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2007.07.31

日展100年展 その二

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近代の日本画は官営の文展、日展(1949年から民営化)と岡倉天心の死を契機に横山大観らがつくった在野の団体、再興日本美術院が開催する院展の二つが軸になり展開してきた。

官営展覧会に対抗する院展というのが基本的な図式だが、100年という歴史の中では、文展系の画家が院展に誘われたり、別の団体をつくって脱退したり、また大観が文展に参加したりと色々紆余曲折する。だから、あの画家は院展系なのに文展にも出品していたの?!と奇異に感じることがあるかもしれない。

でも、これは作品を鑑賞する側からすれば、好都合。名の売れた画家のほとんどと会えるのだからたまらない。しかもその作品は展覧会で高い評価を受けたエポック的なものばかり。まさに一級の画才が生み出す名画の数々に酔いしれるという感じである。巨匠とよばれる画家で見られないのは速水御舟、川端龍子、横山操、奥村土牛、小倉遊亀、高山辰男、加山又造、平山郁夫くらい。

図録に載っている作品は一度見たものが多いが、それでも“ああー、これが国立新美に展示されないのは残念だな!”とため息のでるのがいくつかある。例えば、松岡映丘の“道成寺”、橋本関雪の“南国”、小野竹喬の“宿雪”(いずれも広島、富山)。

心をとらえて離さなかった絵をざっとあげると。上の村上華岳の“二月乃頃”、寺崎廣業の“高山清秋”、堂本印象の“訶梨帝母”、金島桂華の“蓮池”、横山大観の“皇大神宮図”、安田靫彦の“孫子勒姫兵”、下の中村岳陵の“残照”、池田遙邨の“稲掛け”。“二月乃頃”以外ははじめてお目にかかる作品。

寺崎、金島の絵にはこれまでさほど感激しなかったが今回は違った。秋田県立近代美術館は寺崎の地元だけあってすばらしい風景画を所蔵している。この絵が寺崎のベストワンかもしれない。見てのお楽しみ!金島は広島県の出身だから県立美でよくみたが、この“蓮池”にはびっくり仰天した。こんなに美しい蓮の絵を描いていたとは!

上の“二月乃頃”は大変気に入っている作品。田園風景をこういう俯瞰の構図で描いたのは村上華岳と川合玉堂。日本の農家における原風景をみるようである。中景の林をはさんで向こうがわに家、そして深い緑の木々が林立する山が画面上いっぱいに描かれている。

今回のお目当ては前から追っかけていた中村岳陵の“残照”(静岡県美)。期待通りのいい絵。この絵の前に立ったとき、瞬時に加山又造の“冬”(東近美)の画風を思い浮かべた。夕日で真っ赤に染まった空に精緻に描写された木の細い枝が加山の描く枝とよく似ているのである。

何といっても心をうつのが空の赤と黒い木の美しいコントラスト。ただの赤と黒の響きあいではなく、下のほうは黒でぼかし、空の上半分には金泥で雲を5つ描くといった巧みな色面構成。そして、黒の濃い大きな木の枝が画面からはみだすトリミング技法で表現されているため、じっと見ていると風景がデザイン的な模様にもみえてくる。念願の絵を静岡に行かずに見れたのは大変幸運であった。

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