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2007.03.23

ティツィアーノの神話画

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“ティツィアーノとルーベンスの絵をみたければプラドへ行け!”といわれるほどこの美術館には両巨匠の名画が沢山ある。今回の楽しみの一つが36点あるティツィアーノ
(1485~1576)の作品。過去2回の鑑賞で肖像画の傑作、“カール5世騎馬像”や下の“ダナエ”はよく覚えているが、ほかは感動を体の中にとどめたという確たる記憶がない。理由は明白。当時はまだ、鑑賞の対象としてティツィアーノは入ってなく、ティツィアーノとティントレットの絵が区別つかないくらい関心が低かったのである。

ティツィアーノに開眼したのは93年、ボストンにあるガードナー美術館で最高傑作といわれる“エウロペの略奪”(拙ブログ05/05/25)をみてから。そのあとヴェネツィアのサンタ・マリア・デイ・フラーラ聖堂に飾ってある“聖母被昇天”、昨年のボルゲーゼ美術館の“聖愛と俗愛”(06/5/22)などとのエポック的な遭遇があり、今はこの画家の絵を見ているととてもいい気分になる。だから、1階と2階にあるティツィアーノの部屋では画集に載ってる代表作を画像コピー入りチェックリストで確認しながら、興奮状態でみてまわった。“この絵はここにある、隣の絵がこれだ!”という調子。ここの所蔵作品が常時展示してあるわけではないから、リストの絵が見あたらなくてもおかしくないのに見逃したのではと、時間がないのにまた前の部屋に引き返したりする。

ティツィアーノは48歳のときカール5世の宮廷画家になって以来、ハプスブルク家一族の肖像画を多く手がける。カール5世のほかにも皇后イザベル、フェリペ皇太子、そして国王になったフェリペ2世の肖像画がある。昨年あった“プラド美展”には“皇帝カール5世と猟犬”、“フェリペ2世”の2点が出品された。今回注目したのは肖像画よりもギリシャ神話などを題材にした作品。ヴェネツィア派の特徴である鮮やかな色彩で描かれた神話画が次から次と目の前に現れる。“プラド美展”に展示されて多くの人をうっとりさせた“ヴィーナスとオルガン奏者”(06/2/26)と再会した。隣にクピドが枕に代わっている別ヴァージョンがあったが、色の輝き、細部の筆致は東京都美にきたほうが断然いい。

神話画のうち是非とも見たかったのが上の“ヴィーナスへの奉献(キューピットたち)”と真ん中の“バッカス祭(アンドロス島の人々)”。“キューピットたち”はヴィーナスの神殿がある林檎の果樹園で大勢のキューピットたちが林檎遊びに興じているところが描かれている。林檎はヴィーナスの果実で、生の喜びのシンボル。ルーベンスの絵でキューピットが沢山登場するのを何点かみたことがあるが、ティツィアーノのこの絵がモデルになっているに違いない。人数を数える時間はないが、多くの可愛いキューピットたちがふざけあったり、取っ組み合ったり、抱き合ったりしている。これほどバリエーションに富んだ動きと表情をしたキューピットをみたのははじめて。“聖母被昇天”や“聖愛と俗愛”にも愛らしいキューピットが描かれており、ティツィアーノはラファエロ同様、キューピット描きの名手である。

“バッカス祭”では右手前に描かれた酩酊して眠りこける裸婦のニンフに目が集中し、その官能的なポーズに心がざわざわしてくる。この絵のテーマは“アンドロス島を流れる葡萄酒の小川とその小川の酒を飲んで酔っ払ったアンドロスの人々”。酒席の楽しい雰囲気が伝わってくるようで、仲間に入れてもらいたくなる。笛を持って横たわる二人の若い娘の前に置かれた楽譜にはフランス語で“酒呑んで盃かさねぬ者は酒呑むことを知らぬ者”と書かれている。

下の“ダナエ”はティツィアーノがフェリペ皇太子のために制作した絵。拙ブログでレンブラント(05/5/26)とクリムト(06/11/5)が描いた“ダナエ”を取り上げたが、このティツィアーノの絵にもすごく魅了される。久しぶりの対面。性格が悪そうな召使の老女が天から降りそそぐ黄金の雨(ゼウス)を前掛けで集めている姿とやわらかい肌をした優美なダナエをしっかりみた。

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コメント

キューピッドたちがコロコロコロコロコロコロいるこの絵、大好きです。なにやらヴィーナスが幼稚園の園長さん、そばで右往左往する女たちは保母さんらに見えます。さぞやかましくて、楽しいでしょうね。

下のダナエは別バージョンの絵を、'90のエルミタージュ展で見ました。そちらには眠る動物はいませんでした。

投稿: 遊行七恵 | 2007.03.25 12:24

to 遊行七恵さん
ティツィアーノが描くキューピットはかわいくて
いいですね。ラファエロのキューピットばかりみて
ましたが、ティツィアーノの天使にも甲乙つけがた
いほどの魅力的がありますね。見てて和みます。

エルミタージュのダナエが90年日本で公開された
のは知りませんでした。ナポリにも別ヴァージョンの
ダナエがありますね。これをいつかみたいですね。
そうすると、3つ全部みたことになるのですが。

投稿: いづつや | 2007.03.25 18:12

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