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2007.07.07

美の壺 五重塔と音楽

917NHK教育で金曜夜10時に放映される“美の壺”はお気に入りの美術番組。

とぼけたキャラクターが持ち味の谷啓と女性ナレーターのおもしろい掛け合いで、美術品を見る壺を25分でまとめてくれるので大変勉強になる。

で、毎月購入する“TV太郎”で何が取り上げられるかをチェックし、関心のあるものがでてくるときは必ずみることにしている。

昨日は“五重塔”だった。2ヶ月前、京都で醍醐寺の五重塔(拙ブログ5/19)を見たばかりなので、目と耳に力をいれてみた。面白い見方だなとすごく興味深かったのは五重塔の姿を音楽になぞらえていたこと。全国の五重塔を研究している専門家が登場し、“逓減率”というデータをつかって塔の特徴を分類していた。

逓減率というのは初層に対する五層の幅の割合のことで、例えば、初層が1に対し五層が0.5だったら、逓減率は0.5。これは安定感のある形。0.7だとすらっと背が高くみえる感じ。具体的な例をあげると、法隆寺の五重塔は0.5、山口市にある瑠璃光寺は0.68、そして醍醐寺は0.61となっているそうだ。法隆寺がずっしり安定型、瑠璃光寺のは細みの長身型、醍醐寺は安定感があり、そして高くも見える理想型。

それで、このように特徴づけられる塔のプロポーションがどんな音楽のリズムを想起するのか?ここからは番組制作者の創作。“法隆寺は重厚なベースのリズムが合う、瑠璃光寺のイメージはバイオリンの独奏による上品なリズム、醍醐寺はバランスがよく堂々としているので、色々な音が響きあう交響曲のハーモニーを想わせる”とナレーションし、バックにベース、バイオリン、管弦楽団の演奏を流していた。使われている交響曲はベートーベンの7番の一番盛り上がるところ。“ううーん、醍醐寺の五重塔とベートーベンの7番か。こんなコラボがあったのか!”と思わず唸ってしまった。

これにはちゃんと種本がある。全く知らなかったのだが、作家の井上靖(1907~
1991)は著書“塔”で“すべての日本の塔が多かれ少なかれ<凍れる音楽>にほかならない”と述べているのだという。早速本屋に行ってみようと思う。

右は番組でその優雅な姿からバイオリンの独奏が聴こえてくると言わしめた“瑠璃光寺五重塔”(国宝、室町中期、1442年の創建)。はじめて見たときは大変感動した。ここを訪れる観光客は誰もが手前の池側から記念写真を撮る。これほどいい撮影ポイントはない。番組には羽黒山五重塔(05/11/10)や東寺の54.8mと一番高い五重塔も取り上げられたから、“THE五重塔”のてんこ盛り。

木造建築の技を結集してつくられた五重塔。その美しさにしみじみ感じ入る。まさに日本の宝である。

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コメント

番組は見られませんでしたが、この記事を読めただけで大変有益でした。

塔を音楽に喩える、更に井上靖の記事を読んだのか知りませんが、この番組の制作者の目の付け所が素晴らしいと思います。

投稿: meme | 2007.07.08 19:05

to memeさん
井上靖のように美に対する感覚がスーパーな人は
五重塔をみて、音楽が聴こえてくるのですね!
醍醐寺の映像を見ながら、大好きなベートーベン
の7番を聴くなんてすごく幸せな気分です。

この番組のスタッフはいいテーマを思いつくもので
すね。参りました!

投稿: いづつや | 2007.07.08 22:22

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