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2007.04.27

ダ・ヴィンチの受胎告知

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ウフィツィ美術館にあるダ・ヴィンチの“受胎告知”が東博で公開されて1ヶ月ちょっと経つ(展示は6/17まで)。現在の混み具合はどんなだろうか?このGW中は大げさにいうと全国から美術愛好家がやってくるかもしれない。国立新美術館ではモネ展をやっているし、上野でもダ・ヴィンチの名画がみれるのだから、今、東京の美術環境は最高!

スペイン・ポルトガル旅行記が間にはいったので感想を書くのが随分遅れたが、この展覧会は3/20の初日に見てきた。予想されたとはいえ、目の前の混雑ぶりをみせられると、ダ・ヴィンチという画家に大の絵画好きにしろ普通の人にしろ多くの人が並々ならぬ関心を寄せていることがわかる。

今回公開されている“受胎告知”は昨年訪れたウフィツィ美術館で時間をかけてみたから、再度の対面では画面のディテールに対する目の配り方も似通ったものになった。絵のサイズでいえばダ・ヴンチの作品の中では“最後の晩餐”に次いで大きいから、見ごたえがある。現地で見たのと同じ印象だが、まず目が集中するのが書見台の大理石装飾。そして、聖母マリア。大天使ガブリエルからイエスの身ごもりを告げられた瞬間の驚きを顔の表情ではなく左手で表現している。マリアの顔はとても少女ぽい。

ダ・ヴィンチが描く女性で一番惹きつけられるのが念入りに編んだ金髪。マリアの綺麗にカールされた髪も悪くないが、お気に入りは“岩窟の聖母”(ルーブル美)で横向きに描かれた大天使ウリエルの髪のほう。大天使の周りに整然と描かれている植物や手に持っているユリは画面全体がすこし暗いから、花としての残像は強くない。それより印象深いのが白地の遠景に浮かび上がる糸杉。この糸杉は平板に様式化されて横に連続しており、背景の海面に浮かぶ小さな帆船(下の拡大画像)と較べると巨木のように感じられる。

遠近法上の消失点となっている遠景の先の尖った三角形の山と空には、まだ“最後の晩餐”(拙ブログ06/5/1)で目に焼きついている究極の空気遠近法、すなわち、美しいうす青はみられないが、中国の山水画を連想させるかすみがかった風景は深遠で幻想的。山水画は目の前にある風景ではなく、画家の精神性を象徴的に表現しているのに対し、ダ・ヴィンチは科学的な観察のうえに超想像力を働かせ、理想郷を描いた。

平成館で行われている企画展は昨年、ウフィツィ美術館で見た。鑑賞後購入した図録はイタリア語だったから、図版ばかりながめていたが、内容が日本語に翻訳されたので助かった。現地でも驚愕したのが大きな馬の像の模型。この像は結局実現しなかったが、ダ・ヴィンチの創作エネルギーは規格外のスケール。また、“最後の晩餐”における使徒たちの心の動きを再現したCG映像がすばらしい。

今回の図録は芸術家そして科学者、ダ・ビンチのことを知るには最良のもの。永久保存版として折に触れ、読みこなしたい。

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コメント

ウフィツィにあるもう一点のレオナルド作品、『東方三博士の礼拝』は未完成ですが、素描は見事ですね。

『東方三博士の礼拝』が四年かけた修復の後、今日から展示されているそうです。

以下のサイトでスライド・ショーで修復前と後が見られます。未完成作品とはいえ、以前ぼうやけていた感じだった画面がとても明瞭になったようです。イタリアで絵画が修復されるたびに思うのですが、イタリアの修復技術はすごいと思います。

http://corrierefiorentino.corriere.it/foto-gallery/toscana/17_marzo_27/uffizi-svelata-l-adorazione-magi-leonardo-d90f2bf4-12ce-11e7-8d27-214c729abb0c.shtml 

投稿: ケンスケ | 2017.03.27 22:11

上記のURLは正しいのにどうも該当ページが出ません。すみません。

下記のものは、上記のものほどよくないですが、拡大クリックで新たな展示が見られます。

http://www.wfsb.com/story/35002911/leonardos-adoration-of-the-magi-now-clearer-brighter

投稿: ケンスケ | 2017.03.27 22:59

to ケンスケさん
いつも新情報ありがとうございます。ダ・ヴィンチの
‘東方三博士の礼拝’が修復されて展示されているの
ですか!

仰るようにこれだけ高い技術をもった修復がなされる
とこの目でという気になりますね。

投稿: いづつや | 2017.03.27 23:59

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