« 世田谷時代1946ー1954の岡本太郎展 | トップページ | 若冲展 その二 »

2007.05.15

相国寺承天閣美術館の若冲展 その一

398
399
相国寺承天閣美術館ではじまった“若冲展”(5/13~6/3)をみてきた。13日に京都に入ったが、その日はお目当てのほかの展覧会をみて、“若冲展”は月曜日に観る作戦をとった。だが、平日でも朝からどんどん大勢の人が押し寄せてくる。とくに女性が多く、若年層から中年はもとより、年配の方も結構いる。予想を上回る若冲人気である。

無理もない。120年ぶりに若冲が描いた“釈迦三尊像”と彩色画の最高傑作といわれる“動植綵絵”(30幅、三の丸尚蔵館)が一緒に飾られるのである。一生に一度観られるかどうかという大イベントだから、誰だって見逃したくない。会期は22日と限られている。昨年3月から9月まで三の丸尚蔵館で公開された“動植綵絵”を今年は関西もしくは西日本の若冲ファンが目いっぱい楽しむ番。しかも、若冲が生きていた時代と同じ“釈迦三尊像”&“動植綵絵”という一番いい形で。もちろん、このエポック的な展覧会を熱い思いで待っていた人も全国から集まってくるだろう。

相国寺は昨年来たことがあるから寺の配置はわかっているが、美術館は工事中だったから今回はじめて入館する。会場は二つあって、お目当ての33幅が飾ってあるのは第二会場。第一会場から第二会場への導線は一方通行で、第一会場に展示してある作品を後からまた戻ってみることは出来ないので、水墨画を中心とした27点はすぐトップギアモードにしてしっかり見たほうがいい。しかも、気持ち早めの鑑賞がいいかもしれない。というのも、メインの33幅の前では混雑で列の動きがかなりゆっくりになるため、ミクロに美が宿ったこの若冲のすばらしい作品を存分にみようと思うとかなり時間を食うからである。

“動植綵絵”だけでなく“釈迦三尊像”も04年日本橋高島屋で開催された“相国寺の名宝展”で一度じっくりみていたから、事前の鑑賞シミュレーションは33幅の並べられ方と昨年の公開の際、目がまだ慣れてなかった1、2期の作品ですっとみてしまったものをもう一度しっかり単眼鏡を使ってみることだった。が、並べ方については部屋に入ってすぐ諦めた。ゆっくり33幅を見渡せる状況ではない。で、頭をお目当て作品の再鑑賞に切り変えた。

会場のあちこちで驚嘆の声が飛び交うなか、また浸りたい若冲ワールドの作品とは、“梅花小禽図”(06/6/18)&“梅花皓月図”、“牡丹小禽図”&“薔薇小禽図”&“梅花小禽図”(拙ブログ06/8/18)、そして上の“雪中錦鶏図、下の“老松鸚鵡図”(ともに部分)、一番のお気に入りの“菊花流水図”(06/8/21)。

“雪中錦鶏図”では独特のねばっこい練乳のような雪の描写に釘付けになると同時に鮮やかな緑色をした枝葉にも目を奪われる。誇らしげにお腹の赤い羽根をみせ、長い尾っぽを下にたらした錦鶏のまわりは穴があいた岩や枝を曲げてつくられる円でいっぱいのサイケデリックな空間。そして、驚かされるのが隣にいる横向きの錦鶏の毛。仔細にみると虎の毛のようだ。蕩けるようなファンタジー性と空想的なリアルさが入り混じった不思議な世界である。

“老松鸚鵡図”の緑のインコと手前にいる2羽の鸚鵡と感動の再会。緑羽のなかに使われたアクセントの赤が目にしみ、尾っぽには装飾のゴールド線をいれている。うっとりとながめてしまう鸚鵡のレース地のような羽根とともにしびれるのが嘴の先のうす青。緑と赤、うす青と白の対比をみると若冲は真正のカラリストだと思う。濃い緑と青がアールヌーボー風の画面を引き締めているのが“菊花流水図”。今回発見したのは、橙色の菊に隠れていた一羽の鳥。鳥は全部で4羽いた!

前回見足りなかった作品をとことん見た。見るたびにまた新たなイメージが涌いてくる。若冲は見る者に絵を自由に見る楽しみを与えてくれる。これが最大の魅力。小林忠学習院大学教授(千葉市美術館長)が図録のなかでいいことを書いておられる。“葛飾北斎は自らを「画狂人」と号していた。これになぞられて若冲の画人生を振り返るならば、この人は絵の道に遊び尽くした「画遊人」ではなかったか”。再度、「画遊人」若冲の心を打つ色に遊び、花や鳥の美しいフォルムと戯れられた幸せを噛み締めている。

なお、これまで書いた若冲に関する記事はカテゴリー“奇想派”にある。

|

« 世田谷時代1946ー1954の岡本太郎展 | トップページ | 若冲展 その二 »

コメント

こんばんは。
並び順に関してはあれこれ議論して
あの並びで今回は落ち着いたようですね。
私も正直「あれ?」と思う点もありましたが
大イベントを前にし些細な思いは吹き飛んでしまいました。

投稿: Tak | 2007.05.19 22:53

to Takさん
並べ方を云々する状況ではありませんでした。
月曜の午前中ですから、一番いい時間帯だった
かもしれませんが、それでも大勢の人でした。
若冲人気は本当にすごいですね。

三の丸で30幅を時間をかけて隅から隅まで
見たという思いがありますから、今回は見足り
なかった作品とお気に入りの絵を重点的にみた
ので、どこにどの絵があったかよく覚えてません。

図録のペアリングのように並んでいたように思
いますが。今回の並べ方は辻氏、小林氏の最強
コンビと学芸員の人の知見のたまものでしょうね。

でも、この順番は々として、目と心はTakさんのおっ
しゃるようにイベント感覚で自由にイメージをふくら
まして若冲ワールドを楽しんでましたね。すごい!
すごい!とつぶやきながら。

投稿: いづつや | 2007.05.20 00:09

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 相国寺承天閣美術館の若冲展 その一:

» 若冲展と先行プレビューブログを探して [四十郎の厄年日記]
相国寺承天閣美術館で。6月3日(日)まで開催中(会期中は無休)の「若冲展」では、美術界初の試みとして、ブログや、HPを持つ人のために、先行プレビューが行われています。 わずか45分ですが、ごく少人数で「若冲展」の会場を見学して、それをウェブサイト上の記事....... [続きを読む]

受信: 2007.05.17 23:53

» 「若冲展」 [弐代目・青い日記帳 ]
京都、相国寺 承天閣美術館で開催中の 「若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵120年ぶりの再会」に行って来ました。 こちらでも書きましたが「インターネット先行プレビュー」に幸運にも参加させていただき、5月12日の土曜日ひと足お先に鑑賞して参りました。 金曜前夜は上司からの誘いも丁重にお断りし帰宅。旅行の準備を整え明日に備え早めに就寝……のはずが、しかし興奮して眠れず。遠足の前は高揚するもの。ましてや目的地が若冲縁の京都相国寺であれば尚更です。そしてそこには今、「釈迦三尊像」と「動植綵絵... [続きを読む]

受信: 2007.05.19 22:50

« 世田谷時代1946ー1954の岡本太郎展 | トップページ | 若冲展 その二 »