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2007.05.03

千葉市美術館の鳥居清長展

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千葉市美術館で4/28から空前絶後の大鳥居清長展ー江戸のヴィーナス誕生がはじまった。会期は6/10までで、前期(4/28~5/20)、後期(5/22~6/10)で作品を一部展示替えする。作品数は267点。

全期間でずっぱりの作品が相当数あり、前期だけで210点が楽しめるから、後期はいいやという方が多いかもしれない(後期だけの展示は58点)。210点みるだけでも、かなりの体力がいる。で、作戦としては初期の作品はすこし軽くみて、清長美人がドドーとでてくる後半の展示に体力を温存したほうがいいかもしれない。

とにかく、“うわー、すごい!”と声を失うくらい感激する作品が会場をでるまでとぎれることなく続く。もうα波がフルスロットルで出ている感じで、嬉しさを通りこして、放心状態だった。東博が所蔵するいい絵が目いっぱいでていたが、シカゴ、ボストン、メトロポリタン、ホノルルといった浮世絵コレクションでは定評のある有名美術館からやってきた清長はこれを上回る超一級品。

清長に限らないが、歌麿にせよ北斎にせよ海外のブランド美術館が持っている名品によって、浮世絵に対する目が養われていくような気がする。千葉市美術館は95年の開館記念展の歌麿展、02年の大鈴木春信展、そして今回の清長展と3回も浮世絵愛好家を喜ばせてくれた。小林忠館長の奮闘に頭が下がる思いである。

鳥居清長(1752~1815)が描く美人画は天明年間(1781~89)に全盛期を迎える。今回、代表作の“当世遊里美人合”、“風俗東之錦”、“美南見十二候”がずらっとある。均整がとれた姿態とまっすぐな鼻筋をしたすずしげな顔立ちをした長身の女性はギリシャ古典美術にでてくるヴィーナスのような美しさをたたえている。

当時の女性は背がこれほど高くないのに八頭身美人に描いたのは、長崎に入ってきた異国の文物や西洋画の影響といわれている。この頃、江戸は田沼意次の開国政策によって世界に開かれていて、地中海産べっ甲のかんざしやヴェネツィアでつくられたガラスの鏡があったり、絵画では遠近法や人体図なども知られるようになっていた。浮世絵師は時代の流行や好みにポジティブな感覚をもっていたので、庶民の異国趣味に敏感に反応して八頭身美人をつくりあげたのだろう。

清長の最高傑作である“美南見十二候”で最も魅せられたのが上の“三月 御殿山の花見”(シカゴ美)。見事な美人群像画である。着物の文様の精緻な描写と鮮やかに発色した色合いにもうメロメロ。画面中央の背景には小舟を二そう描き、桜の幹を右手前と左奥に対置させ奥行きをつくる構成のなか、健康的で生き生きとした美人が思い々に今が盛りの桜を楽しんでいる。

八頭身美人とともに2枚、3枚続のワイド画面が清長の絵の特徴。美人群像の背景に遠近法を消化した風景を描き込んだこの大画面の名品が沢山ある。これは圧巻。心をとらえて離さないのが大きな屋形舟が目にとびこんでくる“隅田川船遊び”(メトロポリタン)、“大川端の夕涼”、“亀戸の藤見”、“洗濯と張り物”(以上シカゴ)、右の“吾妻橋下の涼船”(ホノルル)、“飛鳥山の花見”(東博)。

“吾妻橋下の涼船”に登場する男女は多彩なポーズで描かれ、船になかで横になっている芸者もいれば、立姿で着物のすそが風になびいている女もいる。画面に安定感を与える橋の大きな柱組の向こうに見えるうす緑の土手や揺れる水面の描写も巧みで、風景画としても充分楽しめる。

美人画のほかに“金太郎”などのすばらしい子ども絵がいくつもある。これも大収穫だった。後期の出品作がいまから待ち遠しい。

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コメント

これは大した展覧会でしたね。
女湯には驚きました。

投稿: とら | 2007.05.08 08:52

to とらさん
予想以上の大回顧展ですね。小林忠館長は辻氏と
ともに日本美術関連の展覧会には大変尽力されて
ます。有難いことです。

“女湯”は画集でみたことはありますが、本物
に会えるとは思ってもいませんでした。

投稿: いづつや | 2007.05.08 13:32

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受信: 2007.05.08 08:54

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受信: 2007.05.23 23:25

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