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2007.08.02

秘蔵の名品 アートコレクション展 その一

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ホテルオークラの夏の恒例イベント、“秘蔵の名品 アートコレクション展”(8/1~24)は今年もまた楽しませてくれた。04年から毎年この展覧会に足を運んでいる。

出品される絵は大半が個人蔵や企業が所蔵しているため、一般の美術愛好家には縁遠く、画集などには載ってないものが多い。なんだか、美術評論家とかコレクターなどの限られた専門家だけが知っている名画の世界をのぞかせてもらったという感じがする。

作品は西洋絵画、日本画、洋画の3つに分かれている。サプライズの西洋絵画をご紹介する前に、今回のお目当てだった日本画のことから。今年は32点でているが、30点は明治以降に制作されたもの。このなかで対面を心待ちにしていたのが鏑木清方が描いた上の“雨月物語”。実はこの絵の存在を知ったのはつい一ヶ月前。うかつにもアートコレクション展を7/1の展覧会プレビューのときは忘れていた。で、運よく思い出したこの展覧会に“雨月物語”が全点展示されるという。

が、手元の画集には載ってないので絵のイメージが涌かない。でも、ミューズがまた手助けをしてくれて、最近復活出版されている“週間アーティストジャパン”の“鏑木清方”を購入したら、見開きの頁にこの“雨月物語”(全8点)が4点載っていた。“これは代表作ではないか!有難いことにこの絵がすぐホテルオークラで見られる。なんというめぐり合わせ!”とニンマリ。大好きなマージャンでいうと、“リーチ一発ツモ!”みたいなもの。

西洋絵画にすごくいいのがあったから、日本画のコーナーへたどりつくまでにかなり鑑賞エネルギーを消費したが、“雨月物語”の前では残りのエネルギーを全部この絵に注ぎ込むぞとばかりに見た。清方は上田秋成の“雨月物語”の“蛇性の婬(じゃせいのいん)”を“雨やどり”、“まろや”、“ちぎり”、“黄金の太刀”、“もののけ”、“泊瀬(はせ)”、“吉野”、“蛇身”の8つに絵画化している。

惚れ惚れするのが衣装の色使いと精緻に描かれた模様。吹抜け屋台の構図を使った“ちぎり”では、座敷の緑に男の紺色、女のうすピンク、待女の青緑が一段と映え、二人の結婚を引き立てるように画面の真ん中には赤い楓が装飾的に描かれている。

上は最後の“蛇身”。女が滝に飛び込む場面である。右上の渦巻きのほうを見つめる女の顔は般若面の形相。暗い部屋でこの女をみると背筋が寒くなりそう。まるで生き物のような波頭と迫力ある渦巻きの動感表現が見事。この“雨月物語”は小林古径の“清姫”(同じく全8点)と並ぶ古典画の傑作ではなかろうか。

感動の絵がもう一枚あった。下の長いこと待っていた杉山寧の“気”。この3羽の鷺は伝統的な花鳥画のスタイルではない。杉山にしか描けない、すごくピュアな鳥の絵。対象以外の余分なものはそぎ落とし、ここには対象の本質を深くとらえられた神秘的な美しさが漂っている。まさに杉山寧ワールド。

ほかにも中村岳陵の鯉の絵、東山魁夷の“晴れゆく朝霧”、上村松園の代表作、“鼓の音”に思わず立ち尽くした。山種の開館記念展みたいに名画の数々に体がほてってくる感じだった。

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コメント

いづつや様とほぼ同じ作品に感動しました。
やはり鏑木清方の雨月物語は名作だったのですね。
しかも私も一番凄さを感じたのは「蛇身」でした。

杉山寧の「気」もまさに周囲に気迫を撒き散らしてました。
私もこの絵の前では思わず立ち尽くしました。

投稿: meme | 2007.08.11 20:22

to memeさん
なんと感動の絵が重なりましたね!ホテルオークラは
鏑木清方をよく展示してくれます。3年前は大倉集古
館蔵の“七夕”といういい絵を展示してくれました。

雨月物語を見れたのは大収穫でした。杉山寧の“気”
もすごい絵ですね。

投稿: いづつや | 2007.08.12 00:19

こんにちは
わたしも日本画では清方の雨月物語が最高でした。
アーティストジャパンから?よかったですね。
随分昔の集英社の画集に掲載されているのを探してきましたが、
とても嬉しかったです。
清方の随筆の中でこの作を作るにあたり、岩佐又兵衛を意識した、
というようなことがありました。
なんとなく納得です。

投稿: 遊行七恵 | 2007.08.22 17:34

to 遊行七恵さん
清方はこんなすばらしい絵を描いていたのですね。
蛇身の場面で、後ろを振り返る女の形相が古径の
“清姫・鐘巻”に描かれた怖い龍と重なりました。

衣装の精緻な文様表現、鮮やかな色使い、清方渾身
の作品ですね。参りました!

投稿: いづつや | 2007.08.23 11:39

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