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2007.05.16

若冲展 その二

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この展覧会にやってくる人たちのお目当てはもちろん“動植綵絵”30幅と“釈迦三尊像”。そのメインディッシュを堪能する前の前菜がこれまたすごい。第一会場に飾られた掛け軸や鹿苑寺大書院の障壁画は全部で27点。第二会場の33幅は既に鑑賞済みだから、作品への期待値としてはまだみたことのないこちらの方が高い。とくに大書院障壁画(重文)は水墨画の傑作といわれるものだけに目に力を入れてみた。今回全50面が一挙にみられる。

上は壁、床、違棚に描かれた“葡萄小菌図”。垂れ下がる葡萄の房やところどころ穴があいた葉の感じがうまく捉えられている。また、細い枝が変則的に折れ曲がったり、蔦の先がらせん状になる様子が実にリアル。感心するのが余白をたっぷりとり、葡萄を画面の中央からずらして配置する空間構成。小さい花弁がリズミカルに画面全体に埋め尽くされる“動植綵絵”の花の絵がミニマルアート風なのに対し、この書院の葡萄の絵はこれぞ日本の花鳥画といった感じである。

この絵と向かい合っているのが“月夜芭蕉図”。左半分に寄せて大振りな芭蕉をどんと描き、真ん中、月の姿を芭蕉の葉で隠す構図におもわず見入ってしまう。襖絵の画題は“葡萄小菌図”、“松鶴図”、“芭蕉叭々鳥図”、“菊鶴図”、“双鶏図”、“秋海棠図”、“竹図”。このなかで印象深いのが真ん中の“竹図”とアクロバティックな格好をして飛ぶ叭々鳥、そして、“捨得と鶏図”(拙ブログ06/8/20)と同じ前向きのポーズをとる鶏。

“竹図”のかなりデフォルメされた幹と葉に目が点になる。幹は椎茸でもつけたかのような節ごとに左右にゆるく曲がりながら上にのび、葉は墨で濃淡をつけた三角形の点描で表す。若冲はこんなユニークな竹をオーソドックスな葡萄や芭蕉などと一緒に配置するのである。この時代、これほど鋭い感性と豊かな想像力をもった絵師は若冲のほかには誰もいない。

下の“昇鯉図”にも魅せられる。胴体の半分が画面からはみ出すところがいい。この絵をみると若冲は広重に負けず劣らずのトリミングの名手。大感激の一枚である。“龍図”や“亀図”も同じタイプの絵。ユーモラスな絵が一点ある。それは“布袋渡河図”。布袋の顔がみえないので最初、これは何の絵?状態が続く。そのうち、布袋のお尻がイメージでき、墨の点々が腹や足の毛だとわかってくる。鶏を真正面から描いたり、布袋を後ろ向きにさせたり、若冲は色々な描き方で見る者を楽しませてくれる。

普段はみれない鹿苑寺の障壁画や初見の水墨画を沢山みれたのは大収穫。やはり京都は若冲が生まれた町、名品がごまんとある。さて、次の楽しみは東芸大美で7/7~9/9に展示される金刀比羅宮の“花卉図”(1/7)。今から、開幕が待ち遠しい。

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コメント

こんばんは。
こちらは初見の作品が多く
第二会場よりも時間をかけ拝見しました。

いづつやさんの満足度もかなり高かったのではないでしょうか。

投稿: Tak | 2007.05.19 22:56

to Takさん
今回の狙いは第一会場の27点でした。会場に着く前、
もし最初に33幅が展示してあったら、そこは後みる
ことにして、まずは鹿苑寺の障壁画に進もうと思っ
てました。

でもお目当てが最初にでてきましたから、嬉しくなり、
ここを3回まわりました。葡萄小禽図、ぎょっとする
竹図、上の大きな鯉の絵が大収穫でした。京都には
やはりいい絵が沢山ありますね。

投稿: いづつや | 2007.05.20 00:25

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京都、相国寺 承天閣美術館で開催中の 開基足利義満600年忌記念「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」 (公式サイト) 順序は逆ですが、第二展示室に続いて第一展示室についてご紹介。 伊藤若冲が相国寺に寄進した「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅が、 120年ぶりの劇的な再会を果たしていることで各メディアでも話題沸騰。 社会情勢や御家の事情で泣く泣く手放さざるを得なかった「動植綵絵」 その見返りに宮内省から当時一万円の下附金(現在の数百億円!)を賜り その... [続きを読む]

受信: 2007.05.19 22:54

» 【若冲展 - 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会 - 】 [Sweet Dadaism]
    われわれがもうほとんど希望を失ってしまったときにかぎって、   われわれにとって良いことが準備されるのだよ。  (ゲーテ)    --- 子供の頃からの、叶わないはずの夢があった。    それが叶ってしまうと知ったとき、わたしは少しだけ、慌てた。  静岡県立美術館は、伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風」を所蔵している。私が初めて実物を見た「若冲」は、これだった。まるで色タイルをひとつひとつ嵌めこんだような図像は、豪華な銭湯の壁を飾るに相応しいように見えた(銭湯自体、その頃は行ったこともなかった... [続きを読む]

受信: 2007.05.29 18:25

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