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2007.06.16

森美術館のル・コルビュジエ展

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日本の古い寺や五重の塔、近代の歴史的な建物、さらに最先端のビルディングなど建築物をみるのは好きだけれど、最近よくある建築家の展覧会には関心がない。理由ははっきりしていて、建築家や建築関係の仕事に携わっている人とか、建築物でなくても物を設計している技術者には興味を惹くかもしれない縮小模型、図面、写真、映像をみても面白くないから。

だから、普通なら、現在、森美術館で開催されている“ル・コルビュジエ展”(9/24まで)もパスするところなのだが、チラシのなかで強い磁力を放っていたキュビスム風というかシュルレアリスムのような絵と彫刻に惹かれて、入館した。美術史の本に必ずでてくる近代建築の巨人、ル・コルビュジエ(1887~1965)は頭のなかに入っているが、コルビュジエが絵を描いたり、彫刻をつくっていたことは作品の前に立つまで全く知らなかった。

生涯に450点あまりを制作したという油彩画は今回30点くらいでている。初期の作品はピカソやブラックのキュビスムに似ている。複雑な構成になっているキュビスムとの違いは、こちらは上から見下ろすのと側面からまっすぐに見る二つの視線から捉えられた対象が、幾何学的なフォルムで画面の中に整然と構成されているところ。この“ピュリスム(純粋主義)”を最も感じさせてくれるのが“赤いバイオリンのある静物”(1920)。

最初はこうした淡い色合いで平面的な絵だったが、1928年以降はピュリスムから離れ、不透明で強い色に変わり、フォルムもレジェのように輪郭を細い線と太い線のまじった曲線でとるようになる。また、シュルレアリスムの香りも漂う。インパクトのある丸い線で描かれた女性の裸体や画面の上と下に走る男と豹が登場する“ダンサーと小さな豹”(1932)はミロの絵を彷彿とさせる面白い絵。

絵画で最も魅せられたのがこの絵の2,3年後に制作された二つの絵、上の“水浴婦と舟”と“二人の女とロープと犬”。ともに大きな絵である。“水浴婦と舟”では、左の茶色で量感たっぷり描かれているのが女性。この人体表現ではイメージしずらいが、豊満な女ぽくみえる。モデルはコルビュジエの愛妻イヴォンヌ。

会場の最後のところで目を奪われたのが、赤と黒を基調にした明快な色使いが印象深い大きなタピストリー3点。いずれも森美術館の所蔵。室内空間を生き生きとさせるタピストリーをコルビュジエは“移動する壁画”とみなし、27点制作した。最も大きいものは弟子の坂倉準三による“東急文化会館”内の映画館“パンテオン”のためにつくられた緞帳だそうだが、会館の取り壊しで、現在は倉庫に保管されているらしい。一度みてみたいものである。

コルビュジエのつくる彫刻は“トーテム”、“イコン”、“手”といった絵画に描かれたモティーフが画面からそのままでてきたような感じ。下は1963年に制作された“イコン”。絵画の延長ということで正面性があり、彩色がなされている。ここにある“トーテム”や“手”をみてるとハンス・アルプの彫刻の造形がちらっと目の前をよぎった。

本題の建築物については、有名な“ロンシャンの礼拝堂”、“ラ・トゥーレットの修道院”や06年に完成した“サン・ピエール教会”の前にいつか立てることを夢見ている。

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