京都五山 禅の文化展
東博で開催中の“京都五山 禅の文化展”(7/31~9/9)で興味があるのは禅僧の肖像彫刻や書ではなく、水墨画。だから、1~3章まではさらさらと流し、4章の“五山の学芸”、5章の“仏画・仏像”に多くの時間を割いた。
例によってこういう大特別展では出品作は六つの展示期間に細切れに配分されて出てくる。一応前期(7/31~8/19)、後期(8/21~9/9)で区分されているから、後期(4,5,6期)も図録に載ってる作品のなかで是非とも見たいものが多く見れる期間をさがして、また足を運ぶことになりそう。
禅僧画家のなかでは周文の水墨画が会期中沢山でてくる。日本にあるいい絵を全部集めてきた感じ。前半では東博の有名な“竹斎読書図”(国宝)、“蜀山図”(重文、静嘉堂文庫)、“山水図屏風”(重文、大和文華館)がいい。その周文に水墨山水を習った雪舟は4点ある。“破墨山水画”(国宝、東博)、観音図2点、毘沙門天図。
掛軸の大半は上部に多くの詩を書き添えた“詩画軸”。漢詩を理解する知識はほとんどないから、これは横において、下の絵の描写が掛軸に対する好みを左右する。昔、大阪の藤田美術館でみた上の“柴門新月図”(国宝)には今回も魅了された。
門の前で杜甫が友を送る場面である。二人の向こうに見える竹林の描写が心をゆすぶる。墨の濃淡で表現された右左の竹林は幾重にも重なり、互いにお辞儀するようの曲がっているため空間的な広がりができている。詩趣をうまく表現した画面構成に見入てしまう。
はじめてお目にかかる絵で収穫の第一は下の“達磨図”(黒谿筆、一休宗純賛、真珠庵)。目に飛び込んでくるのが精神の強さを感じさせる大きな目、そして勢いのある筆致で描かれた衣文線の濃墨。前々から見たかったこの達磨図に会えるとは予想もしてなかったから、立ち尽くしてみた。
見ごたえのある達磨図がもう一点ある。それは左右に蝦蟇、鉄拐の絵が並んだ吉山明兆が描いた大きな三幅図。面白いことに昨日からはじまった“若冲とその時代展”(千葉市美術館)に円山応挙がこの蝦蟇、鉄拐の絵を真似て描いた“蝦蟇鉄拐仙人図”が展示されている。
また、相国寺の“十六羅漢図”の8点にも釘付けになった。羅漢の衣の赤や緑がびっくりするほど鮮やかで、龍の白も印象深い。図録をみると後期にはこれと同じような強い色調が特徴の“五百羅漢図”(45幅のうち6幅、東福寺)が登場する。京博で一度見たことがあるが、狩野一信の濃密な“五百羅漢図”(東博)が体にしみ込んでいるので、再会がすごく楽しみ。
これだけ後半に見ごたえのある絵があると、最初のコーナーの肖像画をさらっと見たのは正解だった。
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コメント
こんばんは。
最近、よく見させていただいてます。
トラックバックをさせていただきました。
いづつやさんのブログを読んで、助かりました。
展示替えがあるとは知らなかったので、
見たいと思っていた明兆の達磨を見逃すところでした。
千葉市美術館の「若冲とその時代展」にも
応挙の絵を観に行きたいなぁと思います。
投稿: 一日一人 | 2007.08.11 01:34
to 一日一人さん
コメント、TB有難うございます。猛暑になって
きましたね。水墨画の滝の絵を何点みても、暑い
ものは暑いですね。
明兆の達磨図はいい絵ですね。日本美術の展覧会
で国宝や重文が沢山でる場合、作品は短期間
しか展示されないことが多いですから、事前に出品
リストを確認するとか、早めに出かけて様子をみられる
ほうがリスクは少ないですね。後期は4,5、6期の
どこで再訪するか思案中です。
千葉市美にでている応挙は3点ともいいです。
お楽しみ下さい。
投稿: いづつや | 2007.08.11 23:12