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2007.01.30

オルセー美術館展 そのニ

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今回の展覧会には“19世紀 芸術家たちの楽園”というタイトルがついている。140ある作品をどういうくくりでどういう順番で並べるかは学芸員の腕に見せ所だが、傍からみてるとこれは頭を悩ます作業だなと思う。

写真と彫刻、陶器を横において絵画だけでみると、人物画と風景画をどう仕分けるかである(今回静物画はない)。ここでは人物画を女性中心の“親密な時間”と男性画が多い“芸術家の生活ーアトリエ・モデル・友人”に分けている。昨日触れたマネが描いたモリゾの絵は後者のコーナー。モリゾがマネの画法から解き放され、自立した一人の画家として描いた“ゆりかご”が入場してすぐのところに飾ってある。こういういい絵がいきなり出てくると見る側はすぐ“流石、オルセー、来てよかった!”ということになる。

さらに進むとホイッスラーの大作、“灰色と黒のアレンジメント第1番、画家の母の肖像”が待っている。この絵は画集によく載っているホイッスラーの代表作の一つ。老人にすごい存在感を感じるのは真横から描いているのとドレスの黒と壁に掛けられた絵の額縁の白とがいいコントラストになっているから。この絵が登場するイギリスのコメディアン、Mr.ビーンの映画を思い出しながら眺めていた。構成に浮世絵の影響がみられるヴァロットンの“ボール”にも惹きつけられた。真っ赤なビボールを追っかける女の子にあたる強い光と黒い影に思わず目が釘付けになる。

今回、風景画はグッとくるのがいくつもある。モネはお馴染みの“アルジャントゥイユの船着場”、“ベリールの岩、打ちつける波”、“ルーアン大聖堂”の3点。収穫だったのが上のマネの“ブーローニュ港の月光”。大きな絵である。驚くのは画像ではあまり伝わらないが、船や船員の影の黒と大胆な対比をなす海面と満月の白の輝き。そして、ピンク色の小さな塊で表現された遠くの煙突から出る炎や建物の明かりがアクセントとなり画面を引き締めている。また、白い波しぶきが揺れる青い海のなかを進むボートを高い視線から、斜めに見下ろすように描いた“アンリ・ロシュフォールの逃亡”にも足がとまった。

点描法で描かれたいい絵が3点ある。スーラの代表作のひとつ、“ポール=タン=ベッサンの外港、満潮”、シニャックの“レ・ザンドリー、河堤”、そしてベルギー人画家、レイセルベルヘが描いた下の“舵を取る男”。お気に入りは広重風の構図で激しい波のうなりを迫力満点に描いた“舵を取る男”。切り立った山々のように反り返る波面を仔細にみると白の点々にピンクの点々が混じっている。帆と船縁をトリミングして、右端に舵を取る男をとりこんで中央に動感あふれる波をもってくる構成が見事。レイセルベルヘは11880~87年、パリに滞在した五姓田義松と知り合いになり、日本の浮世絵や水墨画に関心をもつようになったという。広重や北斎のハットする構図の風景画を見慣れてるわれわれでもこの絵には唸ってしまう。

名画を沢山展示してくれたオルセー美術館に感謝々である。

<展覧会プレビューの更新>
最近入手した下記の展覧会を追加した。
4/21~6/24    水の情景展           横浜美術館
5/20~6/19    会田誠・山口晃展       上野の森美術館
5/29~8/26    パルマ もうひとつの都展   国立西洋美術館

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コメント

いづつやさん、初めて書き込み致しております。以前よりちょくちょくお邪魔させて頂いておりますが、いろんな意味でご趣味にかぶるところが多く、楽しませて頂いております。特に見落としている展覧会を教えて頂くことが多いので勉強になります。

都美術館はつくりが気になり、混雑するので避けがちですが、やはりオルセーははずせませんね。近々行ってみます。

またお邪魔させて頂きますね。

投稿: とーる | 2007.01.31 00:17

to とーるさん
はじめまして。書き込み有難うございます。趣味が重なる
というのは何かの縁と思いますので気楽にお越しください。

都美術館は階段を何回も上がりますから、いつも疲れま
すが、いい作品を展示することが多いので、鑑賞空間うん
ぬんも言ってられません。今回のオルセーは名画揃いで、
大きな満足が得られました。パリにでかけずにみられるの
ですから、有難いことです。これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2007.01.31 16:45

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