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2007.05.30

あーとで候。会田誠 山口晃展

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上野の森美術館ではじまった“あーとで候。会田誠 山口晃展”(6/19まで)を楽しくみた。二人の作品をみるのは今回がはじめて。

会田誠は今年あった迷宮美術館に出演し、自分の作品で何を表現したいのかを語っていた。ブラックユーモア的な笑いにあふれる絵や、意表をつく構成に新鮮な感動を覚えた。現在、会田誠の作品は世界的に高く評価されているようだが、出品作を見て即納得。一方、山口晃の情報はほとんどない。テレビ東京が若冲の特集をやった番組に登場したので顔を覚えている程度。

会場では会田誠と山口晃の作品が交互に出てくる。今年制作された最新作がいくつかあり、現代アートの最前線を走る人気の作家ができたてホヤホヤの作品を“アートで候。とくと御覧あれ!”と披露しているようである。まず、会田誠から。

この作家は少女趣味オタクのような絵を描くが、その味付けには強い毒も入っている。ハットするのが“大山椒魚”(03年)。少女マンガに出てくるような裸の女の子がグロテスクな大山椒魚のぶつぶつの背中に肘をついたり、背びれをつかんでいる。会田はすごいセンスの持ち主だなと思わせるのはこの奇妙な取り合わせの背景に波の文様を使っていること。日本美術の伝統的な波の文様である青海波を銀でリズミカルに描いているのである。

海外の美術愛好家はこういうマンガ、装飾的な文様、まさにジャパニーズアートのエキスがつまっているような絵をみると、いっぺんに参ってしまうのではないだろうか。上も彼らが好きそうな絵で、この回顧展に合わせて制作された大作“滝の絵”(部分)。ここにはアクの強い要素は一切無く、思い々に滝から流れる水とたわむれる女子高生が大勢、明るい色調で描かれている。

現代の世相を鋭く風刺した絵“ヴィトン”に思わず笑みがこぼれる。これは東京美術倶楽部の“21世紀展”にでていた。“今年もヴィトンが豊作じゃ”のふきだしが最高にいい!まったく骨太のブラックユーモアである。笑いが止まらないのは最後のコーナーに展示されている“ポスター(全18連作)”も同様。これは見てのお楽しみであるが、小1会田誠は“平和”を描き、小6になるとピカソの泣く女で“自由な美術”まで進歩するが、中3会田誠の描く絵は“絶望”。面白い画家である。

山口晃の作品でお気に入りは下の“四天王立像・廣目天”と大作“渡海文殊”。四天王のなかではこの“廣目天”の美しさが際立っている。どうしてほかの3つもこんな調子で表現しなかったのだろうか?魅力度に差がありすぎるのが気になる。“渡海文殊”の前では声を失った。これは見事な作品。日本画の片岡球子が“葛飾北斎”などの“面構シリーズ”で一躍人気作家になったように、仏画や仏像にヒントを得た作品をどんどんつくり続けたらいいのではないかと思う。

山口独自の絵巻、風俗画、洛中洛外図風の大パノラマ画は“コロンブスの卵”みたいな作品。なんでもはじめに考えついた作家が一番エライ。金雲がたなびく中、垣間見せる街、“東京圖 広尾ー六本木”、“百貨店圖 日本橋”。ここにはちょんまげをした町人もいればネクタイをしたサラリーマンもおり、着飾った江戸の女、普通の服を着た今を生きるおばさんもいる。時間を超越し、昔の日本と現代における街の賑わいを同時に描くという発想が独創的で洒落ている。

予想以上にぐっとくる絵が沢山あった。これからの二人の作品に注目したい。なお、練馬区立美術館で“山口晃展”(8/17~9/17)が開催される。ご参考までに。

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コメント

ビデオコーナーで森美術館「日本に潜伏するビン・ラディン」を見たときは笑い転げましたが今回もちょっとビデオありましたね。
ところでどちらの作品か忘れたのですが浅田彰を批判する題名の作品がありましたね、図録を見ても載っていない!
博識のいづつやさん、どういう意味か教えてください!

投稿: oki | 2007.05.31 10:08

to okiさん
二人の作品をみるのははじめてなので、絵画ばかり
熱心に見ました。で、2階にあったアート作品は
さらっと前を通り過ぎた感じですから、浅田彰うん
ぬんは全く記憶にありません。ビデオもチラッと
見ただけです。

投稿: いづつや | 2007.05.31 15:56

なるほど、会田誠が海外で評価される秘密は
そういうところにあるのですね。

私も、山口晃の広目天と渡海文殊にはしびれました。
少女漫画的な広目天ではあるのですが、絶対に
忘れることのできない作品となりました。

投稿: 一村雨 | 2007.06.03 22:29

to 一村雨さん
二人を較べると会田誠のほうが外人受けするアーティスト
ではないでしょうか。作域が広く、少女チックとグロ
テスクを同居させたり、骨太のユーモアありですからね、
潜在能力は相当高いです。

本人は村上隆のようにNYやヨーロッパを向いていま
せんが、本気で打って出たら村上隆に負けないかもしれ
ません。

山口晃が制作する仏画、仏像の見立絵は魅力ありますね。
本質的には春信の見立絵と変わりませんが、いいとこに
目をつけたものです。これをどんどん創作してもらいた
いです。次回作が楽しみです。

投稿: いづつや | 2007.06.04 13:46

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