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2007.08.30

東博浮世絵エンターテイメント! 師宣・歌麿

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現在、東博の浮世絵コーナーにある作品(30点)の展示期間は8/28から9/24まで。一度に展示できる数に比べここが所蔵する作品数は膨大だから、毎回はじめてみる作品のほうが圧倒的に多い。

が、ここに通いづめて3年くらいになると、なかには割と早いタイミングで再会する絵も出てくる。上の菱川師宣作、“見返り美人図”は確か一年前くらいに展示されたような気がする。見る側からすると、こういう初期の浮世絵を代表する名画が頻繁に鑑賞できるのはとても有難い。

師宣はどうして後ろを振り向く美人像を描いたのか?これは当時の女性たちの髪形や衣装のファッションと大きく関係している。浮世絵は当世の風俗や流行を写したものだから、絵師は女性の心理には敏感。男たちの目には振りかえるポーズでより強調される女性のしなやかな姿態が焼きつくが、若い女性たちが熱いまなざしをむけるのは最新ファッションの“吉弥結び”という帯の絞め方と髪型の“玉結び”。で、この二つを女性に見せるため、師宣は振りかえるポーズを思いついたのではないかといわれている。

もちろん、ハレ気分をそそる菊と桜模様がきれいな緋色の元禄小袖にも“わたしも着てみたいわ!”となるだろう。男や女の好みや時代の空気を読み取り、斬新な美人像でもってそれに応えるのだから、やはり師宣は並みの才能の絵師ではない。

今回の展示で楽しみにしていたのが、下の歌麿が描いた“高名美人六家撰・富本豊雛”。やっと会えた。こうして東博の平常展で歌麿の名画と月に一度のペースで遭遇するのだからたまらない。内容の乏しい企画展へ出かけるより数倍の満足感がある。

富本豊雛は“寛政三美人”のひとり。この大首絵では、豊雛の顔より襟をつまむ手に目がいく。おもしろいことに扇子のふちと角かくしの線が対応し、その間にある手がゆるやかな曲線をつくっている。白地の多い画面で、すがすがしい感じのする美人画である。画集でみると、同じシリーズの耳のうしろに手をやっている“辰巳路考”や赤い茶托を運ぶ手がかわいい“難波屋おきた”にも魅せられる。いつか見てみたい。

歌麿のいい絵がもう一点ある。“婦女人相学十品 文読美人”。これも代表作のひとつ。数回みたMOAのものより、こちらのほうが着物の柄が多く色の組み合わせもいい。歌麿の美人画をみた最初のころは“歌麿は女性の内面を表した”というのがなかなか感じとれなかった。鳥居清長の全身像の美人画と較べて、歌麿は大首絵という新機軸を打ち出したことはわかるが、顔の描き方はあまり変わらないのではという印象だった。

が、鑑賞する絵が増えるにつれ、顔の表情やしぐさ、ポーズにちゃんと内面の感情がでているのがすこしずつわかってきた。楊枝をくわえている女(拙ブログ07/2/8)もいれば、この“文読美人”のように巻紙の手紙を隠しながら読んでいるのもいる。この女は書いてある内容を他人に見られたくないのだろう。

風景画も見所いっぱい。神奈川県立歴史博物館に今出品されている広重の“甲陽猿橋之図”、“武陽金澤八勝夜景”がここにもあった。そして、お馴染みの北斎の“富嶽三十六景・武州千住&武州玉川”、広重の“東海道五十三次・三島&箱根”。また、久しぶりにみた歌川国芳の“讃岐院眷属をして為朝をすくふ図”にも釘付けになった。青の濃淡でつくる波面の立体感、大鰐鮫の鱗文様の描き分け、薄墨が効果的な烏天狗の動感表現がすばらしい。

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