。これを仕上げるには尋常ではない根気や集中力が必要と思われるが、山下清は鍛錬して身につけた高い貼絵技術で美しい花火とこれを楽しむ人々の様子を生き生きとそしてあたたかく描いている。また、北斎や広重が描く浮世絵風景画のような“桜島”やゴッホの女性画を模写した“ラ・ムスメ”、“ロンドンのタワーブリッジ”にも釘付けになった。

下は見たとたんにKOされた油彩画“群鶏”(1960)。Myカラーの緑と黄色が多く使われたこの色使いにもうメロメロ。この絵をよく見て欲しい。そう。これは伊藤若冲の“動植綵絵”のなかの一枚“群鶏図”を模写したもの!山下清も若冲の絵に魅せられていたとは!?(今から47年前) 二度びっくりである。ちなみに美術史家の辻惟雄氏が“奇想の系譜”を書いたのが1988年だから、山下清は辻氏よりずっと前に若冲に注目していたことになる。これってすごいことでは!極楽浄土にいる若冲もこの絵をみてさぞかし喜んでいることだろう。

会期がこんなに短い理由がわからないが、この展覧会はエポック的な鑑賞体験として長く記憶に残りそう。

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コメント

会期がほんとに短いですよね、どこかに巡回するのかな。
山下清の展覧会は町田の東急でやったのがわすれられません。
上野の森は次のシャガールが長いんですよね。
モーストリー・クラシックで招待券プレゼントというから申し込んでみました。

投稿: oki | 2007.09.28 00:42

to okiさん
会期がどうしてこんなに短いのでしょうか?
図録には展覧会場の上野の森美が出てきま
せんし、巡回展の案内もなしです。なのに、
“山下清展 2007~2008”となっているの
はこれから巡回先を探すのでしょうか?

次回のシャガール展はリトグラフや木版は
何度もみたことがありますから、ちょっと迷っ
てます。油彩の20点にいいのがあるかどう
かなのですが、この美術館は三回に一回は
ひどい内容の展覧会をやりますからリスクは
あります。

投稿: いづつや | 2007.09.28 12:00

いづつやさん

いつもお世話になってます。
今、千葉県立美術館でやっている山下清展に
今日行ってきました。 絵葉書で見たことはあったんですが本物は初めてでした。 千葉県立美術館はちょっと遠いなと思ったんですが、東京でやる予定はなさそうだったんで(次会場は明石だそうで)足をのばしました。
全部で189作品+遺品、資料本。最初に目に留まったのが12歳で制作した蝶々です。色のセンスも抜群です。見ていくうちにだんだんすごい作品が出てきて私も本当にノックアウトされました。癒される感じもありましたね。行って良かった! Joyce

投稿: Joyce | 2011.07.01 18:55

to Joyceさん
山下清の絵に大変惹かれています。色使いが
比類なくすばらしいですね。印象派と同じ感覚
でみてますから、スーラやゴッホの作品同様、
とてもいい気分になります。

投稿: いづつや | 2011.07.01 22:22

いづつやさん

なるほど。
ちぎり絵は点描画と同じ効果ですね。
言われて気がつきました。

Joyce

投稿: Joyce | 2011.07.02 23:36

to Joyceさん
明るい色を組み合わせたちぎり絵で風景や
人物を生き生きと描いた山下清は日本人の
誇りですね。天性のすばらしい色彩感覚に
脱帽です。

スーラが‘長岡の花火’をみたら裸足で逃げ
出すかもしれません。ゴッホだって山下清の
絵や棟方志功の版画をみたらびっくりするで
しょうね。

投稿: いづつや | 2011.07.03 01:18

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