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2007.01.10

横浜そごうの有元利夫展

623有元利夫の絵はこれまで4点しか見たことがない。

だから、この画家については何も知らないのと同然だが、その作風になにか惹きつけられるものがあり、現在横浜そごうで開催中の回顧展(1/2~1/25)へ足を運んだ。

有元がいつごろ活躍した画家かということは会場の解説パネルで知った。生まれた年は1946年で現在まで生きていれば
60歳だが、なんと1985年、38歳の若さで亡くなっている。死因は癌?それとも事故?それで、よくプロフィールに夭逝の天才画家と書いてあったのか!東芸大のデザイン科を卒業して、電通に入社している。少しサラリーマンをやり、その後画家になったようだ。

最初に見たこの画家の絵は“室内楽”。過去2回、東近美の平常展でみた。ぱっと見たとき、ピカソの“新古典主義時代”の作品、“海辺を走る2人の女”(パリ、ピカソ美術館)を連想した。画面の中央、彫刻を思わせるような顔をした裸婦が異常に長い腕をテーブルの上において座っている。平面的な画面構成で、女の背景にはマグリッド風の白い雲がいくつも浮かぶ空が描かれている。

今回わかったのだが、この絵が安井賞を獲得した代表作らしい。東近美の図録に掲載されているのも納得である。あと3枚の絵は昨年、世田谷であった“アンリ・ルソー展”でみた。その一枚、“一人の夜”はルソーの“カーニヴァルの夕べ”とよく似ていたので、有元利夫はアンリ・ルソーの絵に霊感を受けたのかと理解した。

今回、57点の絵画をみて、絵の特徴がすこし見えてきた。だが、わからない方が多い。右は結構大きな絵、“厳格なカノン”。有元が描く女性は両腕で動きをつくることが多い。横に曲げたり、笛を持ったり、両手で青や緑の四角の布?ハンカチ?を持っていたりする。この絵では足が動き、梯子を登っている。梯子を立てかけている縦にのびるうす青緑の色面は何であろうか。家の壁?カーテン?大きな樹木?女性は梯子の上にいようが、顔はいつも正面向き。女と青い色面は大きく描き、遠景の山々は小さく足の下に配する。これはなかなか面白い構成。観てる者は梯子の女よりもっと高いところから眺めている感じである。

有元は花が好きだったのだろうか、花びらがひらひらと空中を舞っている。また丸い紙風船や金の球もよく飛ぶ。これはフレスコ宗教画にでてくる金の光輪の影響なのか、細いゴールド線の束がストレートにあるいは斜めにのびたりする。女性以外でインパクトがあるのは白い雲が沢山浮かぶ青い空。シュールな表現だなと思のは“雲のフーガ”や“雲を創る人”。空の雲を映したガラス板を女性が手に持っている。

この画家の絵は不思議なイメージがあり、絵のなかに吸い込まれそうになる。それは平面的な描写で、女性の体が彫刻のように量感があり、しかも柔らかさがあるからだろう。“厳格なカノン”のほかでは、“春”、“花降る日”、“望郷”に魅了された。西洋画のコピーのような感じもするが、やはりコピーとは違ういろんな画家が消化されてできあがった有元独自の絵という印象が強い。満足度の高い回顧展であった。

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コメント

今日、有元利夫展観たのでしょうか? 私も今日観ていました
私は、2001年のステーションギャラリーの展覧会観てから関心があります

今日mixiの友だちと観たのですが、彼女は音楽系ですが同じ大学と言うこともあり、「リアル有元利夫やモデルとなっているその奥様」を知っていて、有元利夫の作品さえも持つ人なので裏話をいろ良いろ聞きました
普段絵がすべてみたいに観るのですが、そういう話も面白い物でした

感想書きましたらTBさせて下さいね

投稿: えみ丸 | 2007.01.10 22:17

僕も行きました。
この人は岩絵の具を使うのですね、日本の仏画にも影響を受けていると会場にありましたね。
どうもロマンティストなようで「流れ星」だの「土星」だのはるかかなたを見つめているところがある。
果ては版画でMOONMANなどあらわしたり、宙を浮く人を作ったりする、面白い人ですよね。

投稿: oki | 2007.01.10 22:21

いづつやさん、遅ればせですが、明けましておめでとうございます。

私もルソー展で有元に興味を持ち、今回の展覧会に行ってきました。会場の解説で有元が平家納経が好きだったことを知り、あの花びらは納経に散らばっていた蓮(?)の花びらに似ているなぁ、と思いながら観ておりましたが...どうなのでしょうね?
それから、実は私も人物像にピカソを想起してしまったので、いづつやさんのお話に、なるほど!でした。なんだか似てますよねっ(^^;

西洋画や日本画を通り抜けてできた有元の世界、静かな緊張感に満ちて、なんだかお正月に相応しい展覧会だと思えました。

ということで、今年もいづつやさんからたくさんの刺激を頂きたく、どうぞよろしくお願いいたします(^^)/

投稿: 花耀亭 | 2007.01.11 03:14

こんにちは。
横浜でもやっているのですね。この画家の絵は、よく文庫本の
表紙に使われていて、お気に入りです。
毎年、2月ごろ小川美術館での展覧会を見ています。
山種美術館の一本裏の道にある美術館で、普段は彌生画廊として、
販売し、展覧会のときだけ美術館となっています。
ちなみに今年は、2月26日から3月10日まで開かれます。

投稿: 一村雨 | 2007.01.11 07:16

to えみ丸さん
出かけたのは1/5です。有元利夫の彫刻のような
女性像が前から気になっていたものですから、一度
まとまったかたちで作品をみたいと思ってました。
マグリッドが表現するような白い雲の空があらた
な発見でした。これが有元利夫の絵か!という感じ
です。

あの女性はやはり奥さんがモデルでしたか。病気で
亡くなったのでしょうか?生有元の話をまたきかせ
てください。

投稿: いづつや | 2007.01.11 10:58

to okiさん
日本画の岩絵の具も使って描いたようですね。天空
とか宇宙とか、広い空間に女性を立たせたり、天女
のように浮遊させてますから、メルヘンチックな
とこもありますね。不思議な魅力があります。

今まで見てた“室内楽”が代表作なんですね。そう
いうことを知らないでこの絵をいつもわりと長く
観てました。夭折の天才画家という言い方がわかる
ような気もします。

投稿: いづつや | 2007.01.11 11:10

to 花耀亭さん
あけまして おめでとうございます。こちらこそ
宜しくお願いします。

ピカソの新古典時代の作品とかアンリ・ルソーの
影響だけかと思ってましたが、フレスコ画やピエロ
・デッラ・フランチェスカなどからも霊感を受け
ているのですね。そして、日本の仏画にも興味を
示してますから、花耀亭さんがおっしゃるように
内外美術の様式を強く意識して自分の画風をつくっ
たといえるでしょうね。

私は花びらが舞う絵を観て、ボッティチェリの
“春”を思い出しました。仏画を有元はみてますか
ら、蓮の花のイメージもありですね。

仏画といえば、家で図録を眺めて気がついたことが
あります。“花と人”で立ってる女性が左手を上に
上げるポーズは、東大寺にあるお釈迦さまが右手を
上げている彫刻“誕生釈迦仏立像”(国宝)に触発さ
れたのではないかと。

投稿: いづつや | 2007.01.11 11:42

to 一村雨さん
有元利夫が好きだという人が多いですね。今回の
回顧展で人気の秘密がわかりました。わずか3度の
鑑賞体験ですが、一通り代表作は観たような感じ
です。

有元の描く女性はいつも画面の中央にいますね。
みてて安定感みたいなのを感じるのはこのせいかも
しれませんね。女性の背景の処理なんかハットす
るようなシュールさです。いろんな才能が垣間見
えます。

ご案内のあった小川美術館をさがしてみます。
情報有難うございました。

投稿: いづつや | 2007.01.11 12:01

いづつやさん
こんばんは

今年もよろしくお願いいたします。

これはいい展示でしたね。ひところ流行ったデパートの
美術館もすっかり淘汰されましたが、そごう美術館はな
にげに良い展覧会が多くていいですよね。横浜の美術好
きにとってはこたえられません...(^^)

投稿: lysander | 2007.01.13 03:29

to lysanderさん
あけまして おめでとうございます。今年もよろしく
お願いします。

有本利夫の作品を沢山みられてよかったです。電通
のクリエーターをやっていたのですから、高い才能の
持ち主であることは間違いないですね。アンリ・
ルソーの絵に一番近いかなとも思いますが、ルソー
よりもっと深いような気がします。観る者の心がやす
まる絵はなかなか描けないですよね。図録を毎日
観てます。

投稿: いづつや | 2007.01.13 18:06

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有元利夫さんの個展が横浜で開催されています。有元さんの作品は 舞台の上、かきわりの空、かきわりの山。にじんだような色合いに 落ち着きがあるのだな...最近観たのは昨年末の『ルソーの見た夢、 ルソーに見る夢』、最後の部屋に展示されていたなるほどルソーを イメージさせる、作風... もともとは西洋のフレスコ画に触発されたそうで、なるほどその作 品は壁に描かれたような風合いです。ちょっと古びた感じに味があ ... [続きを読む]

受信: 2007.01.13 03:30

» 有元利夫展 [冬の虹]
 花降る日 横浜のそごうで「有元利夫展」を観た  この人の絵を初めて見た時、湿度を感じない空気が日本の人の絵ではないような気がした 西洋風な洒落た雰囲気が印象に残った 今回眺めて、改めてその絵の質感に感じ入る これがあるから、この人の絵は実物観なくちゃダメなのよ、と思う このフレスコ画のような、本人も目ざしたらしい風化していくような感覚、これが絵となっている その中で、ことに赤と青が印象的だ 前田青邨を観た時に、オレンジ系の赤がこの人の色と思ったように、有元利夫では「この赤とこの緑」と思った... [続きを読む]

受信: 2007.01.14 14:16

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