京近美の福田平八郎展


京近美の平成19年度展覧会スケジュールに“福田平八郎展”(4/24~6/3)が載っているのを見つけたときは天にも昇る気持ちだった。作品数80点のこの大回顧展に対する期待値は昨年あった前田青邨や加山又造の回顧展と同じくらい高い。
平八郎の回顧展ははじめてではない。広島にいたとき、呉市下蒲町にある蘭島閣美術館で“雨”(東近美、拙ブログ05/7/7)や“花菖蒲”(京近美)など代表作がほとんど集結したすばらしい特別展(04年2月)と遭遇し、一気にカラリスト、福田平八郎の虜になった。今回、目を楽しませてくれたのはお目にかかれる日をずっと待っていた上の“漣(さざなみ)”(大阪市立美建設準備室)のほか、蘭島閣美では展示会場の関係で出品されなかった大作屏風など。
待望の“漣”との対面である。予想以上に大きな絵。美術好きの人がこの絵をタイトルを知らないでみたら、10人いれば10人が現代アーティストの作品と思うのではないだろうか。銀地の屏風に描かれているのは群青の線で表現された波だけ。青の横線は手前のほうは途切れ々で余白が多いのに対し、上にむかうにつれ密になり、横にのび、前後で交差するようになる。同時に群青の深みも増していく。銀と青の組み合わせは装飾的な感じで、じっとみていると風に揺れてできる美しい漣に吸い込まれそうになる。日本画に新風を吹き込んだこの絵が発表されたとき、最初は理解されず、評論家からは“浴衣の模様のようだ”と言われたらしい。
平八郎は写生の虫で、とにかく自然を写生し続け、生き物や草花を生き生きと表現しようとした。でも、その自然の対象をそのまま写しとるのでなく、写生を基本にして装飾的に描いている。平八郎が写生の対象からまず感じるのは形や線よりも色彩。で、強く刺激を受けた色彩を追求していると、しぜんに対象の形をとらえることができるという。
カラリスト、福田平八郎の作品の中で惚れ込んでいるのが下の“鸚哥(いんこ)”。亡くなる10年前、73歳のときの作品である。背景の緑、黄色、青の多彩な色面構成や向き合う橙色とうす緑色の鸚哥はゴーギャンの色彩感覚を彷彿とさせる。この絵にまた会えたのが嬉しくてたまらない。同じ年に制作された“筍”の色使いにも気分がハイになる。今回、“漣”とともに大収穫だったのが筍と竹が描かれた大きな絵、“竹”。無地のバックに青、緑、土色のうすい色調を使い様式化された竹の幹と鮮やかなえんじ色の筍がすうーっと垂直にのびている。こういういい絵を毎日眺められるコレクターが羨ましい。
このほかで心に響いたのは大作屏風の“菊”(京都市美)、体を曲げて泳ぐフォルムが綺麗な“鮎”(山種美)、抽象画のような“水”(大分県美)、愛媛県美が所蔵する“初雪”と“鴛鴦”。念願の“漣”と対面できたので、福田平八郎はひとまずお休み。しばらくは展覧会の余韻に浸っていたい。
なお、この回顧展はこのあと名古屋の松坂屋美術館(7/14~8/7)でも行われる。
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コメント
福田平八郎を好きな人がいて嬉しいです
代表作の屋根や漣はやっぱりいいですが、丁寧な具象も抽象のようにみえる水なども良いですね
TBしたら、間違えて他のをしてしまいました お手数ですが、一つは削除してください
投稿: えみ丸 | 2007.05.18 07:54
to えみ丸さん
福田平八郎の回顧展は2度目ですから、今回は“漣”
と大きな作品を期待してました。“漣”はもちろん
ですが、“菊”とか“竹”などもみれて最高の気分
です。大分県美の“朝顔”もあれば申し分ないとこ
ろでした。
写生の虫が実際に仕上げるのは抽象画風の絵だっ
たり、ゴーギャンもびっくりの鮮やかな色面構成です
から、本当にすごい画家です。
投稿: いづつや | 2007.05.18 18:55
久しぶりのコメントさせて頂きます。
若冲参詣楽しく拝見しました。
とても都合が付きそうになく、ご覧になった方のブログを拝見して、
感動を頂いています。
この、福田平八郎の「漣」をみて、
春、近美でみた、都路華香の波を思い出しました。
図録にこの華香の影響が平八郎にあったことが書かれてあって、
興味深く読んだところです。
意匠のデザインの温かさがあって、大好きになりました。
山種に「鮎」がいましたね。
投稿: あべまつ | 2007.05.19 17:39
to あべまつさん
三の丸展やプライスコレクション展をみられている
方は相国寺の若冲展までいかなくてもいいのでは
という気がします。
動植綵絵以外の水墨画27点のなかにはプライス
コレクションに出品された、葡萄、虎、芭蕉、鶴、鯉
、伏見人形の絵などと似ているのがあり、新しい
対象の作品のオンパレードということではありま
せん。ご安心を。鹿苑寺の障壁画はこれだけの若冲
人気ならまた、展示するのではないでしょうか。
福田平八郎の“漣”がやっとみれました。モダンな
造形と銀と群青の組み合わせが心に響きます。
カラリスト、福田平八郎と小野竹喬の作品を限りなく
愛してますから、今回の回顧展はもう最高に気分が
いいです。
投稿: いづつや | 2007.05.19 23:13
こんばんは
遠方の皆さんが早々と福田平八郎を楽しまれたと言うのに、地元の者に限ってこんなに遅くて・・・(苦笑)
レスに書かれている
>カラリスト、福田平八郎と小野竹喬の作品を限りなく愛してます
ああ、素敵です、わかります。
わたしはそこに華楊、蓬春、そして遙邨が加わると完璧です。
いい展覧会でした。
三回ほど回顧展見ましたが、多分今回の内容が一番良いと思います。
TB送りました。
投稿: 遊行七恵 | 2007.05.28 22:02
to 遊行七恵さん
カラリスト好きの心持ちをわかっていただき、嬉しいです。
平八郎にしろ竹喬にしろ、あのすばらしい色彩に到達
するのが晩年だというのが凄いですね。今回の回顧展は
大きな作品が沢山みれましたから、申し分ありません。
東京にやってこないのが本当に残念です。青邨、又造、
平八郎、こんな巨匠の回顧展を東近美ほか東京の美術館は
どこも開催しないのですからどうかしています。
投稿: いづつや | 2007.05.29 22:40