横浜美術館の水の情景展


横浜美術館では現在、“水の情景展”が開催されている(7/1まで)。われわれのまわりに“水の情景”は色々ある。食事のとき水を飲むとか、雨のなかを傘をさして歩いたり、観光旅行で壮観な滝や美しい海の景色を眺めたりするとか。。。この展覧会には水をテーマにして創作された絵画、写真、映像などが100点展示されている。
こういうテーマ型の展覧会はタイプの異なる作品を一つにまとめる横串しを考えるのが一番難しい。今回設定されたキーワードは“たゆたう”、“動く”、“満ちる”、“水と人”の4つ。見る側は過去見たことのある絵画がこういうくくり方をされると新鮮な気持ちでまた対面し、あらためて感じ入ったという人もいれば、どうしてこの絵がここにあるの?としっくりいかない人もいる。
絵を“理解しよう”として見ている人は大体なにかしら注文をつける。元来、作品中心主義で絵は“感じる”ために鑑賞しているので、テーマとのあてはまり度とかは気にしない。“モネ、大観から現代まで”のサブタイトルに惹かれてやってきたから、お目当ての作品と対面できればそれで満足。では、チラシに使われているアサヒビール・大山崎山荘所蔵のモネの睡蓮はどうか?率直に言って、魅力度は国立新美術館にでている睡蓮(拙ブログ05/10/26)の半分。この絵は既に見ているので、はじめから期待していない。モネ好きで“大回顧展”をみた人はこちらをはしごしないほうがいい。
見ごたえのある西洋画は“動く”のところに展示してあるクールベの作品。全部で5点ある。これまで見たことがあるのは大原の“秋の海”と山梨県美の“嵐の海”。ほかの3点ははじめてみた。上の“波”は一瞬、国立西洋美のものかと思ったが、これは村内美術館蔵だった。クールベは1860年代、英仏海峡に面した海岸の風景を沢山描いており、“波”は60点あるという。クールベの波の絵は前々から好きな絵であるが、村内美の“波”のとりわけ力強い描写が心を打つ。
空はうす暗く、荒れ模様の海面はうねり、白い波頭をみせる大きな波が岸にどどーっと押し寄せる様はダイナミックで、実景そのもの。形のさだまらない波を描くのは腕のいい画家でも苦労するのに、クールベは人間にはどうすることもできない自然の大きな力を見事に表現している。リアリスム絵画の真骨頂である波の絵や“エトルタ海岸、夕日”と遭遇できたのは大きな喜び。
“満ちる”にでてくるシニャックの2点もなかなかいい。下はその一枚で装飾的な香りがする“ヴェネツィア”(アサヒビール)。これを大山崎山荘でみたとき、国内にあるシニャックの作品では西洋美にある大きな絵“サン=トロペの港”と並ぶ名作でないかと思った。うす青緑のモザイク風の小片で海と空を表し、手前右とその斜め上のヨットで奥行きをつくり、真ん中に赤の鐘楼と教会を描く構図が目にやすらぎを与えてくれる。
日本画のお気に入りは“たゆたう”に飾ってある福田平八郎の“鮎”(大分県美)と徳岡神泉の“刈田”(東近美)、“池”(京近美)。また、はじめてみた横山大観の滝の絵“雲揺ぐ”や今村紫紅の“細雨”(ともに横浜美)にも魅了された。“水”は日本人にはすっと入っていけるテーマかもしれない。心穏やかになれるいい展覧会だった。
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コメント
水の情景展は予想以上に良かったです。
いづつや様の感想を拝見して、印象に残る作品は
人それぞれだなという思いを新たにしました。
クールベの作品は私も記憶に残っています。
数点ある中で、一番のお気に入りを決めて楽しんで
いました。
事後承諾となりますが、TBさせていただきます。
投稿: meme | 2007.05.25 21:42
to memeさん
同感です。こういうテーマでどんな絵をもってく
るのかな?という感じでしたが、洋画も国内の
いい絵を集めてましたので好感がもてました。
クールベの波の絵は国内にも何点もあるのですね。
これらが見られたのは大収穫でした。
投稿: いづつや | 2007.05.25 23:08
こんばんは
集めた作品はとてもよかったのですが、並べ方を変えたほうがもっとよかったように思います。
折角いいものが多かったのに惜しいような気もしました。
常設展がたいへん良くて、廻りきったときには充足感と疲労が・・・
大きいところですね、つくづく思いました。
投稿: 遊行七恵 | 2007.06.22 22:21
to 遊行七恵さん
見たい作品だけをオン、興味のないのはオフ
にして回りましたから、クールベとか、徳岡神泉
の絵が印象深く残ってます。展覧会の並べ方は
本当にセンスが要求されますね。
平常展は充実してましたね。とくに清方らの作品
がたくさんでていたので大満足でした。
投稿: いづつや | 2007.06.23 10:24