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2007.04.25

たばこと塩の博物館の風俗図屏風と光琳の画稿

809たばこと塩の博物館で行われている“風俗画と肉筆浮世絵展”(7/7まで)で予想もしなかった貴重な絵をみた。

この展覧会では、会期を前期(4/14~5/23)と後期(5/24~7/7)にわけて近世風俗画60点が展示される。

前期39点のうち17点は最後まで展示されるが、このなかに絵のできばえ、コンディションのいいのが2点ある。右の“風俗図屏風”と“月次風俗屏風”。月次は“つきなみ”と読む。

絵の前で嬉しくなったのは“風俗図”(六曲一双)。右の右隻(部分)には、遊郭の張見世の前で行われている大神楽に集まった見物人や木戸付近でたばこを売る店(右端上)が描かれている。そして、左隻は伎楼の座敷で男女が歌舞音曲、カルタ、双六で遊んでいる場面。登場する人物がびっくりするほど大勢ではなく、余白を広くとる構成になっているので、ひとつ々の場面がよく目の中に入るのがいい。しかも絵が上手。

洛中洛外図のように金雲が画面の上と下で店や屋敷の屋根をところどころ隠し、あまり色あせてない金地と座敷のうす緑がていねいに描写された人物を浮かび上がらせている。また、店の暖簾などや男女が身に着けている着物の柄なども精緻に表現されているから、こうした細部を単眼鏡で拡大してみていると時間が経つのを忘れてしまう。

この風俗画がなぜ貴重なのか?屏風の下に並置してある京博が所蔵する“小西家文書”の風俗画画稿は尾形光琳が21歳のとき描いたものである。そして、この風俗画とそっくりの絵がもう一点ある(個人蔵)。3つの絵の関連について、“芸術新潮”の05年10月号で光琳を研究している狩野博幸氏(元京博の大物学芸員、現在、同志社大学教授)と河野元昭氏(東京大学教授)が面白い話しをしている。

狩野氏の説が興味を惹く。その主張は“風俗画を写したような光琳の画稿は模写ではなくて下絵。本画制作を前提にした下絵だから、緻密に描いている。琳派というと宗達以来、当世風俗に興味をいだかず、古典を主題に描くものという先入観があるが、光琳は風俗画を描いた可能性がある。将来、あらわれないともかぎらない”。

これに対し、河野氏は“これは模写ではないか。ただ、光琳の図は大体たばこと塩博のと同じ構図と図柄だが、一部は個人蔵の図柄が見られるので、光琳が写したのはこの二つとは別の絵”。この遊里図は人気があったため、町絵師の工房でいくつも描かれたのではないかと推察している。

模写でなく、本画の下絵として描いたのなら、いつか光琳の風俗画が現われる可能性が残されている。夢のある話しにつながるこの風俗画に遭遇したのは大きな収穫だった。

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コメント

こんばんは。

光琳との関連を示唆するように
上手いこと展示もなされていましたね。

こちらを読ませていただき
今一度行ってこなくてはと思いました。
いつものことながらありがとうございます。

投稿: Tak | 2007.05.01 22:48

to Takさん
この風俗画がみれたのはラッキーでした。狩野氏の話
を興味深く読んだものですから、絵の前でこれが件の
絵かと思わず目に力が入りました。

確かに光琳の写しはたばこと塩博所蔵とは完全には
一致しませんから、個人蔵など複数の絵を見て創作し
たか、あるいは二つとは違う別の絵を参考にしたか
ですね。

光琳が風俗画を描いたというのはありうるかもしれま
せんね。いつか、本画が発見されたりして。

投稿: いづつや | 2007.05.02 14:25

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