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2007.03.19

プラド美術館 ベラスケス

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マドリード観光の楽しみはプラド美術館にある名画と国立ソフィア王妃芸術センターの超目玉作品、ピカソのゲルニカの鑑賞である。プラドでは日曜日は入場者が多いため、現地のガイドさんが中に入って絵の説明をすることが禁止されている。で、参加者は自由に1時間鑑賞することになった。

名画が沢山あるので1時間ではとても足りないが、皆が美術好きとは限らないからこれは致し方ない。1時間を目いっぱい密度の濃い鑑賞とするため、出発前、目に力をいれて観る作品とさらっと流す作品を分け、まわる順番をガイドブックにでている展示品の配置図でおおよそ決めておいた。ただ、配置替えは頻繁にあると注意書がされていたので当日もらった最新の配置図で最確認してスタートした。手には必見名画をコピーした画像入りリストを握り締めている。まずはベラスケスから。

所蔵52点のうち、過去2回の鑑賞経験のとき印象が薄かったり、見落とした作品でその後、観る力がつき関心度が増した絵を中心に大急ぎでみてまわった。なにしろ1時間しかないから、一つの絵にあまり時間はかけられない。観たい絵がリストにはびっちり載っているのである。

上のベラスケス(1599~1660)の代表作中の代表作、“ラス・メニーナス(女官たち)”は17年前、じっくり観たとはいえ、通りすごすわけにはいかない。とにかく大きな絵で、“傑作を見たぞ!”と感動する絵。何度みても不思議な構図である。右の窓からの光をあびて優雅に立つ王女マルガリータの愛らしい丸い顔と白が輝く衣装に視線が集中する。と同時に右端にいるおばさんのような大きな顔をした小人、マリバルボラが目にとびこんでくる。この小人はマルガリータのかわいらしさの引き立て役だが、見る者にとってはズキンと心にのこるほどの存在感がある。

印象派の先駆けとも言われる描法が前景の登場人物の衣装にみられる。近くではまだらな斑点のような素早いタッチだが、すこし離れてみると色彩が明確になり、生き生きとした感じになる。左のほうにいる画家、ベラスケスはこちら側にいる国王夫妻の肖像を描いている。5歳のマルガリータは“ベラスケスのおじさん、私ちょっと観に来たんだ!観てていい?”とでも言っているのであろうか。

後ろの戸口のところに侍従が階段を上がりかけ、こちらを見ている。この“戸口”が訳ありなのである。昨日、クエンカの現地ガイドさんがベラスケスについて面白い話しをしてくれたと書いたが、そのことについて少々。ベラスケスは19歳のとき師匠の娘フアナ16歳と結婚し、翌年長女フランシスカが生まれた。その娘は14歳のときクエンカ出身の20歳の男と結ばれた。父親は旅宿を営んでおり、そこに嫁いだのである。その宿が今でもホテルとして残っており、ガイドさんが部屋を案内してくれた。

ベラスケスは娘が結婚したときは34歳で以後、この旅宿によく来たという。なかにベラスケスの肖像画が飾ってあった。ガイドさんによると“ラス・メニーナス”に描かれた後ろに戸口のある部屋はこの宿の部屋がモデルだという!戸口の向こうの階段は下がっているので絵とは逆になってはいるが。これはいい話しを聞いた。こんなことはどのベラスケス本にもでてこない。

日本に戻りいろいろ調べたら、娘が結婚したクエンカの男はベラスケスの弟子、デル・マーソ(1610/15~1667)だった。昨年あった“プラド美展”(東京都美)に出品されていた“皇妃マルガリータ・デ・アウストリア”を描いた一級の画家である。ちなみに、マーソは1660年ベラスケスが亡くなると、首席宮廷画家になっている。

真ん中の絵は前回、傑作“ブレダ開城”と共に色彩の輝きと巧みな画面構成に200%驚愕した“皇太子バルサタール・カルロス騎馬像”。前足を上げた躍動感溢れる馬にまたがる王子の凛々しい姿と背景の澄んだ明るい青で表現された空と山々に目を奪われる。見事な肖像画である。

今回しっかり見たのがルーベンスのアドバイスを受けて描いたといわれる神話画、下の“酔っ払いたち(バッカスの勝利)”、“ヴァルカンの鍛冶場のアポロ”、そして“織女たち”。カラヴァッジョもバッカスや聖書の物語を画家自身や市井の人々をモデルに使い,制作したが、ベラスケスの“バッカスの勝利”ではさらにくだけて同時代の若者や農民が描かれている。農民の一人に葡萄の葉の冠をかぶせているバッカスの表情がなかなかいい。

女神ミネルヴァと織りの技を競って、女神の怒りを買い蜘蛛にさせられたアラクネの話しを絵画化した“織女たち”も風俗画仕立ての絵で、日常的なタペストリー工房が舞台になっている。忙しい鑑賞ではあったが、ベラスケスの名画を堪能した。

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コメント

いづつやさん、こんばんは。
素晴らしいところへご旅行されていたのですね。
去年のプラド展を懐かしく思い出します。
でも、本家の本場の風を感じながらの環境でご覧になるとは、
まさに生まれた所を感じられる素晴らしい体験ですね。
ベラスケスの小人、奇人がもてはやされた時代だったのでしょうか?
明るみと、暗さの好対照ですね。ライブ感溢れる絵です。
縁のあるホテルの戸口がそのまま今も残っているお話は、現場に行ったからこそでしょう。
楽しい旅のお話、続きも楽しみに致します。

投稿: あべまつ | 2007.03.19 22:48

to あべまつさん
1時間しかなかったプラドでしたが、見たい絵とは
だいたい対面できましたから大満足です。プラド
の名画がしばらく続きます。

ベラスケスは小人たちを愛情をもって描いてますね。
宮廷画家とはいえ最初の頃は国王付きの床屋の給料
と同じだったといいますから、小人ら慰み者とは
同じ宮廷に使える職人という意識を共有していたの
でしょうね。

投稿: いづつや | 2007.03.20 23:11

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