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2007.05.29

東博平常展の上村松園

275東博本館はダ・ヴィンチの“受胎告知”が展示されている(6/17まで)ので、入り口やコインロッカーのあたりは相変わらず大勢の人で混み合っている。

だが、平常展はいつもの雰囲気だから、所蔵品をじっくり楽しめる。

ほかの美術館で行われる企画展鑑賞の日程調整に追われていると、ここの平常展の展示スケジュールがどこかに消えてしまい、あわててHPをクリックすることがよくある。

さらにやっかいなのはセクション毎で展示のインターバルが異なるから、こまかく見ようとすると、結構な頻度で訪問しなくてはならない。

で、いつものように2階の国宝室から順次みた。“禅と水墨画”のところに伝狩野正信の“山水図”があった。松の木や遠景の山々が垂直に上にのびる構図は大倉集古館で5/27まで行われていた“狩野派誕生展”に出品された“観瀑図”とよく似ている。

“屏風と襖絵”と“書画”の部屋は6/3まで、特別陳列“屏風”に当てられているので、酒井抱一の“四季花鳥図巻”(巻上)などは“浮世絵”コーナーの前の部屋で展示中。“四季花鳥図巻”は蜂や黒い蝶々、紫陽花が描かれた場面がみられる。抱一画の真骨頂である気品に満ちた花鳥描写にまたまた酔いしれた。また、芦雪の“雀図扇面”もしっかりみた。この雀は正面をまっすぐ見ている。ここの作品は6/3までの展示。

この部屋に興味深い絵がでている。それは狩野山楽の“車争図屏風”。描かれているのは源氏物語の一場面。賀茂の斎院の祭礼で源氏の愛人六条御息所の牛車と正妻葵上の牛車が行き合い、行列見物の場所とりで激しく争っているところ。この絵を飾っているのは1階にある右の上村松園の“焔”を意識してのことだろうか?

“焔”は上村松園の代表作なので2年に1回くらいのペースで登場する。はじめてこの絵をみたときはすごい衝撃をうけた。この女は葵上に嫉妬の火を燃やし死に至らしめた六条御息所。後れ毛をおはぐろをつけた歯で食いしばり、振り返る凄絶な姿に一瞬たじろぐ。着物の柄には執拗な怨念を暗示するかのように紫と黄色の藤の花と大きな蜘蛛の巣が使われている。

上村松園の美人画というとすぐ、あのやわらかく雅な感じの女性をイメージするが、松園は一枚だけこんな凄味のある情念の世界を描いた。画家自身の心のうちを描きたかったのかもしれない。なお、この絵の展示は6/10まで。

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コメント

こんばんは。私も先日抱一の「四季花鳥図巻」を見に行った際、
この松園に衝撃を受けました。
常に品の良い松園の美人画からは想像もつかないような、
何やら恐ろし気な表現です。
確か山種の松園展でも出ていなかったと思うので、
新たな松園像を見出した気持ちになりました。見逃せませんね。

投稿: はろるど | 2007.05.30 22:05

to はろるどさん
松園のこの絵はほんとうに凄みがありますね。
夜暗いところでこれは見れません。松園の“焔”
と鏑木清方の“妖魚”がゾクッとする美人画の
双璧でしょうか。

あの松園が、あの清方が“こんな絵を描いたの!”
と大きな衝撃を受ける全く異色の絵です。
偉大な芸術家はやはり一筋縄ではありません。

投稿: いづつや | 2007.05.31 15:47

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