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2007.06.28

祝 石見銀山 世界遺産に登録決定!

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島根県の大田市(おおだ)にある“石見銀山遺跡”が世界遺産に登録されることが決まった。拍手々!日本では北海道の知床についで14件目の登録である。98年にこの遺跡を訪れたときにもう、“石見銀山を世界遺産に!”というバナーが道路沿いなどにあったから、かれこれ10年越しの悲願が実ったというわけである。地元の人たちはさぞかし嬉しいことだろう。

現地では銀山柵内の坑道内部(上の写真)や資料館などをみてまわった。石見銀山が本格的に採掘されるのは1526年から。当時この地を支配していた周防(現在山口県)の大内義興(よしおき)は明との勘合貿易により銀の国際的価値を知り、博多の貿易商、神屋寿禎(かみやじゅてい)に開発を命じた。この3年前の1523年、大内&博多商人連合は日明貿易の利権をめぐって、中国の寧波で細川&堺商人の船を焼き払ったり、明の官憲まで拉致・殺害するという国際的不祥事を起こしている。世に言う“寧波の乱”である。

これで後発の細川&堺商人との長い抗争に決着をつけた大内氏は遺明船派遣の権利を独占し、黄金時代を謳歌する。石見における銀の生産が飛躍的に増えたのは1533年、神屋が朝鮮の技術者を招聘し、当時の画期的な精錬法である“灰吹法”(はいぶきほう)を導入したから。灰吹法はごく簡単に説明すると。まず、鉱石と鉛を1200℃で溶かすと、鉛が銀を吸着する。これを貴鉛という。次に動物の骨灰の入った鉄鍋に貴鉛を置き、ふいごで火力をあげると(800℃)、溶けた貴鉛は灰に吸収され、銀のみが残る(真ん中の写真)。

この灰吹法により、銀の産出は爆発的に増大し、日本の銀産は世界の三分の一を占めるようになった。石見の銀はどこへ行ったのか。それは経済規模が拡大し、銅銭から銀貨に切り替えた中国。中国には銀産が少ないため、日本の石見銀山や南米のポトシ銀山(現・ボリビア、1545年スペイン人が発見)などから銀が流れ込んだ。17世紀前半のデータによると、日本全体の銀産高は年間で150~190トンあったとされ、そのうち質のいい石見の銀は約五分の一を占めていた。下は資料館にあった江戸時代の石州判銀。

日本から中国やヨーロッパに大量の銀が流れた背景には、日本、中国、ポルトガルの商人が結びついた“密貿易ネットワーク”があったことも忘れてはならない。日本もそのころ、経済発展をとげ貿易規模が拡大していたため、公的なルートである勘合貿易では間に合わず、民間の貿易が増えた。だが、こちらのルートはお上側からみれば“海賊”もふくまれている。

中国では16世紀に密貿易集団が現れ(後期倭寇)、東シナ海を中心に活発に活動しはじめる。やがて、明朝から正式な貿易を拒否されたポルトガル商人も加わった。そうした密貿易グループが目をつけたのが日本の銀。中国商品との交換に使われた日本の銀は公権力の外にあった日・中・ポの民間密貿易ルートで中国に流入したのである。

世界遺産となると石見銀山を訪問する観光客も増え、町起こし活動にはずみがつくだろう。またいつか訪ねてみたい。

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コメント

まことに勉強になり申した

投稿: 元就公 | 2007.06.29 01:47

to 元就公さん
はじめまして。書き込み有難うございます。ここを
訪れたころは世界遺産は難しいのではと思ってま
したが、晴れて世界的な産業遺産として認められ
たことを心から喜んでいます。
これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2007.06.29 10:09

世界遺産というと、ル・コルビュジエの作品がたくさん世界遺産に2008に申請されると展覧会会場にありましたね。
コルビュジエブームがおこるかしら?
どうでもいいですが森美術館も過去の展覧会のカタログ閲覧するコーナーをそろえたりと美術館としての体裁を整えてきましたね。

投稿: oki | 2007.06.30 00:52

to okiさん
ル・コルビュジエの建築物を実際みてないので、
世界遺産への登録といってもピントきません。
ロンシャンの礼拝堂の前に立ってみたいとは思い
ますが、実現の可能性は低いですね。

今回、森美術館はいい演出をしてますね。
もう一回行くかもしれません。

投稿: いづつや | 2007.06.30 15:09

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