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2007.08.24

広重の六十余州名所図会

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“広重が描いた日本の風景展”の後期(8/23~9/17)をみるため、また神奈川歴史博物館を訪れた。前期(拙ブログ8/5)の作品は1点もなく、後期だけの作品が114点展示してある。そのなかのお目当てが“六十余州名所図会”。

揃物の69点が全部ある。過去、数点を見ただけなのでいつか全点みたいと願っていたが、ようやく思いの丈をとげることができた。これが描かれたのは広重の最晩年で、57~60歳のころ。このあと、広重は生まれ育った江戸の各地を題材にした“江戸名所百景”を刊行する。2つの揃物はともに切り取った風景を縦の画面に描いている。

作品を対照させてみると、まず、“六十余州名所図会”でワンラウンドこなし、そこでトライした構図のアイデアを“江戸名所百景”でさらに発展させたのだなというのがよくわかる。例えば、“江戸名所”でお馴染みの手前に対象を大きく描いたり、また画面の端で対象を大胆にトリミングする手法が“六十余州”にもいくつかみられる。

“紀伊 和歌之浦”で2羽の大きな鶴が空を舞う姿は“江戸名所”では、“箕輪金彩三河しま”に登場する異様に大きい鶴や“深川洲崎十万坪”の翼を広げた鷲のようにさらにパワーアップした構図へと変わっていく。ぎょっとするトリミングがみられるのは“安芸 厳島祭礼之図”の鳥居や“隠岐 焚火の社”の日本海の荒波を進む大きな廻船。

“六十余州”はこうした次の作品につながっていく絵柄もあるが、大半は“東海道五十三次”の流れを受け継ぐ名所絵。一部を除いて、実際に見た実景をベースにしてでなく、種本を参考にして描かれている。種本には色がついてないので、広重は色の組み合わせを考え、構図も自分の心象風景に合うように変えた。だが、実際の風景と大きくかけ離れた空想の絵とは違う。これは日本人の感性をゆすぶりすぎるくらいゆすぶるマジック的な風景画かもしれない。

とくに気に入ったのが上の“丹後 天の橋立”と下の“阿波 鳴門の風波”。ほとんどの名所は海や川、滝が描かれているが、この2点に大変魅了された。“天の橋立”はうす緑の地面に松が林立した洲が右下から緩く左にカーブする巧みな構図、洲をはさむように描かれた砂浜に打ち寄せる白波と帆船の美しさに見蕩れてしまう。

“阿波 鳴門の風波”に200%感動した。手前の渦潮はまるで怪物の目玉のように不気味に海面を動き回り、後ろの白い波頭は龍が怒り狂って大暴れしているみたい。これまでこんなすごい広重の風景画はみたことがない。北斎の“神奈川沖浪裏”同様、一生忘れられない絵になりそう。

嬉しいことに“六十余州名所図会”のほかにも、“本朝名所”、三枚続の大作“木曽路之山川”、“阿波鳴門之風景”(05/5/21)、“武陽金沢八勝夜景”、掛物絵“甲陽猿橋之図”といった広重の代表作が展示されている。600円の料金で広重の風景画を満喫させてもらった。感謝々である。

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