秋川雅史が歌う「千の風になって」
2,3週間くらい前、フジテレビの“ミュージックフェア”にテノール歌手の秋川雅史が出演し、今大ヒットしている“千の風にのって”を心をこめて歌っていた。
すぐ口ずさめるいい曲なので、今は収録ビデオを繰り返し聴いている。こういういいメロディーの曲をびっくりするようなイケ面の秋川雅史が声量ゆたかに滔々と歌い上げるのである。多くの人が感動し、涙を流し、そして勇気をだして生きようと思うはずである。
秋川雅史はプロフィルをみると現在、40歳で愛媛県西条市の出身。4歳の時から声楽の父親の影響でバイオリンやピアノをはじめたというから、筋金入りのクラシック音楽人間である。昨年のNHK紅白に出演したから関心をもっていたのに、なぜか見そびれてしまった。で、“千の風にのって”という曲が耳にとどくようになったのは今年に入ってから。
歌詞をフルで聴いた。“私のお墓の前で 泣かないでください そこには私はいません 眠ってなんかいません”。この出だしの歌詞から胸がざわざわしてくる。映画“ゴースト”が頭をよぎった。愛する人や頼りにしていた人が突然亡くなって、残された者が悲しみにくれているとき、天国にいる死者はたしかにこういう言葉を一番かけたいだろうなと思う。
この歌詞をつくったのは作家の新井満。曲を作ったのもこの作家だという。ええー?!新井満は画家デュフィーが好きな小説家とばっかり思っていたら、なんと作曲までしてしまうマルチタレントだった。周囲の話しを総合すると、詩そのものは19世紀中頃、アメリカで生まれたといわれている。それを新井満が日本語訳にしたのだという。これがほんとうにいい訳になっている。プロのしかも芥川賞をとった作家だから、このくらいの翻訳はお手のものかもしれないが。
最後にリフレインされる“千の風になってあの大きな空を吹きわたっています”は身内ではないが深い悲しみにくれている者にも絶望の淵にいる家族にも勇気を与えてくれる。アメリカでは9.11同時多発テロで犠牲になった父親を偲び、11歳の少女が追悼式でこのオリジナルの詩を朗読し、大きな反響をよんだという。
音楽というのは大きな力を持っている。日本では歌になり、テノール歌手秋川雅史が全国を回り、切々と歌っている。今、悲しい別離に遭遇しているわけではないが、しばらくこの歌を口ずさんでいたい心境である。
| 固定リンク
コメント