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2007.02.25

志村ふくみの紬織着物

716本日の新日曜美術館で紹介された染織家、志村ふくみ(人間国宝)の作品と豊かな色彩感覚に心を揺すぶられた。

82歳というのに元気そのもの。とても品のいい顔をされており、聡明な感じがする。紬織(つむぎおり)の着物は工芸の展覧会や東近美の工芸館で片手くらいを見た程度だから、この作家についてはほとんど知らない。

司会の壇ふみがあこがれていたが、文章も相当上手く、本も数点あるという。で、どんなことを考えて染織という仕事に取り組み、作品をつくりあげていくのか興味深くみた。

京都嵯峨野にある工房では植物染料で染められた糸を織るところや桜の皮から糸をピンクに染める工程をカメラは映していた。絵画と違って、陶芸や染織などの工芸品では制作の現場やプロセスもみせてくれるので理解がし易い。最初の頃、昔のやり方にそって織ろうとするとなかなか上手くいかず悩んでいたとき、木工の黒田辰秋から“昔と今では生活のリズムが違うのだから、今の感覚で仕事をすればいいんだ!”と励まされ、迷いが消え、自分なりの着物が織り上がったという。

志村ふくみは“自然の植物から色をいただいている”と繰り返して言う。そして、その自然には奥深い世界があるとも言う。25年前、群馬県のある中学校の生徒たちと一緒に桜の色を染めていたら、ピンクの色に染まるはずが赤みをおびた黄色に染まったという。これをみて、桜も色々で京都の桜とその町の桜は違っっていることを思い知らされたと語る。

右の着物は昨年1月、日本橋高島屋で開催された“人間国宝展”でみた“どんぐりグレイの段”(1988)で、紬織の人間国宝に認定される2年前に作品。どんぐり色と格子、そして白の組み合わせを上から下に繰り返す模様には地味ながら端正ですっきりした調子がある。こういうどんぐりの色をイメージさせる着物は珍しいのでよく覚えている。展示してあった3点は全部、滋賀県立近代美術館の所蔵だった。

その滋賀県近美で今、“志村ふくみ展”が開催され、100点が飾られているという
(4/8まで)。作品の一部が紹介されていたが、その中に熱帯アジア産の大木からとれる染料、蘇芳(すおう)を使った強烈な赤の着物があった。“聖なる赤、魔性の赤”とも呼ばれるこの赤を是非とも見たくなった。また、98年から“平安の色”を再現しようとしてはじまった“源氏物語シリーズ”にもたまらなく惹きつけられる。03年に制作された紫根で染めた紫の“夕顔”など15点の前に立つとクラクラしそう。

最後に染織家の枠を飛び越え、現代アーティストになった志村ふくみの作品がでてきた。先月、銀座で開かれた個展に展示された小さい裂(きれ)をコラージュした“パレード(ピンク)”や“ジャズ”。05年、80歳になってからの作品というから驚く。スーパー染織家に遭遇し、俄然作品をもっと観たくなった。その著作も読んでみようと思う。

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コメント

おはようございます。
私も昨日、TVで目が釘付け、命の魂の講義を受けているようでした。
あぁ、この方もまた、琵琶湖が底にあるのだ、とも。
ご自分のお仕事になんという心のかけ方をされる方なのでしょう。
忘れていた、命に慈愛をかけること、それが仕事になっていること、
感銘致しました。生み出された着物や、新しいポップな作品、
この目で拝見することが出来たら、感激も倍増だろうと、
夢に見ます。凄い人がいるものです。

投稿: あべまつ | 2007.02.26 09:46

to あべまつさん
いい番組でしたね。名前とか作品は一応知ってはいま
したが、これほど大きな染織家とは思ってもいません
でした。これまでみた作品はすこし地味な着物だかりだっ
たものですから、友禅染作家の着物のほう目がいって
ました。

番組にでてきた“蘇芳無地”や源氏物語シリーズの
“薄雲”“夕顔”をいつか見れたらと思いました。藍甕
につけた糸を絞ると一瞬緑になり、離すと消えるという
話は大変面白かったですね。最後に“お互いに命をつなぎ
とめましょう”という大変感銘深い言葉で締めくくられたの
にじーんときました。

投稿: いづつや | 2007.02.26 11:32

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 今朝は新日曜美術館(NHK教育)を見るつもりでいたが、うっかり見逃してしまった。「染織家志村ふくみの半世紀・虹色のいのちをつなぐ」だ。  夜、スキーのジャンプのliveを見ていて、再放送に気づいて途中からなんとか見ることができた。ときどきスキーに切り替えての細切れの視聴となった。ジャンプ団体は3位に入り銅メダルを獲得できた。ついつい応援してしまった。 志村ふくみを知ったのは中学校の教... [続きを読む]

受信: 2007.02.27 21:10

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