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2007.06.20

山種コレクション名品選 その二

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山種コレクション名品選 後期(6/6~7/16)には前期(拙ブログ5/9)同様、珠玉の日本画が飾ってある。まず、はじめて対面する作品から。俵屋宗達&本阿弥光悦の“四季草花下絵和歌短冊帖”は予想と違う細長い小さな短冊だった。装飾的に美しいデザインは“垂柳”、“浜松”、“千羽鶴”。鳥や草花に使われた銀泥部分は現在は色が変わっているが、出来た当時は金泥の地と見事なコントラストをなしていただろう。

息を呑んで見たのが鈴木其一の屏風“四季花鳥図”。右と左に何種類もの花の塊をつくり、見る者が花をじっくり見れるようにしている。右で目を奪われるのが大きく咲いた向日葵。菖蒲や朝顔の青は酒井抱一が描くような輝きはないが、鶏に後ろにある立葵の赤は鮮やか。親鳥とまわりのひよこの視線の先には桔梗、水仙、菊に囲まれて鴛鴦がいる。これは日本にある其一の屏風では、“夏秋山水図”(根津美術館)の次にくるいい屏風。大収穫だった。

近代日本画は名画揃いだから、作品の前に立つ時間の長さに差はない。一つ々の作品に見入ってしまう感じである。日本画愛好家にとって、山種美術館は速水御舟と奥村土牛の名画を多く所蔵している美術館というイメージが定着しているので、今回の展示も御舟の作品が一番多い。現在の目玉は上の“炎舞”(重文)。この絵だけ上から光を当てて演出している。こんな風に見たのははじめて。

何度みても心を奪われるすごい絵である。この絵の1年後に描かれた“昆虫二題”
04/11/30)に登場する蛾が博物図鑑からとびでてきたような色鮮やかな蛾であるのに対し、炎のなかを舞う蛾は燃え盛る炎のかすでその鮮やかなうす緑や白、黄色の羽が神秘的なベールにつつまれたようになり、じっとみていると妖しい幽玄の世界に惹き込まれそうになる。

下の絵は奥村土牛の代表作、“鳴門”。一度鳴門の渦潮を見に行ったことがあるが、現地に着いたタイミングが悪く、この絵に描かれたような大きな渦潮をみることができなかった。実際の渦潮はもっと荒々しく、ダイナミックなはずだが、画面の中の渦潮は極めて静か。土牛は渦潮という自然の奥にあるものを形を簡略化し、象徴的に描いた。白波がたつ渦潮の中心部はなにか生き物がうごめき、下から大きな力で吸い込んでいる感じ。上の方の島影には金泥が使われ、焼き緑青を塗り重ねた海面は部分的に油絵の具のように厚く盛り上がっている。前期は“醍醐”で後期は“鳴門”とくれば気分が悪かろうはずがない。

御舟、土牛のほかにも上村松篁の“竹雪”(06/1/8)、東山魁夷の“緑閏う”、福田平八郎の“筍”、小林古径の“清姫”、加山又造の“波濤”などお気に入りの名画がある。出来ることなら一日中会場の椅子に座っていたくなる究極の日本画展覧会だった。

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コメント

いづつやさん、こんばんは
「炎舞」はそんな照明演出がされていたんですね!?
そう言われてみれば、炎の赤がよりくっきりと
浮かび上がっていたような気がします。

今さらながら、前期も行くべきでしたが、前田青邨が1点しかなかったのは残念な気がします。

投稿: アイレ | 2007.06.28 02:13

to アイレさん
炎舞が飾ってあった部屋はどの作品にも光を当て
てましたね。記念展だからの演出でしょうが、
通常時にもこんな見せ方があるとぐっと作品に
のめりこめるのですが。

前期がみられなかったのは残念でしたね。ここは
館自体は大きくありませんが、所蔵品の質は超一級
ですから、近代日本画の殿堂と言っていいですね。
3年くらい通うと名画はだいたいみれるのではない
でしょうか。

投稿: いづつや | 2007.06.28 11:23

四季草花下絵和歌短冊帖,
描かれた当時のものをぜひ見たかったなぁと実感しました。

投稿: 一村雨 | 2007.07.16 10:45

to 一村雨さん
四季草花の全点、鈴木其一のびっくりするような屏風
も見れましたから、言うことありません。

畠山記念館とここの琳派作品を目におさめましたので、
琳派はひとまず済みです。ここまでくるのに何年も
かかりましたが、今はすごく充実した気分です。

これからはワシントンにあるフリーア美術館が所蔵
する宗達の“松島図屏風”(日本にあったら完璧に
国宝)に会えるのをひたすら念じて琳派の道を進み
ます。

投稿: いづつや | 2007.07.16 15:04

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