ヴィクトリア&アルバート美蔵 浮世絵名品展の北斎
ヴィクトリア&アルバート美所蔵の浮世絵名品展後期(6/1~26)は太田記念館には悪いが、それほど期待値は高くなく、前期(拙ブログ5/6)のとき購入した図録に載っていた2,3の作品を軽く見て、さっと引き上げるつもりでいた。
が、実際に作品の前に立ってみると、グッと惹きつけられるのが数点あったので、この展覧会に対する評価を上げざるを得なくなった。
“おおー!”と思わず声が出たのが2階に展示してあった右の北斎作、“絵本隅田川 両岸一覧”。これは3つの場面のうち、雨が降るなか、人々が傘をさし急ぎ足で橋を渡るところ。橋、家、傘、川に浮かぶ舟に彩色されている黄色が目に心地よく、女性が身につけている着物の赤、緑、紫が驚くほど鮮やか。
北斎のこうい江戸の景色と風俗を一緒に描いた狂歌絵本を05年の北斎展(東博)でいくつかみたが、魅力度ではこれが頭抜けていい。浮世絵を見る楽しみはなんといっても鮮やかな色彩。絵本だから、画面は真ん中で切れているが、これだけ色彩、構図がいいと一枚絵をみているのと同じ満足感が得られる。北斎のこんなすばらしい絵と遭遇したのは大きな収穫。
歌麿の美人画が4点あったが、こちらは前期同様、心を揺すぶられるほどではなかった。今回は歌麿よりはクセのある女を描いた渓斎英泉の“当世好物八契(歌留多)”が二重丸。また、英泉の風景画2点、“木曾海道六捨九次之内 板鼻”と“日光山名所之内 寂光布引瀧”にも魅了される。
北斎の“絵本隅田川”とともに注目していた歌川国貞の“二見浦曙の図”がそれほどでもない。地平線からのびる太陽の光が画面を硬くしている。役者絵でインパクトのあるのが勝川春章の“二代目市川八百蔵と二代目坂田半五郎”と歌川豊春の“景清牢破り”。
海外のブランド美術館がもっている浮世絵で有難いのは日本で見たことのない絵と出会うこと。ギメ美展のようなサプライズがあまりなかった前期と比べ、後期には北斎の絵のほか、国芳が描くような武者絵を連想する広重の“浅草奥山 貝細工(がま仙人、鷲ほか)”、鈴木其一が描いた色彩センス抜群の団扇絵、“団扇売り”など初見の作品をみることができた。
専門家や通好みの浮世絵が多かったような気もするが、出品作はヴィクトリア&アルバート美のお宝浮世絵である。もっと数をこなした先で、今回見た絵が貴重な鑑賞体験であったと思うようになるかもしれない。
入館してまもなく、いつもお世話になっているとらさんとばったり会い、短い時間ではあったが、最近の美術館めぐりの話しや情報交換をした。波長の合う方と好きな絵のことをしゃべるのはとても楽しい。次回会うのはどこの美術館だろうか?
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コメント
今回の太田美術館。崋山のほおずき見入りました。まるで伏見人形のような愛らしさとほっとする色合いでした。
また↑の北斎は、突然の風雨に慌てる人々が細かく描かれていましたね。
夕立なら英一蝶の雨宿り図(東博7室)。のんきで大らかな人々の様子もいいですよ。なかでも、じっとしていないやんちゃな子供たちがたまりません。
投稿: おばば | 2007.06.20 13:19
to おばばさん
はじめまして。書き込み有難うございます。
渡辺崋山の“ほおずき”はもって帰りたいような
いいデザインの団扇でしたね。
谷文晁や酒井抱一、鈴木其一といった浮世絵師
でない絵描きの団扇絵など、日本の美術館では
なかなかみれませんから、ちょっと通になった
気分ですね。
昨日、東博でご案内の英一蝶の“雨宿り図屏風”
をみたばかりです。今回は六曲一双全部みせないで、
武家屋敷の門前で皆が雨宿りしている2扇だけで
した。ですから、一瞬別ヴァージョンかなと思って
しまいました。
子供はこういうときはいつもじっとしてませんね。
今も昔も変わりありませんね。絵の前で、外人の
男性が写真を撮ってました。これからもよろしく
お願いします。
投稿: いづつや | 2007.06.20 17:15