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2007.03.20

ゴヤのマルチ画風に感服!

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プラド美術館の入場口の前にゴヤの肖像彫刻がある。館の正面側に像があるベラスケスと同様、ゴヤはここスペインでは特別な存在だ。ゴヤ(1746~1828)の絵をプラドは170点所蔵している。これは巨匠たちのなかでは一番多く、2階と3階の多くの部屋がゴヤの作品にあてられている。

事前の鑑賞シミュレーションでは女性画とタペストリーの下絵として制作された風俗画、“黒い絵”シリーズをもう一度しっかり見ようという作戦を立てた。結果は出来すぎというくらい上手くいった。最後の10分は走りながら見たという感じで、あわただしかったが、望みの絵はだいたい目の中におさめたので、出口では満ち足りた気分だった。

誰しもそうだろうが、はじめてこの美術館を訪れたときはまず、代表作の“着衣のマハ”、“裸のマハ”を一生懸命になってみる。そして、“この絵のモデルは誰だ?”とか、“カトリックの厳しい戒律のなかで、どうしてこんな生身の裸婦が描けたのか?”などの情報をかき集め、自分でまた想像力をふくらましていく。ゴヤとアルバ公爵夫人との関係はピカソの女性遍歴よりずっと面白い。

挑発するようなポーズのマハで一回目のショックを受け、次に耳が聞こえなくなった後に描かれた人間の内面がそのまま表情に出ているような肖像画や戦争の悲惨さや人間の魂の叫びを表現した重苦しくて、衝撃的な絵に遭遇し、へなへなになる。こちらの方が衝撃度は大きい。2回目のとき時間をかけて見た“巨人”や“黒い絵”シリーズの“わが子を食らうサトゥルヌス”は一生忘れないだろうなと思うほど胸にズシンと響いた。

ゴヤの絵についてはだいたいこんなイメージをもっていたが、プラドのあとメトロポリタン美術館で見た赤い衣装を着た男の子を描いた“マヌエル・オソーリオ・デ・スーニガ”に
200%感動した。以後この絵がルノワールが描く少女画とともに大好きな一枚になった。だから、今回可愛い子供の肖像画を見るのがお目当ての一つだった。上がその絵、“オスーナ公爵夫妻と子供たち”(部分)。こんなに可愛い男の子と女の子がいようかと思われるくらい愛らしい。人間へのあたたかいまなざしが内にあるからこそゴヤはこれほど美しい肖像画を描けるのである!

深く人間を見つめるゴヤは戦争の悲惨さもきっちり描き、見る者に深い共感をよびおこす。真ん中は有名な“1808年5月3日、マドリード ピリンシペ・ピオの丘での銃殺”。この絵はいつみてもこたえる。銃を構えるナポレオン軍の兵士は一様に顔を隠し、機械のように描かれているのに対し、光をうけて白く輝くシャツを着た男の右手のひらには殉教のキリストのように聖痕がみられる。

最後の力をふりしぼって、ゴヤが73歳のときマドリード郊外の家の食堂とサロンの壁に描いたという14枚の“黒い絵”をみた。前回目に力が入ってなかったもので今回、注目してみたのが“棍棒での決闘”と下の“砂に埋もれる犬”。“犬”は現代絵画といってもいいすごい絵。頭だけのぞかせる犬はまもなく流砂にのみこまれるのであろうか。じっとみているとジーンとくる絵である。犬は音を失ったゴヤ自身の心情を表しているともいわれる。これからはゴヤの絵としっかり向き合おうと思う。

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コメント

こんにちは。
ゴヤの犬の絵にびっくりしました。
こんな絵も描いていたんですね、驚きです。

旅行楽しんで行っていらしたようで、ブログを読んで
こちらまで楽しくなりました。私も数年以内には
いづつやさんのようにヨーロッパ美術館巡りしてみたいです!

投稿: k | 2007.03.22 12:39

to kさん
2回目のプラドでこの“犬”を見た印象がなか
ったのですが、その後画集でこの絵のことを
知り、いつか見たいと思ってました。今回17年
ぶりにリカバリーしました。

“黒の絵”のほかの絵は皆グロテスクで怖い絵です
が、この犬の絵は土色が基調色になってます。斜め
の構図に犬の頭だけという画面構成にハットとし
ますね。もうしばらく、名画鑑賞記が続きます。
よろしかったらお付き合いください。kさんも早く
美術館めぐりが実現するといいですね。

投稿: いづつや | 2007.03.22 17:27

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