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2007.05.22

サンクトペテルブルク 国立ロシア美術館展

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東京都美術館は現在開催中の“国立ロシア美術館展”(4/28~7/8)に“ロシア絵画の神髄”と銘打っている。展示されている作品をみると、なるほどその通りだなと思う。この展覧会の情報を得たとき、一番期待したのがレーピンの代表作、“ヴォルガの舟曳き”。さすがにこれはやってこなかったが、今回出品された絵画86点には心を打つ名画が沢山ある。

日本の美術館でロシア人画家の絵をみた記憶がなく、まとまった形での鑑賞体験は唯一、モスクワにあるトレチャコフ美術館の作品だけ。このときは現地のツアーガイドの説明を聞きながらの見学だったから、全部の作品をしっかりみたという実感はない。でも、図録を購入しどの絵が印象深かったかは印をつけているので、今回展示の作品の前にたつと一部の画家については画風がよみがえってきた。

まず、“移動派”の巨匠、レーピン(1844~1930)から。レーピンはセザンヌ(1839生)、ルノワール(1841)、モネ(1840)らと同世代の画家。トレチャコフでみた大作“クールスクの十字行”(1880~83)は忘れようにも忘れられない絵。馬に乗った官憲に威圧されながら大勢の民衆が宗教聖器を担いで土ぼこりの道を黙々と行進していた。

今回レーピンの絵は最も多く10点あるが、ほとんど“リムスキー=コルサコフ”、“ニコライ2世”などの肖像画。この中で一際異彩を放っているのが“何という広がりだ!”
(1903)。手をつないではしゃいでいる二人の男女は激しく波が流れる浅瀬に立っているのだろうか?リアリズム絵画とは全然イメージの異なるロマン派風の絵である。レーピンにもこんな作品があったとは!

この展覧会における最大の収穫はレーピンではなくアイヴァゾフスキー(1817~
1900)の4点。なかでも立ちつくしてしまうのが上の大作“アイヤ岬の嵐”(1875)。先に見ていた油絵を描いている友人が“すごい絵があるぞ!”と言っていた絵である。

200%魂を揺さぶられた。構図が巧み。崖に衝突し大破した船の対角線上に生き延びた水夫たちが必死にこいでいるボートを配し、この船とボートを分断するかのように左上から右下へ荒れ狂う龍の背中みたいな波がうねりあがっている。画像では海面の色が白っぽくでているが、実際は海のあのうす青みどり色。残り3枚の“天地創造”、“穏やかな海岸、凧”、“月夜”も心に響く。

下の作品はポポフ(1832~1896)の“村の朝”(部分、1861)。写真のような絵である。河で大きな石にすわり釣をしている少年の前の水面にはむこうに見える建物がくっきり映り込んでいる。水草や川岸に立ち並ぶ細い木の精緻な描写に思わず目が寄ってしまう。同様のリアルな描写に惹き込まれるのがスホデリスキーの“村の昼間”。

トレチャコフでよく覚えているシーシキンが描いた大作“冬”、“針葉樹林、晴れの日”やポレーノフの光にあふれる明るい絵、“モスクワの庭”にもぐっとくる。また、サヴラーソフの“早春”や“冬”に漂う詩的な情趣が前にもまして胸を打つ。

予想を上回るすばらしい作品の数々にハイテンション状態が最後までつづいた。東京都美に感謝々である。

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コメント

アイヴァゾフスキーには僕も参りました、さすがは広大なロシア、こんな人もいるのですね。
「第九の怒涛」で有名で、富士美術館では「第九の怒涛」の展覧会が開催されたとか、いづつやさんはごらんになられましたか?

投稿: oki | 2007.05.24 00:02

to okiさん
アイヴァゾフスキーの“第九の怒涛”は全く
知りません。みてみたいですね。レーピンや
シーシキンの絵ばかり頭にありましたから、
アイヴァゾフスキーの4点には衝撃を受けま
した。一生の思い出になります。

投稿: いづつや | 2007.05.24 09:54

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