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2007.08.28

小林かいちと絵葉書の世界

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日光東照宮の観光が終わったあと、すぐ近くにある小杉放菴記念日光美術館(日光橋の右隣)を訪問した。放菴の代表作“泉”など沢山の作品がみられると思い、入館したのだが、今は企画展のため作品は7点しかでてないという。当てがはずれたので帰ろうかと思ったが、せっかく日光まで来たのだから、これだけでも見ておこうと考えなおしチケットを購入した。

お目当ての“泉”は展示してあったので、一安心し、あとは企画展なるものをチラッとみて、隣の方との集合場所へ向かうつもりだった。ところが、この企画展、“小林かいちと絵葉書の世界”(7/21~9/2)に展示してあった小林かいちの絵葉書に200%KOされてしまった。日本にこんなすばらしいデザイン作品があったのかという感じである。まさに衝撃的な出会いだった。

これまで全く情報がなかった小林かいちは京都で活躍した謎のデザイナーらしい。わかっているのは関東大震災(1923)の前後から1940年代の後半までの20年間に絵葉書や絵封筒を500点以上制作したことくらい。作品の多くが人々の目に触れたのはボストン美術館の所蔵するコレクションが日本で初公開された“美しい日本の絵はがき展”(04年)だから、世間の脚光を浴びてまだ日が浅い。

今回は200点の作品と同時代の竹久夢二や加藤まさをらの大正ロマンの香りが漂う絵葉書がでている。小林かいちの作品の特徴はアールデコ調。上はビアズレーとかミュシャの絵を思い起こさせる“灰色のカーテン”。女は細い体で背の高さは9~10頭身くらいある。この4枚一組の絵葉書では女の目や鼻は描かれているが、大半は目鼻がない女。真ん中の絵封筒の絵柄のように、女は嘆きの表情をみせ、メランコリーな雰囲気に包まれている。

“灰色のカーテン”に出てくる植物の模様、黒地の背景にあるハート、そして女が手に持っている十字架はよく描かれるモティーフ。ほかには教会、蜘蛛の巣なども登場する。これらのモティーフで構成される小林かいちの木版画はアールデコのスタイルだが、単なるコピーではなく、シルエット、対象が画面から外にはみ出すトリミング、色彩のグラデーションなど浮世絵風景画の要素も取り込んだ斬新な日本的デザインという印象が強い。

そして、すごく圧倒されるのが卓越した色彩感覚。京都のアーティストの伝統かもしれないが、色の組み合わせが抜群。色数は多くなく、緑はあまり出てこず、赤や黒、うす紫の取り合わせたなどが強い印象を与えている。神坂雪佳、堂本印象、福田平八郎同様、小林かいちも天性のカラリストである。

日本人の感性を揺すぶるのが、制作の最後に手がけた“清水寺の桜”や“雪の保津川くだり”などが描かれた“京の四季”や下の絵封筒の“古都京都”。小林かいちに嵌ってしまった。これから作品を追っかけようと思う。

なお、この展覧会はここだけで、ほかには巡回しない。図録はないが、この展覧会に合わせて出版された“小林かいちの世界ーまぼろしの京都アールデコ”(山田俊幸他編、国書刊行会、07年5月)に出品作の多くが掲載されている。ご参考までに。

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コメント

こんにちは
この展覧会に行きたいのですが、関西からは遠くて(涙)。
小林かいちはボストンのローダーコレクションから色々現れ始めましたが、本当にそれ以前は弥生美術館などでちょっと出たりする程度でした。(今では神戸の絵葉書資料室などでいくつか見受けられますが)
アールヌーヴォーとアールデコのどちらの特性も見事に飲み込んで、独自の妖美な世界を作り出している…そこにときめきます。
トランプや十字架、時計をモチーフにしたシリーズ作品などが好きです。
国書刊行会の本は弥生で見まして、購入する基金をただいま集め中です(笑)。

投稿: 遊行七恵 | 2007.08.29 12:34

to 遊行七恵さん
小林かいちの名前は七恵さんのコメントのなか
に一度でてきたような気がしましたので、ああー
この絵のことかと思いました。流石、七恵さん、早く
から目をつけられていたのですね。

私にとっての大正ロマンはこれまでは夢二だった
のですが、これからは竹久夢二&小林かいちにしま
した。会場に展示されていた作品、はじめての小林
かいち本“小林かいちの世界”に掲載された作品を
みて嵌りまくってます。

デザインの斬新さ、現代的な色彩感覚、広重を思
い起こさせる画面構成、色彩のグラデーションに心
を奪われます。いい作家に出会い腹の底から喜ん
でいます。

投稿: いづつや | 2007.08.29 23:07

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