連続テレビ小説「どんど晴れ」
7月の中旬からすっかり嵌ってしまい、以後欠かさず観ていた。前回の「芋たこなんきん」もちょくちょくみていたが、毎日見るほどではなかったから、こうして熱心に観たのははじめてのこと。
きっかけは小田和正が歌う主題歌「ダイジョウブ」。耳ざわりのいいこの歌を聴きたくてチャンネルをまわしていたのに、そのうち物語自体にすっかり魅了されてしまい、最後は完全に嵌ってしまった。
で、観ているうちにこの番組の人気の秘密(20%を超える視聴率)がわかってきた。人気の中心はヒロインの浅倉夏美を演じる比嘉愛未(ひがまなみ)。これからすごく人気がでてくるのではないかと予感させるとてもきれいな新人女優で、結婚式の花嫁姿がまばゆいくらいに美しかった。
笑顔のすばらしいヒロインは岩手の民話にでてくる幸せを呼ぶ“座敷童(ざしきわらし)”であるという設定。“座敷童”は旧家に住むと信じられている家神。赤い顔をし、髪を垂らしている童女で番組のなかにときどきファンタジックに現れニコッと笑う。こういうダブルキャラクターが登場する場合、観ている者はストーリーの節目々にこの“座敷童”効果がでてきて、物事はいい方向にむかっていくことはだいたい予想できる。だから、物語への関心事は登場人物同士の衝突、感情のもつれ、思わぬ事態の出現といった観る者をハラハラさせたり、心配させたりする場面が一体どういう風に明るい局面に転換していくかにある。
観はじめたのは、物語の舞台である盛岡の老舗旅館“加賀美屋”で大女将(草笛光子)から跡継ぎに指名された夏美の婚約者、加賀美正樹が色々改革案を提案し、これを実行しようとして板長と衝突するあたりから。出演している役者は芸達者揃い。大女将、女将の宮本信子、南部鉄器職人の長門裕之、妻、正樹を捨てて加賀美屋を出て行った父親役の奥田瑛二、仲居頭のあき竹城、夏美の父親の大杉漣など。
古い番組だが、旅館物語として高い人気を誇った伊豆の熱川温泉旅館の女将が主役の“細腕繁盛記”とのちがいは、この番組では旅館業を生業とする者の心得である“おもてなしの心”が女将や若女将となった夏美の口から繰り返し出てくること。そして,加賀美屋独自のおもてなしの精神が“来る者 帰るがごとし”ー宿泊客が加賀美屋にやってきたとき、自分の家に帰ってきたような気持ちになる旅館でありたい。おもしろいことに秋葉原のメイドカフェでも、だいぶ前から“ご主人様、お帰りなさいませ!”と若い女の子が言っている。
この加賀美屋のキーフレーズは番組の人気が高かったから、全国の旅館の女将や従業員の心をとらえているかもしれない。さらに興味深いことが金曜日の放送に出てきた。外資系による加賀美屋の乗っ取り計画を救った経営者が「加賀美屋の“来る者 帰るがごとし”の心はドイツのローテンブルクの城壁に書かれている“来る者に安らぎを 去り行く者に幸せを”と同じである」と語る場面。心にズキッときた。
旅館、ホテルの経営者たちは安定した経営基盤をつくるため、リピート客の獲得に知恵をしぼっている。そのなかで最も大切なのが常におもてなしの心でお客に接すること。誰でも“頭”ではわかってる。でも、徹底して“手足”をそのように動かすことが難しい。“手足”が動くためには“来る者 帰るがごとし”といったこと(旅館の理念のようなもの)を自分の“心”でいつも感じていないといけない。“頭で理解し、心で感じ、そして手足を動かす!” 成功するビジネスモデルを“どんど晴れ”にみたような思いである。
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