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2007.03.24

ルーベンス、デューラー、レンブラント

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プラド美術館の絵画のなかで、ルーベンス(1577~1640)の作品はゴヤに次いで多く、80点近くある。これはルーベンスが亡くなったとき、フェリペ4世が残されたコレクションのうちルーベンス作品の大半を買い上げたからである。為政者としての能力はからっきしダメだったフェリペ4世はルーベンスの絵が好きで、外交官ルーベンスがイギリスとスペインの和平のため1628年から29年にかけてマドリードに滞在したとき親交を深め、絵の制作を何点か依頼している。

これまでの訪問でルーベンスの絵は時間をかけて観たという思いがあるので、今回の必見リストには特に入れてなかった。で、古典画、神話画、肖像画、ティツィアーノの絵の模写などをさぁーッと観た。でも、バロック様式の巨匠の絵だから、前を通りすぎるだけといっても画面が目の中に入ってくれば心拍数は少しずつ上がってくる。どうしても見蕩れてしまう代表作の一つ、“愛の園”はフェリペ4世の寝室に飾ってあったもの。

この絵とともに印象深いのが上の“三美神”。古典画の形式を踏襲しているが、裸婦の透明感のあるふくよかな肌は理想化して描かれてはおらず、現実感があり生気にあふれている。当時は肉づきのいい女性の体の線がもてはやされていたから、ルーベンスの感性はこういう女性に理想美を求めたのであろう。太り肉のプロポーションについては好みがわかれるところ。“ルーベンスはどうも苦手!”という人は大体この豊満な肉体描写に拒否反応を示す。

画面左の美神はルーベンスの2度目の妻、エレーヌがモデル。1630年末、53歳のルーベンスは16歳のエレーヌと結婚する。晩年のルーベンスの作品に登場する肉感的な金髪の裸婦がこの若い妻、エレーヌに霊感を得ていることは明らか。プラドの“パリスの審判”に描かれたヴィーナスやウィーン美術史美術館所蔵の“ヴィーナスの祝祭”で年をとったサテュロスに抱き上げられた左端のニンフにエレーヌの面影がある。ルーベンスの絵には“聖ゲオルギウスと龍”のようにこれぞバロック!といったエネルギッシュで劇的な場面を描いた作品は沢山あるのに、今回だけはこれにコラボしてのめり込む時間がない。

ドイツルネサンスの大画家、デューラー(1471~1528)の“1494年の自画像”(真ん中の画像)は足をとめてみた。デューラーは自分の容貌に誇りをもっていたというが、たしかにびっくりするほどいい男である。この絵は半年間のヴェネツィア滞在(拙ブログ04/12/7)から戻って3年後の作品。このときデューラーは27歳。これほどかっこいい肖像画はほかにない。はじめてこれを観たときは美しい女性の絵をみるような感情が湧き起こった。

長い波打つ巻き髪の細密描写がとにかくすごい。まずこれに目が点になり、さらに貴族が着るような優雅な服装に見とれてしまう。そして、手袋までしている。この時代、身分と違う服装で町を歩くと罰せられ、手袋を使うのは手仕事をしない人に限られていた。だから、デューラーはこういう服装や手袋をしていたのではなく、想像でこの自画像を描いた。いつかこういう上品な貴族になりたいという願望の表れである。晩年、デューラーは名の知れた画家になり、若い頃抱いた夢は実現される。

下の絵は大変感動したレンブラント(1606~1669)の“ソフォニスバ”。古代ローマ時代の物語を絵画化したすばらしい絵である。明るい光があたり白く輝く衣装と目鼻だちの整った顔と背景の黒のコントラストが見事。そして、衣装の細かな模様や装飾的な杯の精緻な描写にも驚かされる。リストに入れていた作品ではあるが、予想以上にいい絵だった。オランダの絵があまりないプラドでレンブラントの一級の絵に会えたのは望外の喜びである。

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コメント

こんにちは。
連日、いづつやさんのレポート、うっとりとする思いで
眺め、拝読しております。至福の時を過ごされましたね。

私も昨年だったか、損保ジャパンでレンブラントの三美神を
見て、うっとりとしましたが、こちらにもドキドキです。
拒否反応なぞ、おきようもありませんです。

投稿: 一村雨 | 2007.03.25 06:47

to 一村雨さん
プラドにある三美神は昨年損保ジャパン美にやって
きた作品の10年後くらいに描かれたもので、大作
です。女性の肉体は脂肪がつきすぎた感もありますが、
生気のある裸婦は魅力一杯ですね。ルーベンスのバロ
ック様式の絵画を満喫しました。

投稿: いづつや | 2007.03.25 17:59

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