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2007.09.13

ティツィアーノのサロメ

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海外からやってくる西洋絵画の展覧会の場合、いつも言っているように、目玉の作品が2,3点あればそれで充分。このMy評価基準に従うと、現在、Bunkamuraで開催中の“ヴェネツィア絵画のきらめき展”(9/2~10/25)は鑑賞リストに入らないのだが、チラシに使われている上のティツィアーノ作、“サロメ”がどうしてもみたいので、例外扱いで出かけた。

はじめからこの絵しか関心がないから、出足は遅い。ベリーニ、ヴェロネーゼ、ティントレット、カナレットらの出品作は予想通り、アベレージ。ヴェネツィア派の絵画の魅力はあの赤や青など輝く色彩なのに、心ときめくのが1点もないのである。タイトルの“きらめき”に惑わされないように。で、図録は買わず20分で出口に向かった。

さて、お目当ての“サロメ”である。これは美術本や愛読書の宮下規久朗著“カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン”(04年、名古屋大学出版会、拙ブログ04/12/23)、パノフスキー著“ティツィアーノの問題”(05年、言叢社同人)にでてくるのでいつかこの目でみたいと願っていた。

絵を所蔵しているローマのドーリア・パンフィーリ美術館は次回のローマ旅行ではカラヴァッジョの2作品をみるため、必ず訪問しようと思っているところ。日本でこのサロメと対面できるとは思ってもみなかった。

これが描かれたのは1515年頃で、ティツィアーノ30歳の頃。同時期の絵、“聖愛と俗愛”(06/5/22)と較べると、色の鮮やかさとか細かいタッチは“聖愛と俗愛”ほうがだいぶ上。もし“お好きなのを差し上げる”と言われたら、即座に“聖愛と俗愛”に手をかける。

“サロメ”はいつも眺めていたい絵ではないが、不思議な魅力がある。洗礼者ヨハネの首が載せられた大皿をもつサロメはこのおぞましい首がなければ、聖母像にもなるほど柔和な顔をしている。サロメの絵ですぐ思い浮かべるモローの“出現”がサロメを“ファム・ファタル”として妖艶に描いているのに対し、ティツィアーノの“サロメ”は静謐そのもの。

普段はおとなしい女子高生が同級生を殺すといったショッキングな事件に接し、強い衝撃を受けることがあるが、この醒めたサロメにも不気味な怖さが漂っている。現代に生きるわれわれには激情的に表現されたモローのサロメより、こういうサロメのほうが妙にリアリテイを感じてしまう。

大皿の首はティツィアーノの自画像といわれている。聖人ヨハネが首を撥ねられたのは30歳で、これを描いたティツィアーノと同年齢だった。下は後年のティツィアーノの自画像(ベルリン国立美術館)。頬骨の形、鷲鼻などがよく似ている。

昨年のボルゲーゼ美、今年のプラド美(3/23)でティツィアーノの名画を沢山みて、この画家がますます好きになったが、今回のサロメも大満足だった。

なお、拙ブログは9/14~9/20までお休みします。

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コメント

このサロメの心が読めないのです。
あまりにも平然としすぎて。美しすぎて。
そこが恐いのでしょうね。

投稿: 一村雨 | 2007.09.30 07:33

to 一村雨さん
こんばんは。兄弟子のジョルジョーネがホロフェ
ルネスの首を自画像にした“ユーディト”(エルミ
タージュ美)を描いたので、ティツィアーノも
サロメを描いたのではといわれてます。

ユーディトもサロメも聖母像そのものですね。
この時点では、二人とも自画像を首にするのが
精一杯で、カラヴァッジョの血が吹きでる“ユー
ディト”のようなリアリズム絵画までは描けな
かったのでしょうね。時代がそこまで進んでい
ませんので。

投稿: いづつや | 2007.09.30 21:19

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