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2007.08.20

山口晃展 今度は武者絵だ!

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練馬区立美術館で行われている“山口晃展 今度は武者絵だ!”(8/17~9/17)はなかなか面白い。これは回顧展ではなく、学生時代から手がけている“武者絵”をテーマにした最新作のお披露目会。

もっと多数の作品がでていると思っていたが、それほどでもなく、また5月にあった“会田誠・山口晃展”(拙ブログ5/30)で大変魅せられた大作、“渡海文殊”の続編もなかった。この人気アーティストの作品では、現代の“洛中洛外図”よりは“渡海文殊”の方により魅力を感じるので、また日本画の見立絵が2,3点くらい見れるかなと期待していたが当てがはずれた。

でも、満足度が下がるということはない。カッコいい武者絵、しっかり見ると思わず笑ってしまうユーモラスな若冲物語漫画、源頼朝の写し、現代版洛中洛外図などが目を楽しませてくれる。漫画や劇画を見ないので、最新作の“無残ノ介”に目が輝くことはないが、戦いの場に登場するパトカーや戦車はしっかり見た。

“當卋おばか合戦”は上野にも出ていた作品。この絵をしばらくみていて思いついたイメージがいくつかある。一つはこの絵の感じがどこか“束芋”の作風とオーバーラップすること。右の最初の場面では秘書をつれた社長風の男性が“やぁーやぁー”と手をあげて本陣の天幕に入っていく。社員の戦争シミュレーションゲームの現場視察にやって来たという感じ。

のんびりした光景だなとみていると、すぐぎょっとする場面がでてくる。“そこの若い武士!パソコンでそんな卑猥な画像を見るんじゃない!”、“丼物を出前しちゃったの。イージーだな。炊事班が皆の食事をつくるのじゃないの!”とつい口を出したくなる。

また、画面の下のほうでピストルとドスを持ち大喧嘩をしているヤクザとか、決戦の流れ弾があたり顔から真っ赤な血を吹き出している女子高生、そしてその女の子を半狂乱状態で見ている女友達など、この絵には“束芋”の絵に通じる強烈な“毒性”もしっかり描かれている。ピュアなところとエログロ的なモティーフを同時に描くところは会田誠と同じで、表現したいものをストレートに描く現代アーティストの本性がそのままでている。

横道にそれるが村上隆も自分の作品の付加価値を高めるため、ぶよぶよした肉体に絵の具をつけアクションペインティングのパフォーマンスをし、それを撮影させ展示会場のモニターで流していた。ミッキーマウスのような可愛いキャラクターを生み出す一方、平気ですっぽんぽんになっちゃうのである。これぞ現在アーティスト!われわれとは違う世界にいる。

この絵で想起させられるもうひとつのイメージは映画“ロード・オブ・リング”。巨大なクレーンの下で敵軍を蹴散らしているガリバードクロ武士や左側に陣取る悪役のドクロ軍団は“ロードオブリング”の戦いの匂いがする。その中で山口晃オリジナルの“メカ武士”や“バイク馬”が面白い。“テクノロジー日本”に慣れている外国人がこれを見たら、“流石!日本人は芸術の世界にもホンダのバイクをもちこむ”と感心するのではないだろうか。

美しい“バイク馬”が見られるのが上の“厩図2004”。右から二番目の厩にいる馬は前の庭で体の手入れのため、部品をいろいろチェックしてもらっている。下はこの絵の原画、“厩図屏風”(六曲一双の左隻、16世紀、東博蔵)。武士にとり馬は大事な宝だから、立派な厩が建てられた。つくりがいいと多くの人が集まる。で、厩は社交の場となり、囲碁や将棋で遊んだりする。

現代版厩図では、将棋をさす男たちの隣では現代人、公家、町人が酒を酌み交わし、左端では男色遊びの真っ最中。男の子だけでなくロボットが給仕するところが山口晃の現代感覚が冴えわたるところ。一つ々の作品をみると、山口晃の描写力、構想力はほかの作家と較べるとちょっとものが違うな!という気がする。次回の個展では“渡海文殊”シリーズの続編をみてみたい。200%期待したい作家である。

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コメント

山口晃は、魅力ありますね。

三越の新館の広告を、見て以来デス。

新聞に入ってきた折込広告デス。

ソノ広告を、今でも、大切に保存して、

時々、覗いて 感心してます。

投稿: 花 | 2007.08.21 22:38

to 花さん
現代版、洛中洛外図とはいいとこに目をつけた
ものです。でも、これを仕上げるのは相当キツイ
作業ですね。

沢山の情報が入りすぎると観ているほうが混乱
しますから、余白を適度につくり、しっかり観て
欲しいところとさらっと流して欲しいところにメリハリ
をつけた構成が要求されます。

観ていて楽しいということは山口晃の描写力や
構成力が優れているからでしょうね。個人的には
“渡海文殊”タイプの大作をみたいです。

投稿: いづつや | 2007.08.22 10:41

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先日オープニング・レセプションへ伺った際には 未完であった山口晃氏の新作「続・無残ノ介」が ついに昨晩完成したそうです!![:拍手:] 「山口晃展 今度は武者絵だ!」 「写真提供:練馬区立美術館」 「続・無残ノ介」こちらの会場風景は美術館の方が撮影して下さったもの。まだ一部未完の部分(黒い部分)が確認できますね。 「写真提供:練馬区立美術館」 「続・無残ノ介」 太刀捌きしびれます。擬音が自然と聴こえてきそうです。 「写真提供:練馬区立美術館」 今夜... [続きを読む]

受信: 2007.08.31 20:22

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